29 / 29
今度こそ
しおりを挟む私が初めてあの人に...ドミニカ様に出会ったのはちょうど5歳になったばかりの頃だった。
私の今は亡き毋に連れられ後宮に御挨拶に行ったのだ。
母上とは違う紫色の髪と瞳で、煌びやか...いや、その派手過ぎる装いに苦手な人だと感じてしまったのは今でも変わらない。
「お初にお目にかかります。レオン・クラン・カスティリアと申します。以後、お見知り置きを。」
そうしてまだ、少し慣れない不格好な礼をした。
そうするとドミニカ様は目を優しそうに細め、口をにこやかにした。
「これはこれは、レオン様。ご丁寧にどうもありがとうございます。
私はドミニカですわ。どうぞ、第二の母だと思って下さいませ。」
見た目よりも遥かに優しそうな物腰に私は少し警戒心を解いてしまっていた。
ああ、この方は見た目よりも穏やかな人なのではと。
だが、その勝手な想像は直ぐに打ち砕かれる。
「ああ、そうだわ。アリナ様もいらしゃっていたわね。あまりにも質素な装いだから気付かなかったわ。
ごめんなさいね...?」
そういい扇で隠す口元は見なくても分かるほど歪んでいるろうと感じた。
母上はその物言いに不機嫌を示すように眉を寄せたが、直ぐに戻す。
「いいえ…お気になさらないでくださいまし。今日はこの子の挨拶で来たのですから。」
そう言って、軽く流していた。
そんな安い喧嘩を受けるほど頭も弱くないのだ。さっさと挨拶を済ませ、帰るつもりでいた。
「…そうですわね。あぁ、そうだわ!せっかくなのですからお茶会なんていかがかしら?私、もっとよくレオン様とお話したいのです。」
ドミニカ様はこれはいい案だとばかりに先に決め、近くのメイドに支持をした。
母上はあまりに変えない顔を少ししかめ、忌々しそうにドミニカ様を見つめていた。
断ってもよかったのだが、あまりこの人に悪い印象を与えるべきではないと判断し参加することになった。
母上はとても嫌そうだったがさっさと終わらせて帰るわよと目が語っていた。
席につき、お茶会が始まる。
時間のほとんどをドミニカ様がお話になり、ご自分の得意なこと、好きなこと、趣味や何故かお父様についても多く語っていた。
ドミニカ様のお生まれは隣国のアスクエート帝国で第3皇女だったそうだ。
アスクエート帝国は海に面しており、貿易が盛んだった。それに目をつけた父上…国王陛下はアスクエート帝国とカスティリア王国に協定を結んだ。
陸地での貿易行路でカスティリア王国の領土を渡る代わりに、アスクエート帝国の海路の貿易航路を確保した。そんな協定だ。
そして、その協定をより強固にするためにドミニカ様との政略結婚が決まったのだ。
だが、お父様は元々結婚だなんだという話は
苦手で、母上との結婚も国王という地位に収まるためだけのものだったらしい。
そして、今回も国の実益のためだ。
結婚だなんて名ばかりで、ドミニカ様を早々に後宮に放り込み放置しているというのが今の現状だ。
まぁ、お父様が物凄くドミニカ様を嫌っているというのもあるのだが…
ふと、耳を済ませると女の子の泣き声が聞こえる。
「あら、ラベンナが泣いていますわ。私に会いたくなったのかしら…?」
そう思うのであれば、早く会いに行けば良いものを。
「私のラベンナは、それはそれは可愛いのですわ。私に似たのかしら…ふふ。この前もね…」
そうして、また話が始まる。
私は最早遠い目をして、これはいつ終わるのだろうか。と感じていた。
ふと、母上を見ると顔色が少し悪く感じる。
近くに控えていたメイドを呼び、支えられるように立ちながらも母上はこちらを見やった。
「ごめんなさい…少し気分が優れないみたいで……そろそろおいとましましょうか。」
はい、と立ち上がろうとすると私の手をドミニカ様が掴んだ。
「お待ちになって。レオン様、まだ私とお話しましょう?私、まだまだ話し足りないのですわ。アリナ様、ご気分が優れないのでしたら直ぐに医務室に行かれた方が良いのではなくて?」
私はその一瞬、この人が何を言ったのか分からなかった。
何を言っているんだこの人は?
母上は正妃、貴方よりも地位は上だ。その方にその言いざまはなにか?
頭に血が登り始め、掴まれた腕を振りほどこうとした。が、その前に母上が弱々しい声で話し出す。
「……何を言って………。うっ…」
益々、顔色が悪くなっていく。そんな母上が心配になり、気づいたら声を出していた。
「母上、私は大丈夫です。ドミニカ様とお茶会を続けますので、早く王宮にお戻りください。私は、大丈夫ですので。」
そう強く見つめ、母上に伝える。
母上は酷く眉間にシワを寄せていたが、暫くして頷き、メイドに支えられるようにして王宮に戻って行った。
私の今は亡き毋に連れられ後宮に御挨拶に行ったのだ。
母上とは違う紫色の髪と瞳で、煌びやか...いや、その派手過ぎる装いに苦手な人だと感じてしまったのは今でも変わらない。
「お初にお目にかかります。レオン・クラン・カスティリアと申します。以後、お見知り置きを。」
そうしてまだ、少し慣れない不格好な礼をした。
そうするとドミニカ様は目を優しそうに細め、口をにこやかにした。
「これはこれは、レオン様。ご丁寧にどうもありがとうございます。
私はドミニカですわ。どうぞ、第二の母だと思って下さいませ。」
見た目よりも遥かに優しそうな物腰に私は少し警戒心を解いてしまっていた。
ああ、この方は見た目よりも穏やかな人なのではと。
だが、その勝手な想像は直ぐに打ち砕かれる。
「ああ、そうだわ。アリナ様もいらしゃっていたわね。あまりにも質素な装いだから気付かなかったわ。
ごめんなさいね...?」
そういい扇で隠す口元は見なくても分かるほど歪んでいるろうと感じた。
母上はその物言いに不機嫌を示すように眉を寄せたが、直ぐに戻す。
「いいえ…お気になさらないでくださいまし。今日はこの子の挨拶で来たのですから。」
そう言って、軽く流していた。
そんな安い喧嘩を受けるほど頭も弱くないのだ。さっさと挨拶を済ませ、帰るつもりでいた。
「…そうですわね。あぁ、そうだわ!せっかくなのですからお茶会なんていかがかしら?私、もっとよくレオン様とお話したいのです。」
ドミニカ様はこれはいい案だとばかりに先に決め、近くのメイドに支持をした。
母上はあまりに変えない顔を少ししかめ、忌々しそうにドミニカ様を見つめていた。
断ってもよかったのだが、あまりこの人に悪い印象を与えるべきではないと判断し参加することになった。
母上はとても嫌そうだったがさっさと終わらせて帰るわよと目が語っていた。
席につき、お茶会が始まる。
時間のほとんどをドミニカ様がお話になり、ご自分の得意なこと、好きなこと、趣味や何故かお父様についても多く語っていた。
ドミニカ様のお生まれは隣国のアスクエート帝国で第3皇女だったそうだ。
アスクエート帝国は海に面しており、貿易が盛んだった。それに目をつけた父上…国王陛下はアスクエート帝国とカスティリア王国に協定を結んだ。
陸地での貿易行路でカスティリア王国の領土を渡る代わりに、アスクエート帝国の海路の貿易航路を確保した。そんな協定だ。
そして、その協定をより強固にするためにドミニカ様との政略結婚が決まったのだ。
だが、お父様は元々結婚だなんだという話は
苦手で、母上との結婚も国王という地位に収まるためだけのものだったらしい。
そして、今回も国の実益のためだ。
結婚だなんて名ばかりで、ドミニカ様を早々に後宮に放り込み放置しているというのが今の現状だ。
まぁ、お父様が物凄くドミニカ様を嫌っているというのもあるのだが…
ふと、耳を済ませると女の子の泣き声が聞こえる。
「あら、ラベンナが泣いていますわ。私に会いたくなったのかしら…?」
そう思うのであれば、早く会いに行けば良いものを。
「私のラベンナは、それはそれは可愛いのですわ。私に似たのかしら…ふふ。この前もね…」
そうして、また話が始まる。
私は最早遠い目をして、これはいつ終わるのだろうか。と感じていた。
ふと、母上を見ると顔色が少し悪く感じる。
近くに控えていたメイドを呼び、支えられるように立ちながらも母上はこちらを見やった。
「ごめんなさい…少し気分が優れないみたいで……そろそろおいとましましょうか。」
はい、と立ち上がろうとすると私の手をドミニカ様が掴んだ。
「お待ちになって。レオン様、まだ私とお話しましょう?私、まだまだ話し足りないのですわ。アリナ様、ご気分が優れないのでしたら直ぐに医務室に行かれた方が良いのではなくて?」
私はその一瞬、この人が何を言ったのか分からなかった。
何を言っているんだこの人は?
母上は正妃、貴方よりも地位は上だ。その方にその言いざまはなにか?
頭に血が登り始め、掴まれた腕を振りほどこうとした。が、その前に母上が弱々しい声で話し出す。
「……何を言って………。うっ…」
益々、顔色が悪くなっていく。そんな母上が心配になり、気づいたら声を出していた。
「母上、私は大丈夫です。ドミニカ様とお茶会を続けますので、早く王宮にお戻りください。私は、大丈夫ですので。」
そう強く見つめ、母上に伝える。
母上は酷く眉間にシワを寄せていたが、暫くして頷き、メイドに支えられるようにして王宮に戻って行った。
2,343
お気に入りに追加
2,130
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説

希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢ルーナは、婚約者で公爵令息エヴァンから、一方的に婚約破棄を告げられる。この1年、エヴァンに無視され続けていたルーナは、そんなエヴァンの申し出を素直に受け入れた。
傷つき疲れ果てたルーナだが、家族の支えで何とか気持ちを立て直し、エヴァンへの想いを断ち切り、親友エマの支えを受けながら、少しずつ前へと進もうとしていた。
そんな中、あれほどまでに冷たく一方的に婚約破棄を言い渡したはずのエヴァンが、復縁を迫って来たのだ。聞けばルーナを嫌っている公爵令嬢で王太子の婚約者、ナタリーに騙されたとの事。
自分を嫌い、暴言を吐くナタリーのいう事を鵜呑みにした事、さらに1年ものあいだ冷遇されていた事が、どうしても許せないルーナは、エヴァンを拒み続ける。
絶対にエヴァンとやり直すなんて無理だと思っていたルーナだったが、異常なまでにルーナに憎しみを抱くナタリーの毒牙が彼女を襲う。
次々にルーナに攻撃を仕掛けるナタリーに、エヴァンは…

元婚約者に未練タラタラな旦那様、もういらないんだけど?
しゃーりん
恋愛
結婚して3年、今日も旦那様が離婚してほしいと言い、ロザリアは断る。
いつもそれで終わるのに、今日の旦那様は違いました。
どうやら元婚約者と再会したらしく、彼女と再婚したいらしいそうです。
そうなの?でもそれを義両親が認めてくれると思います?
旦那様が出て行ってくれるのであれば離婚しますよ?というお話です。

幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

【完結】元妃は多くを望まない
つくも茄子
恋愛
シャーロット・カールストン侯爵令嬢は、元上級妃。
このたび、めでたく(?)国王陛下の信頼厚い側近に下賜された。
花嫁は下賜された翌日に一人の侍女を伴って郵便局に赴いたのだ。理由はお世話になった人達にある書類を郵送するために。
その足で実家に出戻ったシャーロット。
実はこの下賜、王命でのものだった。
それもシャーロットを公の場で断罪したうえでの下賜。
断罪理由は「寵妃の悪質な嫌がらせ」だった。
シャーロットには全く覚えのないモノ。当然、これは冤罪。
私は、あなたたちに「誠意」を求めます。
誠意ある対応。
彼女が求めるのは微々たるもの。
果たしてその結果は如何に!?
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)

【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました
鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。
ところが新婚初夜、ダミアンは言った。
「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」
そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。
しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。
心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。
初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。
そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは─────
(※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる