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妹みたいな友達との別れ
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ソフィーヌさんの居ない屋敷でエリザベス様と楽しく暮らしていた。
ご主人様公爵は気になって仕方がないらしい。
それに異常に優しい。
謝罪も受けたがやり直すつもりはない。
時々夜に訪ねてきて、愛?を囁く。
部屋の中に入りたそうでも拒否している。
部屋の改装が終わり、某五つ星ホテルのような部屋に仕上がった。
“質素なはずなのに高級感があるわ”とエリザベスが気に入ってくれた。
ご主人様公はエリザベスの元へ通うが、兆しが無いと落ち込んでいた。
ソフィーヌも妊娠しなかったようで、祈りを捧げていたらしい。
避妊はしていないようだ。
二人も…だとしたらご主人様公爵の方に問題があるのだろう。
私の部屋にエリザベスをお泊まり会に招待して気落ちする彼女に話をした。
「不妊はね、女だけが悪いというのは間違いよ。
双方が繁殖能力を持っていなかったり、片方が持っていなかったり、持っていても弱くて実らなかったり、身体としては問題ないのに精神的なものが作用して実らなかったり、理由はいくつもあるし組み合わせもいくつもあるの。
妻が二人とも懐妊しなくて避妊もしていないなら夫側に問題がある可能性が高いわ。
だから気に病むことはないのよ。
もし、責められたら実験をしてみるといいわ。
一気に妾を3人迎えて出来るかどうか。
もし出来たら夫人に昇格させればいいし、出来なければ養子を検討するはずよ」
「カレン様は…遠くへ行ってしまわれるのですね」
「どうかな。行くところがないから。
お金もらって遊んでいられるココにいた方がいいと思うけど、政略結婚だから私に決定権は無いの」
「カレン様のいない生活なんて耐えられない」
「嬉しい…初めてのお友達ができたのね」
「お友達になってくださるのですか?」
「お泊まり会してるじゃない」
「嬉しい!」
ご主人様公爵は段々と元気が無くなってきた。
お兄様が帰国して2ヶ月が過ぎた頃にご主人様公爵が城に呼び出されて、戻ってきたときは蒼白だった。
あの時 同席した外交官もいた。
応接間に呼び出された私とエリザベスはご主人様公爵とは違うソファに座った。
「カレン王女殿下。ご報告を申し上げます。
拘束していたソフィーヌの刑が執行されました。
ベネット王国の第二王子 アーサー殿下率いるベネット軍は、ローズヒル王国を敗戦国に変えました。
アーサー殿下は酷くお怒りで、平民から王族まで見つけた者は例外なく処刑なさいました。
荒れ果てたローズヒルの地にソフィーヌひとりを荷物と共に置き去りにしました。
もうまともな食糧は残っておりませんし、井戸は死体を投げ込んでいます。
助けてくれる自国の兵士が現れるまで国境の町に隠れるはずですが、食糧と水を探しに行かねば死にます。
生き延びた民や兵士に見つかれば、無事ではいられません。
ソフィーヌが原因だと公表していますから。
ソフィーヌと気が付かなくてもまだ20代の女で見目はいいので男共が放っておかないでしょう。
もしくは食糧にされるかもしれません。
離縁後に刑は執行されたのでシュヴァル公爵第一夫人の座は空席です。
ですが、カレン王女殿下はベネット王国の希望により帰国となります。
本日付で離縁が成立いたしました。
よって、エリザベス様が唯一の妻となります。
カレン王女殿下、荷造りをお願いします。
アーサー殿下がお迎えにいらっしゃいます」
私の居場所なんか無いのに。お兄様ってば酷い。
「カレン様」
「エリザベス様」
エリザベス様は涙を浮かべて私にしがみついた。
「私は何でもいいのです。第二でも第一でも構いません!カレン様と離れたくありません!」
「夫人。国同士の話し合いで決まったことです。
私にも貴女にもカレン王女殿下にも どうすることもできません」
「ううっ…」
「ありがとう、エリザベス。
少しでも一緒にいたいから手伝って」
「ううっ…」
泣きながら私の腕に絡みつきついて来た。
彼女の方が歳上なのに、すごく可愛い。
私も離れたくないな。
でもお金持ちの公爵夫人は悪くないと思う。
それに彼女の実家はヴァジルにあるし。
大したものはあまりないから、鞄二つで後は処分を頼んだ。
「エリザベス様。このお部屋、好きに使ってね」
「っぐ…っぐ……」
泣き過ぎて話ができる状態じゃなかった。
そんなエリザベスを抱きしめながらお兄様の到着を待った。
そして到着したお兄様はコアラのように私にしがみ付いて離れないエリザベスを見ていた。
私「初めてのお友達なんです」
エ「っぐ…っぐ…」
私「第二夫人のエリザベス様です。元々ヴァジルの貴族です」
エ「っぐ…っぐ…」
兄「懐かれたのだな」
私「素敵なお友達です」
エ「っぐ…っぐ…」
兄「夫人。もしカレンの側で暮らしたいのならカレンの側に居させることもできる。
だが、住むのはおそらく城だし、陛下の子は多いから居心地が良いかどうか分からない。
ベネットの貴族に嫁ぐという手もある。ベネットの男はほとんど純潔を重視しない。
だがその代わりあまり自由はない。
こっちよりも 女は男に従うべきという風潮が強い。
戸惑うこともあるだろう。
それに一度ベネットで庇護による生活を始めたらヴァジルには戻れない。全てを捨てて来ることになる。
先ずは第一夫人として生きてみて考えるといい。
公爵はかなり裕福なようだからな」
「ほん…と…です…か」
「本当だ。ここにいる外交官が証人だ」
「ありがとう…ございます」
どうしても離れないエリザベスをくすぐった。
手を離してしまったと驚く顔が忘れられない。
ベネットへ向かう馬車の中で涙が出てきた。
「カレン」
「仲の良い妹と生き別れるような気持ちです」
「姉じゃなくて?……まあ あれは妹だな」
そう言いながら涙を流す私を抱きしめていた。
ご主人様公爵は気になって仕方がないらしい。
それに異常に優しい。
謝罪も受けたがやり直すつもりはない。
時々夜に訪ねてきて、愛?を囁く。
部屋の中に入りたそうでも拒否している。
部屋の改装が終わり、某五つ星ホテルのような部屋に仕上がった。
“質素なはずなのに高級感があるわ”とエリザベスが気に入ってくれた。
ご主人様公はエリザベスの元へ通うが、兆しが無いと落ち込んでいた。
ソフィーヌも妊娠しなかったようで、祈りを捧げていたらしい。
避妊はしていないようだ。
二人も…だとしたらご主人様公爵の方に問題があるのだろう。
私の部屋にエリザベスをお泊まり会に招待して気落ちする彼女に話をした。
「不妊はね、女だけが悪いというのは間違いよ。
双方が繁殖能力を持っていなかったり、片方が持っていなかったり、持っていても弱くて実らなかったり、身体としては問題ないのに精神的なものが作用して実らなかったり、理由はいくつもあるし組み合わせもいくつもあるの。
妻が二人とも懐妊しなくて避妊もしていないなら夫側に問題がある可能性が高いわ。
だから気に病むことはないのよ。
もし、責められたら実験をしてみるといいわ。
一気に妾を3人迎えて出来るかどうか。
もし出来たら夫人に昇格させればいいし、出来なければ養子を検討するはずよ」
「カレン様は…遠くへ行ってしまわれるのですね」
「どうかな。行くところがないから。
お金もらって遊んでいられるココにいた方がいいと思うけど、政略結婚だから私に決定権は無いの」
「カレン様のいない生活なんて耐えられない」
「嬉しい…初めてのお友達ができたのね」
「お友達になってくださるのですか?」
「お泊まり会してるじゃない」
「嬉しい!」
ご主人様公爵は段々と元気が無くなってきた。
お兄様が帰国して2ヶ月が過ぎた頃にご主人様公爵が城に呼び出されて、戻ってきたときは蒼白だった。
あの時 同席した外交官もいた。
応接間に呼び出された私とエリザベスはご主人様公爵とは違うソファに座った。
「カレン王女殿下。ご報告を申し上げます。
拘束していたソフィーヌの刑が執行されました。
ベネット王国の第二王子 アーサー殿下率いるベネット軍は、ローズヒル王国を敗戦国に変えました。
アーサー殿下は酷くお怒りで、平民から王族まで見つけた者は例外なく処刑なさいました。
荒れ果てたローズヒルの地にソフィーヌひとりを荷物と共に置き去りにしました。
もうまともな食糧は残っておりませんし、井戸は死体を投げ込んでいます。
助けてくれる自国の兵士が現れるまで国境の町に隠れるはずですが、食糧と水を探しに行かねば死にます。
生き延びた民や兵士に見つかれば、無事ではいられません。
ソフィーヌが原因だと公表していますから。
ソフィーヌと気が付かなくてもまだ20代の女で見目はいいので男共が放っておかないでしょう。
もしくは食糧にされるかもしれません。
離縁後に刑は執行されたのでシュヴァル公爵第一夫人の座は空席です。
ですが、カレン王女殿下はベネット王国の希望により帰国となります。
本日付で離縁が成立いたしました。
よって、エリザベス様が唯一の妻となります。
カレン王女殿下、荷造りをお願いします。
アーサー殿下がお迎えにいらっしゃいます」
私の居場所なんか無いのに。お兄様ってば酷い。
「カレン様」
「エリザベス様」
エリザベス様は涙を浮かべて私にしがみついた。
「私は何でもいいのです。第二でも第一でも構いません!カレン様と離れたくありません!」
「夫人。国同士の話し合いで決まったことです。
私にも貴女にもカレン王女殿下にも どうすることもできません」
「ううっ…」
「ありがとう、エリザベス。
少しでも一緒にいたいから手伝って」
「ううっ…」
泣きながら私の腕に絡みつきついて来た。
彼女の方が歳上なのに、すごく可愛い。
私も離れたくないな。
でもお金持ちの公爵夫人は悪くないと思う。
それに彼女の実家はヴァジルにあるし。
大したものはあまりないから、鞄二つで後は処分を頼んだ。
「エリザベス様。このお部屋、好きに使ってね」
「っぐ…っぐ……」
泣き過ぎて話ができる状態じゃなかった。
そんなエリザベスを抱きしめながらお兄様の到着を待った。
そして到着したお兄様はコアラのように私にしがみ付いて離れないエリザベスを見ていた。
私「初めてのお友達なんです」
エ「っぐ…っぐ…」
私「第二夫人のエリザベス様です。元々ヴァジルの貴族です」
エ「っぐ…っぐ…」
兄「懐かれたのだな」
私「素敵なお友達です」
エ「っぐ…っぐ…」
兄「夫人。もしカレンの側で暮らしたいのならカレンの側に居させることもできる。
だが、住むのはおそらく城だし、陛下の子は多いから居心地が良いかどうか分からない。
ベネットの貴族に嫁ぐという手もある。ベネットの男はほとんど純潔を重視しない。
だがその代わりあまり自由はない。
こっちよりも 女は男に従うべきという風潮が強い。
戸惑うこともあるだろう。
それに一度ベネットで庇護による生活を始めたらヴァジルには戻れない。全てを捨てて来ることになる。
先ずは第一夫人として生きてみて考えるといい。
公爵はかなり裕福なようだからな」
「ほん…と…です…か」
「本当だ。ここにいる外交官が証人だ」
「ありがとう…ございます」
どうしても離れないエリザベスをくすぐった。
手を離してしまったと驚く顔が忘れられない。
ベネットへ向かう馬車の中で涙が出てきた。
「カレン」
「仲の良い妹と生き別れるような気持ちです」
「姉じゃなくて?……まあ あれは妹だな」
そう言いながら涙を流す私を抱きしめていた。
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