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まだ一度しか交流をしていなかったけど、決意は固まった。
「ハイダー将軍を選ぶってことですか」
「はい」
神殿からファルーク様に来てもらい、交流は終了すると告げた。
「将軍を好きになったからですか」
「今の時点でどちらが好きということはありません。
ファルーク様も将軍も素敵な方です。
ですが先日、私はずっと家族に守られて生きてきたと知りました。今後は兄の側で支えていけたらと願っての決断です」
「将軍との政略結婚ということですか」
「はい」
「どうしても…その道を?」
「はい。ファルーク様のお気持ちに感謝をしております」
「諦めきれそうにないんだけどな」
悲しそうな眼差しに胸が痛んだが、
「……申し訳ございません」
「分かりました。落ち着いたらお祝いを贈ります」
ファルーク様は立ち上がり神殿に帰って行った。
一方で、ハイダー様に返事をした。
「早過ぎると思うんだけど、神判長は失態を?」
「いえ。素敵な方だと思います」
「じゃあ何で」
「今の時点で、私にはハイダー様もファルーク様も同じように素敵な方ですが愛があるかと言われたら違います。
私は国王として立った兄を支えたくなったのです」
「なるほど」
「よろしくお願いします」
「でも、わかってるかな?夫婦になるって意味」
「はい」
「君が俺の妻になって俺だけを見てくれるなら、一緒に陛下の支えとなろう」
「ありがとうございます」
「婚約中に君に触れるけど、嫌なら言ってくれたら解消にも応じる。嫌々は堪えるからな」
「嫌ではありませんでした」
「……」
「船の上で抱きしめられて、嫌ではありませんでした」
「もっと触れるよ?」
「私には経験が全くなくて ハイダー様にはつまらないかもしれませんが、教えてくだされば…頑張ります」
「エリサ」
「はい」
「危険なことを言う子だな」
「っ!」
その日、私は初めてのキスをした。
優しく唇に触れるだけだったけど、ハイダー様が少し困った顔をした。
「これでそんなに狼狽えていたら、この先 心臓止まっちゃうぞ?」
「っ!!」
「ハハッ」
「キャッ」
ハイダー様はソファに押し倒して私の口内に舌を割り入れた。
ゴンッ!
何処かから音がした。
「おっと。シスコンのつけた監視が煩いからまた今度……ってエリサ!?」
びっくりして涙が出てきた私を見てハイダー様は狼狽した。
「え!?嫌だった!?」
「び、びっくりしただけです」
「……まさか、閨事の指南は?」
「詳しくは存じ上げませんが、殿方のアレを口に受け入れるのは知っています」
「はあ!?!?」
両肩を掴まれ、聞き取り調査を受けた結果、頷き続けた。
「つまり、ソッチの教師はついておらず、絵本の鳥が運んでくるという話を信じていたのだな?」
コクン
「大人になって、なんか違いそうだけど 聞いても皆が話を逸らすから知らないということだな?」
コクン
「唇を合わせた男女を見たことがあるから、唇を合わせているだけだと思っていたのだな?」
コクン
「ジャミラとサージがベッドを使っているのは、キスしたり添い寝程度だと思っていたのだな?」
コクン
「で、ジャミラとサージの口淫の姿を見たから、それだけは知ってるのだな?」
コクン
「箱入りすぎるだろう!!」
ビクッ
「違うぞ。先代と陛下に言ったんだ。エリサは微塵も悪くない」
「あの、お願いして教育を受けます」
「いや、楽しみが増えたからいい。
かなりゆっくり進めるか、初夜に医師を待機させよう」
「……?」
バン!!
ノック無しに扉が乱暴に開いた。
現れたのは陛下だった。
「将軍!近い!離れろ!」
「お人が悪い。覗き見させるだなんて」
「自制しろ!自制!」
「してますよ」
「エリサにはまだ早い!」
「お茶でも飲みますか?」
「聞いているのか!」
「今日から義兄上と呼ばせていただきますね」
「言うな!」
「お兄様、怖いです」
「何でもないよ。エリサはケーキを食べていなさい」
「義兄上。それ、誤魔化したつもりですか?」
「やめろ」
「エリサが受けてくれましたので今日から婚約者です。今後の逢瀬は覗かないでくださいね」
「いいだろう」
だけど数日後、
「何故 陛下が同席なさるのですか」
「監視が嫌なら私がここに座るしかないからな」
「エリサと距離を置いたままでいいですよ」
「もう止めたんだ。存分に可愛がることにしたんだ。まだ2人は婚約者じゃないからな」
「誓いの口付けは交わしましたから有効です」
「そんなわけがないだろう!ケダモノめ!
こんなに早く手を出すと知っていたら、会わせずに後宮の奥に閉じ込めたのに」
「歴代のシスコン陛下も敵わないシスコンぶりですね」
「私にとっては褒め言葉だ。もっと言っていいぞ」
「エリサ。次は俺の屋敷か旅行に行こう」
「駄目に決まってるだろう!」
結局 直ぐに婚約し、ハイダー様とお兄様は時間を取るようになった。私達で食事をして会話をした後、私を寝かし付けて2人で相談し合っている。
国のことと私の婚姻後の話だから気にするなと言われても気になる。
「エリサは今まで通りでいてくれたら助かるよ」
「はい、お兄様」
「エリサ。奉仕活動は監視をつけるからな」
「はい?…分かりました。…ハイダー様が付けるのですか?」
過保護な2人と一緒で幸せだった。
半年後に婚姻し、初夜も無事に済ませた。
婚約中にハイダー様がゆっくり教えてくれたので、心臓は止まらずに済んだけど寿命は縮まった気がする。
赤ちゃんを産むなんてとても怖かったけど、ハイダー様が楽しみにしてるから身を任せた結果、2年後に避妊を止めて直ぐに妊娠した。
ひと思いに殺してくださいと言いたくなるほど痛くて、二度と妊娠したくないと思った。
陣痛は丸2日を超え、途中で意識を失ったり大変だった。
「エリサ!ありがとう!本当にありがとう!」
ハイダー様に似た男児だった。
私達は2人目は望まない事で合意した。
お兄様は、ハイダー様似の息子を時々弄っている。
“今からエリサに似てもいいぞ”とほっぺたを伸ばしたり額を突いたりしている。
そんな生活をしていたら、やっぱりもう一人欲しくなってハイダー様にお強請りした。大喜びで頑張ってくれた。
私似の女の子が生まれて誰もが甘やかす。
お兄様は
「え?嫌だよ。私は甘やかす係だから」
ハイダー様は
「すまん。無理だ」
息子は
「?」
お兄様の子供達は
「ムリです」
「嫌です」
「可哀想です」
メイドや侍女達は
「滅相もないことでございます」
乳母は
「……どうしてもですか」
と、あてにならなかった。
私だけ注意するので悪者みたいになってきて、私が一番懐かれていない。
「家出しようかな」
そう呟いた日から1人を除いて注意や教育をしてくれるようになった。
そう。お兄様は頑なに甘やかす宣言を撤回しなかった結果、一番懐かれてデレデレだった。
今では夫に愛してると返せるようになって幸せだ。
終
「ハイダー将軍を選ぶってことですか」
「はい」
神殿からファルーク様に来てもらい、交流は終了すると告げた。
「将軍を好きになったからですか」
「今の時点でどちらが好きということはありません。
ファルーク様も将軍も素敵な方です。
ですが先日、私はずっと家族に守られて生きてきたと知りました。今後は兄の側で支えていけたらと願っての決断です」
「将軍との政略結婚ということですか」
「はい」
「どうしても…その道を?」
「はい。ファルーク様のお気持ちに感謝をしております」
「諦めきれそうにないんだけどな」
悲しそうな眼差しに胸が痛んだが、
「……申し訳ございません」
「分かりました。落ち着いたらお祝いを贈ります」
ファルーク様は立ち上がり神殿に帰って行った。
一方で、ハイダー様に返事をした。
「早過ぎると思うんだけど、神判長は失態を?」
「いえ。素敵な方だと思います」
「じゃあ何で」
「今の時点で、私にはハイダー様もファルーク様も同じように素敵な方ですが愛があるかと言われたら違います。
私は国王として立った兄を支えたくなったのです」
「なるほど」
「よろしくお願いします」
「でも、わかってるかな?夫婦になるって意味」
「はい」
「君が俺の妻になって俺だけを見てくれるなら、一緒に陛下の支えとなろう」
「ありがとうございます」
「婚約中に君に触れるけど、嫌なら言ってくれたら解消にも応じる。嫌々は堪えるからな」
「嫌ではありませんでした」
「……」
「船の上で抱きしめられて、嫌ではありませんでした」
「もっと触れるよ?」
「私には経験が全くなくて ハイダー様にはつまらないかもしれませんが、教えてくだされば…頑張ります」
「エリサ」
「はい」
「危険なことを言う子だな」
「っ!」
その日、私は初めてのキスをした。
優しく唇に触れるだけだったけど、ハイダー様が少し困った顔をした。
「これでそんなに狼狽えていたら、この先 心臓止まっちゃうぞ?」
「っ!!」
「ハハッ」
「キャッ」
ハイダー様はソファに押し倒して私の口内に舌を割り入れた。
ゴンッ!
何処かから音がした。
「おっと。シスコンのつけた監視が煩いからまた今度……ってエリサ!?」
びっくりして涙が出てきた私を見てハイダー様は狼狽した。
「え!?嫌だった!?」
「び、びっくりしただけです」
「……まさか、閨事の指南は?」
「詳しくは存じ上げませんが、殿方のアレを口に受け入れるのは知っています」
「はあ!?!?」
両肩を掴まれ、聞き取り調査を受けた結果、頷き続けた。
「つまり、ソッチの教師はついておらず、絵本の鳥が運んでくるという話を信じていたのだな?」
コクン
「大人になって、なんか違いそうだけど 聞いても皆が話を逸らすから知らないということだな?」
コクン
「唇を合わせた男女を見たことがあるから、唇を合わせているだけだと思っていたのだな?」
コクン
「ジャミラとサージがベッドを使っているのは、キスしたり添い寝程度だと思っていたのだな?」
コクン
「で、ジャミラとサージの口淫の姿を見たから、それだけは知ってるのだな?」
コクン
「箱入りすぎるだろう!!」
ビクッ
「違うぞ。先代と陛下に言ったんだ。エリサは微塵も悪くない」
「あの、お願いして教育を受けます」
「いや、楽しみが増えたからいい。
かなりゆっくり進めるか、初夜に医師を待機させよう」
「……?」
バン!!
ノック無しに扉が乱暴に開いた。
現れたのは陛下だった。
「将軍!近い!離れろ!」
「お人が悪い。覗き見させるだなんて」
「自制しろ!自制!」
「してますよ」
「エリサにはまだ早い!」
「お茶でも飲みますか?」
「聞いているのか!」
「今日から義兄上と呼ばせていただきますね」
「言うな!」
「お兄様、怖いです」
「何でもないよ。エリサはケーキを食べていなさい」
「義兄上。それ、誤魔化したつもりですか?」
「やめろ」
「エリサが受けてくれましたので今日から婚約者です。今後の逢瀬は覗かないでくださいね」
「いいだろう」
だけど数日後、
「何故 陛下が同席なさるのですか」
「監視が嫌なら私がここに座るしかないからな」
「エリサと距離を置いたままでいいですよ」
「もう止めたんだ。存分に可愛がることにしたんだ。まだ2人は婚約者じゃないからな」
「誓いの口付けは交わしましたから有効です」
「そんなわけがないだろう!ケダモノめ!
こんなに早く手を出すと知っていたら、会わせずに後宮の奥に閉じ込めたのに」
「歴代のシスコン陛下も敵わないシスコンぶりですね」
「私にとっては褒め言葉だ。もっと言っていいぞ」
「エリサ。次は俺の屋敷か旅行に行こう」
「駄目に決まってるだろう!」
結局 直ぐに婚約し、ハイダー様とお兄様は時間を取るようになった。私達で食事をして会話をした後、私を寝かし付けて2人で相談し合っている。
国のことと私の婚姻後の話だから気にするなと言われても気になる。
「エリサは今まで通りでいてくれたら助かるよ」
「はい、お兄様」
「エリサ。奉仕活動は監視をつけるからな」
「はい?…分かりました。…ハイダー様が付けるのですか?」
過保護な2人と一緒で幸せだった。
半年後に婚姻し、初夜も無事に済ませた。
婚約中にハイダー様がゆっくり教えてくれたので、心臓は止まらずに済んだけど寿命は縮まった気がする。
赤ちゃんを産むなんてとても怖かったけど、ハイダー様が楽しみにしてるから身を任せた結果、2年後に避妊を止めて直ぐに妊娠した。
ひと思いに殺してくださいと言いたくなるほど痛くて、二度と妊娠したくないと思った。
陣痛は丸2日を超え、途中で意識を失ったり大変だった。
「エリサ!ありがとう!本当にありがとう!」
ハイダー様に似た男児だった。
私達は2人目は望まない事で合意した。
お兄様は、ハイダー様似の息子を時々弄っている。
“今からエリサに似てもいいぞ”とほっぺたを伸ばしたり額を突いたりしている。
そんな生活をしていたら、やっぱりもう一人欲しくなってハイダー様にお強請りした。大喜びで頑張ってくれた。
私似の女の子が生まれて誰もが甘やかす。
お兄様は
「え?嫌だよ。私は甘やかす係だから」
ハイダー様は
「すまん。無理だ」
息子は
「?」
お兄様の子供達は
「ムリです」
「嫌です」
「可哀想です」
メイドや侍女達は
「滅相もないことでございます」
乳母は
「……どうしてもですか」
と、あてにならなかった。
私だけ注意するので悪者みたいになってきて、私が一番懐かれていない。
「家出しようかな」
そう呟いた日から1人を除いて注意や教育をしてくれるようになった。
そう。お兄様は頑なに甘やかす宣言を撤回しなかった結果、一番懐かれてデレデレだった。
今では夫に愛してると返せるようになって幸せだ。
終
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