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後始末
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「イレーヌ様」
「ん…」
「イレーヌ様、朝食です」
「リタ………!?!?」
「おはよう、イレーヌ」
「え?…あ、…おはようございます…」
リアム従兄様の膝の上で抱きしめられ胸枕で寝ていたとは気が付かなかった。
「イレーヌは俺がこうしているとよく寝てくれる。朝まで全く起きないしな」
「本当だったのですね」
「イレーヌが結婚すると思わなかった。あの兄弟が離さないと思ったんだ。父上から、イレーヌが26歳になっても嫁げない場合は迎えに行ってもいいと言われていた。あの醜い末妹を公子に押し付けたのは失敗だった。別の手で公子を退がらせれば良かった。俺がどんなに悔しかったか」
「……え?」
「イレーヌが2歳で、俺の腕の中で目を開けたとき、心を鷲掴みにされた。その時からイレーヌが欲しいと言い続けてきた。来る日も来る日も鍛えて限界を何度も超えて強くなった。剣闘会でも武闘会でも優勝して王太子にもなった。父上の許しが出るように。
ずっと駄目だと言われてきたが、やっと譲歩してもらった。それなのにイレーヌは求婚を受けてしまった。許しなど待たないでブクリエ人らしく奪えば良かった。
叔母上も反対していた。ブクリエで育っていないイレーヌには馴染めないだろうと。
思えば気にすることなど無かった。ブクリエで最強の男になった俺がイレーヌを守れないはずがないし、イレーヌに絡む奴もいない。俺が許さないと示せば良かったんだ」
「……」
「王太子殿下、イレーヌ様にお食事を食べさせたいのです」
「リタ…お前なぁ」
「イレーヌ様にとってリアム王太子殿下は今回が初対面となります。
タイミングも良くありません。本格的な戦争など未経験でしたし、二度も襲撃に遭ったのです。
今のイレーヌ様には負担です」
「…悪かった。イレーヌ、食事にしよう」
朝食後、応接間に案内された。
廊下には縄で縛られた男が横たわっていた。
「コレはゾルディアの第一王子だ。気にするな」
「ぐうっ!!」
リアムは王子を踏んで応接間に入り、イレールは避けた。
中ではバロス辺境伯と息子テオドールが待っていた。
「イレーヌ妃殿下。バロス家のせいで危険な目に遭わせてしまい申し訳ございません。その上 この城を守るために尽力していただきました。心より感謝いたします。
リアム王太子殿下。ゾルディアからエルドラドを守ってくださり 心より感謝を申し上げます」
「バロス辺境伯。イレーヌはナディア王太子妃殿下のために尽力したのだ。俺もイレーヌのために尽力した。それだけだ。
だが、俺のイレーヌを二度も危険に晒したことに憤りを覚える。実に軟弱で危機管理能力が劣っている。これで国境を守れるのか疑問だ。
そんな国にイレーヌを預けていると思うと不安で仕方ない」
「申し訳…ございません」
「ウィリアム王太子殿下。その責任は誰が負うのか分かっているな?」
「一理ありますが、攻めてきたのはゾルディアです」
「そうだな。だから処刑台にいるのだろう。まだ生きているのか?」
「はい。ゾルディア王は苦痛に苦しんでおります。女の方は事切れる寸前かと」
「それは駄目だな。テオドール。其方の妻であろう。其方の手で終わらせろ」
「感謝いたします」
捕らえた第一王子を連れて処刑台に到着すると、積んだ土嚢に括り付けられて四つん這い姿のゾルディア国王の尻に何かが群がり蠢いていた。
第一王子は最初誰だか分からなかったが、近付くと見慣れた王冠が目にとまった。
「父上?」
「たすげで…たすげて…」
「父上!!
おい!父上を解放しろ!一国の王に何て姿をさせるのだ!それでも人間か!」
「ふざけたことを言うな。非道なことをしたのはゾルディアだろう。お前達が起こした戦争で何人死んで何人が負傷したと思っているんだ」
「リアム王太子殿下。何故 貴方様が介入するのですか!ブクリエには関係のないことではありませんか。ブクリエは他国を攻めないことで知られた国ではありませんか」
「関係ある。
ブクリエ兵が二度も殺そうとした相手は俺の大事な従妹だ。つまりブクリエ王の姪だ」
「ブクリエの王族を襲うなど まさか」
「エルドラドの王太子殿下の第三妃が俺の従妹イレーヌだ。彼と一緒に襲われたぞ?」
「し、知らなかったのです!」
「命を狙っておいて“知らなかった”で済むか!」
「本当に、ブクリエの姫様に危害を加える気など無かったのです!」
「誰か…たす…」
「戦争を起こすということは情け容赦なく殺されてもいいと宣言をしたも同じことだ、愚か者め。
テオドール。お前の妻が瀕死だ。己の剣で罰を与えろ」
キャスリンの垂れ下がっていた腸は千切れ、下に落ちた腸にネズミが群がり、腹部もほじくっていた。
遠くには複数の猛禽類がとまり 処刑台を見ている。
人が来る前はアレらが群がっていたのかもしれない。
「う……」
意識を朦朧とさせたキャスリンは呻き声もろくに出せなかった。
テオドールは剣を抜くとキャスリンの胸に突き刺した。
その後 辺境伯に王の首を落とさせ、リアムは剣を振り上げて、第一王子の左の首元から胸を通過し右脇腹へ抜けさせた。分断された身体は地面に崩れ落ちた。
「ゾルディア王と第一王子の首を国境に晒せ。骸骨になっても誰かわかるように名前と処刑された日を札に書いて立てかけろ。
次のゾルディア王を誰にするかはこちらで決める。
バロス辺境伯。二度とこの様な醜態を晒すな」
「気を引き締め 厳しく管理していきます」
「リタ、イレーヌを連れて王に会いに行く。出発は明日だ。支度をするように」
「かしこまりました」
「ウィリアム王太子殿下達は自分達のペースで戻ってくれ。我らは騎馬だから速度が違う。
減った護衛は辺境軍から借りるといい」
「しかし、」
「イレーヌは俺と一緒の方が安全だ」
「…私の妻をよろしくお願いします」
「リアム従兄様、私は、」
「彼は怪我をしているんだ。馬車の速度はゆっくりだし、俺たちが介入したのはイレーヌのためだ。王に説明するのにイレーヌが側にいなくては。無事だと分かるまで王は生きた心地がしないはずだ」
「…はい、従兄様」
私はウィリアム様達を置いて翌日出発した。
「ん…」
「イレーヌ様、朝食です」
「リタ………!?!?」
「おはよう、イレーヌ」
「え?…あ、…おはようございます…」
リアム従兄様の膝の上で抱きしめられ胸枕で寝ていたとは気が付かなかった。
「イレーヌは俺がこうしているとよく寝てくれる。朝まで全く起きないしな」
「本当だったのですね」
「イレーヌが結婚すると思わなかった。あの兄弟が離さないと思ったんだ。父上から、イレーヌが26歳になっても嫁げない場合は迎えに行ってもいいと言われていた。あの醜い末妹を公子に押し付けたのは失敗だった。別の手で公子を退がらせれば良かった。俺がどんなに悔しかったか」
「……え?」
「イレーヌが2歳で、俺の腕の中で目を開けたとき、心を鷲掴みにされた。その時からイレーヌが欲しいと言い続けてきた。来る日も来る日も鍛えて限界を何度も超えて強くなった。剣闘会でも武闘会でも優勝して王太子にもなった。父上の許しが出るように。
ずっと駄目だと言われてきたが、やっと譲歩してもらった。それなのにイレーヌは求婚を受けてしまった。許しなど待たないでブクリエ人らしく奪えば良かった。
叔母上も反対していた。ブクリエで育っていないイレーヌには馴染めないだろうと。
思えば気にすることなど無かった。ブクリエで最強の男になった俺がイレーヌを守れないはずがないし、イレーヌに絡む奴もいない。俺が許さないと示せば良かったんだ」
「……」
「王太子殿下、イレーヌ様にお食事を食べさせたいのです」
「リタ…お前なぁ」
「イレーヌ様にとってリアム王太子殿下は今回が初対面となります。
タイミングも良くありません。本格的な戦争など未経験でしたし、二度も襲撃に遭ったのです。
今のイレーヌ様には負担です」
「…悪かった。イレーヌ、食事にしよう」
朝食後、応接間に案内された。
廊下には縄で縛られた男が横たわっていた。
「コレはゾルディアの第一王子だ。気にするな」
「ぐうっ!!」
リアムは王子を踏んで応接間に入り、イレールは避けた。
中ではバロス辺境伯と息子テオドールが待っていた。
「イレーヌ妃殿下。バロス家のせいで危険な目に遭わせてしまい申し訳ございません。その上 この城を守るために尽力していただきました。心より感謝いたします。
リアム王太子殿下。ゾルディアからエルドラドを守ってくださり 心より感謝を申し上げます」
「バロス辺境伯。イレーヌはナディア王太子妃殿下のために尽力したのだ。俺もイレーヌのために尽力した。それだけだ。
だが、俺のイレーヌを二度も危険に晒したことに憤りを覚える。実に軟弱で危機管理能力が劣っている。これで国境を守れるのか疑問だ。
そんな国にイレーヌを預けていると思うと不安で仕方ない」
「申し訳…ございません」
「ウィリアム王太子殿下。その責任は誰が負うのか分かっているな?」
「一理ありますが、攻めてきたのはゾルディアです」
「そうだな。だから処刑台にいるのだろう。まだ生きているのか?」
「はい。ゾルディア王は苦痛に苦しんでおります。女の方は事切れる寸前かと」
「それは駄目だな。テオドール。其方の妻であろう。其方の手で終わらせろ」
「感謝いたします」
捕らえた第一王子を連れて処刑台に到着すると、積んだ土嚢に括り付けられて四つん這い姿のゾルディア国王の尻に何かが群がり蠢いていた。
第一王子は最初誰だか分からなかったが、近付くと見慣れた王冠が目にとまった。
「父上?」
「たすげで…たすげて…」
「父上!!
おい!父上を解放しろ!一国の王に何て姿をさせるのだ!それでも人間か!」
「ふざけたことを言うな。非道なことをしたのはゾルディアだろう。お前達が起こした戦争で何人死んで何人が負傷したと思っているんだ」
「リアム王太子殿下。何故 貴方様が介入するのですか!ブクリエには関係のないことではありませんか。ブクリエは他国を攻めないことで知られた国ではありませんか」
「関係ある。
ブクリエ兵が二度も殺そうとした相手は俺の大事な従妹だ。つまりブクリエ王の姪だ」
「ブクリエの王族を襲うなど まさか」
「エルドラドの王太子殿下の第三妃が俺の従妹イレーヌだ。彼と一緒に襲われたぞ?」
「し、知らなかったのです!」
「命を狙っておいて“知らなかった”で済むか!」
「本当に、ブクリエの姫様に危害を加える気など無かったのです!」
「誰か…たす…」
「戦争を起こすということは情け容赦なく殺されてもいいと宣言をしたも同じことだ、愚か者め。
テオドール。お前の妻が瀕死だ。己の剣で罰を与えろ」
キャスリンの垂れ下がっていた腸は千切れ、下に落ちた腸にネズミが群がり、腹部もほじくっていた。
遠くには複数の猛禽類がとまり 処刑台を見ている。
人が来る前はアレらが群がっていたのかもしれない。
「う……」
意識を朦朧とさせたキャスリンは呻き声もろくに出せなかった。
テオドールは剣を抜くとキャスリンの胸に突き刺した。
その後 辺境伯に王の首を落とさせ、リアムは剣を振り上げて、第一王子の左の首元から胸を通過し右脇腹へ抜けさせた。分断された身体は地面に崩れ落ちた。
「ゾルディア王と第一王子の首を国境に晒せ。骸骨になっても誰かわかるように名前と処刑された日を札に書いて立てかけろ。
次のゾルディア王を誰にするかはこちらで決める。
バロス辺境伯。二度とこの様な醜態を晒すな」
「気を引き締め 厳しく管理していきます」
「リタ、イレーヌを連れて王に会いに行く。出発は明日だ。支度をするように」
「かしこまりました」
「ウィリアム王太子殿下達は自分達のペースで戻ってくれ。我らは騎馬だから速度が違う。
減った護衛は辺境軍から借りるといい」
「しかし、」
「イレーヌは俺と一緒の方が安全だ」
「…私の妻をよろしくお願いします」
「リアム従兄様、私は、」
「彼は怪我をしているんだ。馬車の速度はゆっくりだし、俺たちが介入したのはイレーヌのためだ。王に説明するのにイレーヌが側にいなくては。無事だと分かるまで王は生きた心地がしないはずだ」
「…はい、従兄様」
私はウィリアム様達を置いて翌日出発した。
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