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公爵邸
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【 イアン・シュヴァルの視点 】
私の馬車は王城からつい来ている馬車と騎馬隊に囲まれている。
王宮騎士団の旗を掲げ、腕には捜査部の色に赤い一本線の腕章を着けていている。
これは謀反などの企てを疑うような大事を扱うエリートの証。
バーナード卿はその中でも融通のきかない男だ。
彼が来たら泣き落としも賄賂も脅しも通用しないと聞いたことがある。
屋敷に到着すると門が封鎖された。
その後、屋敷のドアも封鎖された。
使用人達が不安そうな顔をしていた。
ボルケは腕章の意味が分かっているのだろう。
「ようこそシュヴァル邸へ。
私は執事のボルケと申します。
初めてのことですのでご指示をいただけますか」
「私の名はバーナード。君命を受けて屋敷全体の捜査を開始する。
建物内にいる使用人を全員食堂に集めて欲しい。
15分を超えて集まっていない者はその場で捕らえて連行する。
着替えの時間などない。ガウンでも来て走って集まれと手分けして言って回ってくれ。
何かを持ち出そうとしても身体検査をするから無駄だ。
夫人二人は居間に連れて来てくれ。
女性騎士に調べさせる。
公爵。居間へ移動願います」
ダイニングには使用人達が集まり、居間にはガウンを着たソフィーヌとエリザベスが連れてこられた。
ソ「私を誰だと思っているのです!」
私「ソフィーヌ!黙って座れ!」
ソ「イアン様!」
私「己の身が可愛ければ早くしろ!」
ソフィーヌは渋々身体検査を受け入れてソファに座った。
エリザベスは先に終わって大人しくしていた。
使用人達は一人一人聞き取り調査を受けているようだった。
朝方に捜査が終わり、バーナード卿が指示を出した。
「シュヴァル公爵、ソフィーヌ・シュヴァル公爵夫人、メイド長の3名を連行する。
他の者は交代で就寝してくれ。協力に感謝する」
卿の部下は箱を持っていた。
何かを押収したようだ。
ソフィーヌは煩いし考えがまとまらない。
城に着くと貴族牢に通されて4時間の就寝を許された。
その後、朝食をとり、集められたのは断罪の間だった。
入ったことはなかったが冥界の神が彫られていたから分かった。
中にはカレンと兄王子、バーナード卿と部下、他に外交官もいた。
不服そうなソフィーヌもいる。メイド長がいない?
直ぐに陛下が入室した。
王「バーナード卿。報告を頼む」
バ「かしこまりました。
先にご報告を申し上げます。
カレン王女殿下に致死量レベルの弛緩薬を与えたメイドは、コリンズ男爵家の次女とラデラル男爵家の長女でした。
職探しのために まだ王都内に滞在していたところを捕らえました。
聴取の結果、殿下が初夜に怯えて支度に抵抗したので説明無く飲ませたそうです。
飲ませて支度を終えてみると、呼吸も心音も聞き取れなかったと言っておりますが、数時間後に公爵が入室した時に目覚めたそうです。
許可したのはメイド長でした。
ビーンズ子爵家の長女でしたが今は平民です。
3名は他の者に相談も報告もしていないということでしたので、二時間前に槍による刺殺刑に処しました。
カレン王女殿下、間違いございませんか」
カ「はい。飲まされた経緯も目覚めた後に耳にした内容も聴取通りです。バーナード卿、感謝いたします」
バ「ヴァジルの国民が愚行をはたらき申し訳ございません。
陛下、別件の問題が起こっております。
シュヴァル公爵夫人であるソフィーヌ元王女殿下の部屋から手紙が見つかりました。
祖国ローズヒルへ向けてのものです」
卿は箱から手紙を出して陛下に渡した。
ソフィーヌを見ると顔色が悪い。
王「“生意気なカレンを始末したい”? 正気か!」
ソ「ご、誤解でございます!ほんの冗談で、」
カレンの兄王子が殺気立つが、カレンが抱き付いて宥めている。
王「バーナード」
バ「他にもございます。
公爵の机の引き出しから、ベネット王国からの手紙を見つけました」
陛下があの手紙を読んでしまった。
私がカレンを毛嫌いする原因になった手紙を。
だけど今は違うと知った。
なんて酷いことを言ったのだろうという自責の念とは別に近すぎる兄妹に腹が立っていた。
王「宮廷医の検診を受けた後ではコレが嘘だと分かる。アーサー王子、目を通してらえないか」
兄王子は手紙を読み進めると益々険しい顔になった。
ア「送り主は第三王女リヴィアです。
蝋印に、僅かに細工がしてあって、誰の物か分かるようになっています」
王「恐らく公爵がカレン王女への待遇を間違えた理由がコレだと思う。
シュヴァル公爵。密通していたのなら分かるが、この手紙だけで鵜呑みにするのはおかしいだろう。
調査したのか?」
私「いえ」
王「事実かどうかも分からない手紙を信じて王女相手に愚行を選ぶのは大問題だ。
例え内容が本当だとしても相応しい行動ではない。
純潔を条件に娶った訳ではないだろう。
他国との政略結婚を何だと思っているんだ。
きっかけが手紙だったとしても事を起こしたのは公爵だ。メイド達も公爵の様子から判断してならったのだろう。
弛緩薬で自由を奪って事を成させるなどという発想は王女相手には起きないものだ。
王族への強姦の共犯になるからだ。
公爵への処分は話し合って決める。それまで二人とも貴族牢へ拘束する」
数時間が長く感じた。
とてつも長く。
私は解放された。
カレンの希望で一旦公爵邸に戻すが手を付けてはならないと命じられた。
ソフィーヌは貴族牢に入れられたままだ。
2ヶ月後、ソフィーヌは離縁の上に強制送還を命じられた。
だがソフィーヌの乗せた馬車が出発した翌日、ローズヒル王国について知らせを受けた。
私の馬車は王城からつい来ている馬車と騎馬隊に囲まれている。
王宮騎士団の旗を掲げ、腕には捜査部の色に赤い一本線の腕章を着けていている。
これは謀反などの企てを疑うような大事を扱うエリートの証。
バーナード卿はその中でも融通のきかない男だ。
彼が来たら泣き落としも賄賂も脅しも通用しないと聞いたことがある。
屋敷に到着すると門が封鎖された。
その後、屋敷のドアも封鎖された。
使用人達が不安そうな顔をしていた。
ボルケは腕章の意味が分かっているのだろう。
「ようこそシュヴァル邸へ。
私は執事のボルケと申します。
初めてのことですのでご指示をいただけますか」
「私の名はバーナード。君命を受けて屋敷全体の捜査を開始する。
建物内にいる使用人を全員食堂に集めて欲しい。
15分を超えて集まっていない者はその場で捕らえて連行する。
着替えの時間などない。ガウンでも来て走って集まれと手分けして言って回ってくれ。
何かを持ち出そうとしても身体検査をするから無駄だ。
夫人二人は居間に連れて来てくれ。
女性騎士に調べさせる。
公爵。居間へ移動願います」
ダイニングには使用人達が集まり、居間にはガウンを着たソフィーヌとエリザベスが連れてこられた。
ソ「私を誰だと思っているのです!」
私「ソフィーヌ!黙って座れ!」
ソ「イアン様!」
私「己の身が可愛ければ早くしろ!」
ソフィーヌは渋々身体検査を受け入れてソファに座った。
エリザベスは先に終わって大人しくしていた。
使用人達は一人一人聞き取り調査を受けているようだった。
朝方に捜査が終わり、バーナード卿が指示を出した。
「シュヴァル公爵、ソフィーヌ・シュヴァル公爵夫人、メイド長の3名を連行する。
他の者は交代で就寝してくれ。協力に感謝する」
卿の部下は箱を持っていた。
何かを押収したようだ。
ソフィーヌは煩いし考えがまとまらない。
城に着くと貴族牢に通されて4時間の就寝を許された。
その後、朝食をとり、集められたのは断罪の間だった。
入ったことはなかったが冥界の神が彫られていたから分かった。
中にはカレンと兄王子、バーナード卿と部下、他に外交官もいた。
不服そうなソフィーヌもいる。メイド長がいない?
直ぐに陛下が入室した。
王「バーナード卿。報告を頼む」
バ「かしこまりました。
先にご報告を申し上げます。
カレン王女殿下に致死量レベルの弛緩薬を与えたメイドは、コリンズ男爵家の次女とラデラル男爵家の長女でした。
職探しのために まだ王都内に滞在していたところを捕らえました。
聴取の結果、殿下が初夜に怯えて支度に抵抗したので説明無く飲ませたそうです。
飲ませて支度を終えてみると、呼吸も心音も聞き取れなかったと言っておりますが、数時間後に公爵が入室した時に目覚めたそうです。
許可したのはメイド長でした。
ビーンズ子爵家の長女でしたが今は平民です。
3名は他の者に相談も報告もしていないということでしたので、二時間前に槍による刺殺刑に処しました。
カレン王女殿下、間違いございませんか」
カ「はい。飲まされた経緯も目覚めた後に耳にした内容も聴取通りです。バーナード卿、感謝いたします」
バ「ヴァジルの国民が愚行をはたらき申し訳ございません。
陛下、別件の問題が起こっております。
シュヴァル公爵夫人であるソフィーヌ元王女殿下の部屋から手紙が見つかりました。
祖国ローズヒルへ向けてのものです」
卿は箱から手紙を出して陛下に渡した。
ソフィーヌを見ると顔色が悪い。
王「“生意気なカレンを始末したい”? 正気か!」
ソ「ご、誤解でございます!ほんの冗談で、」
カレンの兄王子が殺気立つが、カレンが抱き付いて宥めている。
王「バーナード」
バ「他にもございます。
公爵の机の引き出しから、ベネット王国からの手紙を見つけました」
陛下があの手紙を読んでしまった。
私がカレンを毛嫌いする原因になった手紙を。
だけど今は違うと知った。
なんて酷いことを言ったのだろうという自責の念とは別に近すぎる兄妹に腹が立っていた。
王「宮廷医の検診を受けた後ではコレが嘘だと分かる。アーサー王子、目を通してらえないか」
兄王子は手紙を読み進めると益々険しい顔になった。
ア「送り主は第三王女リヴィアです。
蝋印に、僅かに細工がしてあって、誰の物か分かるようになっています」
王「恐らく公爵がカレン王女への待遇を間違えた理由がコレだと思う。
シュヴァル公爵。密通していたのなら分かるが、この手紙だけで鵜呑みにするのはおかしいだろう。
調査したのか?」
私「いえ」
王「事実かどうかも分からない手紙を信じて王女相手に愚行を選ぶのは大問題だ。
例え内容が本当だとしても相応しい行動ではない。
純潔を条件に娶った訳ではないだろう。
他国との政略結婚を何だと思っているんだ。
きっかけが手紙だったとしても事を起こしたのは公爵だ。メイド達も公爵の様子から判断してならったのだろう。
弛緩薬で自由を奪って事を成させるなどという発想は王女相手には起きないものだ。
王族への強姦の共犯になるからだ。
公爵への処分は話し合って決める。それまで二人とも貴族牢へ拘束する」
数時間が長く感じた。
とてつも長く。
私は解放された。
カレンの希望で一旦公爵邸に戻すが手を付けてはならないと命じられた。
ソフィーヌは貴族牢に入れられたままだ。
2ヶ月後、ソフィーヌは離縁の上に強制送還を命じられた。
だがソフィーヌの乗せた馬車が出発した翌日、ローズヒル王国について知らせを受けた。
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