【完結】継母に婚約者を寝取られましたが、何故かモテています

ユユ

文字の大きさ
上 下
8 / 11

ライバル(ファルーク)

しおりを挟む
【 ファルークの視点 】


私は愛など信じてはいない。

雇用主からの強姦により産まれた子に、己に仕えよとアザを刻む悪趣味な神は愛を謳う。

そんな暇があるなら性犯罪者をこの世に生み出すのを止めて欲しい。 愛のない結婚を強いる者に天罰をくだして欲しい。

親子関係が認められて慰謝料をもらった。かなりの金額で平民としてなら一生その金で生きていけるだろう。

神殿で育てられ知恵が付いてきた。不合格になれば解放される。だがここに居れば金をかけずに衣食住と教育の提供がある。それに安全だと判断して残った。

子供達を管理する育成部門のトップは私を他の子達と離した。私の容姿のせいだ。女の子の勉強の妨げになったり、私を巡って揉めるからだ。
下女でさえ近寄らせない。私が襲われるからだ。厳しい審査を通った下男が面倒をみてくれた。

ある日 王女が奉仕活動を始めると聞いて覗き見をした。まだ7歳の子だった。何度か見かけると彼女のことが分かってきた。

一生懸命で身分の差別をすることもない。貴族令嬢の上辺の奉仕活動とは違い、小さい体で洗濯や掃除を手伝う。暑い日も寒い日も。
そして私を見かけても興味を示さない。彼女にとって私は皆と一緒だった。

成人したら神殿を出て平民として生きていくつもりだった。だけどこの凛とした目の離せない少女を見ていたかった。

より良い地位に就こうと猛勉強をした。
信仰心など無いが、あるフリをして昇進を繰り返した。

彼女が成人する頃には、婚姻資格を得るあと一歩というところまできた。
いつも彼女が来る日に顔を出して労いの言葉をかけるが、当たり障りのない返事を返し、お茶に誘っても断る彼女に信頼を寄せた。他の女達とは違うと。

婚約の知らせを聞いた時には絶望感に包まれた。
間に合わなかった。

国王陛下に似たエリサ王女様に早く婚約者を作らなかったから、恋愛結婚をさせるのだと思っていた。
恋などしていなさそうだったから安心していたのに後妻のジャミラ王妃が決めてしまった。相手は美男子だという。

彼女が選ぶはずはない。神殿に通い詰めた彼女なら愛のない結婚を嫌がるかも知れない。
僅かな望みをかけて神判長になり、婚姻資格を得た。

チャンスはやってきた。
思っていた状況とは違うが、婚約は破棄された。
そして彼女に不幸をもたらした女をこの手で処罰できた。

直ぐに次の婚約は決まらないだろうと思っていたのに彼女はもう神殿に来ないと言う。

は?他の男との縁談!?

君の笑顔は他の者に向ける笑顔と同じだった。
君の態度は他の者に向ける態度と同じだった。
君がこんなに素晴らしい女性もいるのだと私に教えてくれた。
君が私との時間を断った。

そうやって他の女達と違うことをして私の心に住み着いておきながら、また私以外の男と婚姻しようとするのか!?


急いで陛下に会わせて欲しいと頼み込んで求婚した。

「其方とエリサはそのような関係だったのか?」

「いえ。一方的ですが、私はエリサ様をずっと見て参りました。彼女の素晴らしさをよく存じ上げております。親族以外でエリサ様をお慕いしているのは私です。私以上はありません。
奇跡を信じて神判長にまで上り詰めました。どうかエリサ様との婚姻をお許しください!」

「ん~ 
そうは言っても既に同じことを言う男が現れてな。
彼もエリサを慕ってきたそうだ。あまり知らせていないが、婚約者の募集を公表すれば、同じことを言う男はまだまだ居るはずだ。

兄の私から見てもエリサは身も心も綺麗な子だ。
本人は何故か自己評価が低いがな」

「誰ですか」

「ハイダー将軍だ」

「英雄の?」

「後妻とはなるが、彼はいい男だ。歳上ならではの経験値で傷付いたエリサを包むだろう。まだ子もいないしな」

「将軍と接点はないはずでは?」

「神殿に奉仕活動に出向いていたように、負傷兵の看護の奉仕活動もしていたんだ。
当然将軍も様子を見にいくし部下を激励しにいく。
城内で見かけることもある」

「今の時点でエリサ様がハイダー将軍を愛していないなら、私の方がいいはずです」

「だがファルーク神判長は美男子過ぎる。
エリサの前の婚約者も神判長ほどではないが美男子だった。エリサがどう感じるか。それに神判長のファンがエリサに矛先を向けないとも限らない」

「将軍だって端正な顔立ちで人気があるでしょう。
私は婚姻歴もありませんし他の女性と交わったことなどありません!」

「分かった。神判長とも交流するようエリサに言おう。だが、将軍を攻撃するようなことはしないで、あくまでも自身の魅力だけで勝負してもらいたい」

「感謝いたします」

 
排除はできなかったがチャンスはもらえた。

エリサ様と歌劇の観賞に行った。
見慣れた私の顔に頬を染めることはないが、無反応ではなかった。耳元で話すと動揺するし可愛い。
初回にしてはいい雰囲気だったのに、4人の愚かな女達が水を差した。

彼女の顔が曇ったが、その後 同じようなことがあれば教えて欲しいと制裁を口にすると“ご褒美だ”と言う。

こういう彼女がとても好きだ。だが男としては妬いて欲しい。

細くて美しい薬指を口に含み舐めた。
この指に指輪をはめるのは私だ。意識してもらいたい。キスもそれ以上のことも。

狼狽えて赤くなる彼女に今は満足しよう。


だが数日後、ハイダー将軍とエリサの噂を耳にした。

どうやら思っていたより女の扱いに慣れた男のようだ。改めて気を抜くことはできないと痛感した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者の不倫相手は妹で?

岡暁舟
恋愛
 公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。

雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」 妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。 今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。 私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

安息を求めた婚約破棄

あみにあ
恋愛
とある同窓の晴れ舞台の場で、突然に王子から婚約破棄を言い渡された。 そして新たな婚約者は私の妹。 衝撃的な事実に周りがざわめく中、二人が寄り添う姿を眺めながらに、私は一人小さくほくそ笑んだのだった。 そう全ては計画通り。 これで全てから解放される。 ……けれども事はそう上手くいかなくて。 そんな令嬢のとあるお話です。 ※なろうでも投稿しております。

真実の愛かどうかの問題じゃない

ひおむし
恋愛
ある日、ソフィア・ウィルソン伯爵令嬢の元へ一組の男女が押しかけた。それは元婚約者と、その『真実の愛』の相手だった。婚約破棄も済んでもう縁が切れたはずの二人が押しかけてきた理由は「お前のせいで我々の婚約が認められないんだっ」……いや、何で? よくある『真実の愛』からの『婚約破棄』の、その後のお話です。ざまぁと言えばざまぁなんですが、やったことの責任を果たせ、という話。「それはそれ。これはこれ」

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

私と婚約破棄して妹と婚約!? ……そうですか。やって御覧なさい。後悔しても遅いわよ?

百谷シカ
恋愛
地味顔の私じゃなくて、可愛い顔の妹を選んだ伯爵。 だけど私は知っている。妹と結婚したって、不幸になるしかないって事を……

処理中です...