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怒るナディア
しおりを挟むはあ~、疲れた。
マリオくんには泣かれるし、しがみついて離れないし。
そして馬車は私とリタと王太子殿下が乗って気疲れしてしまった。
馬に乗ると言っても駄目だって譲らなし、終いには“矢が飛んで来たらどうするつもりだ” と言われ。
賊に矢を放った私が否定できるはずもなく。
「ナディアが半狂乱だった」
「ナディア様が?」
「私も驚いた。
戻ったら一番に会うのはナディアかもしれない。
甘んじて受け止めてくれ」
「何をですか?」
「説教だな」
「え!?」
「あの様なナディアは初めて見た」
「間に入って宥めてくださったりは?」
「君のため、皆のためだ。
しっかりと叱られてくれ」
「……」
ナディア様、怖そうね…。戻りたくないけどナディア様の誕生日だものね。
「んん``」
ん?
「庇ってやらないこともない」
「本当ですか!?」
「条件がある」
「……」
「そんな目で見るな。大したことではない」
「大したことでなければ条件にしなくたって、」
「頑張ってくれ」
「何ですか、条件は」
「(……ウィリアムと……)」
「はい?」
聞こえませんが。
「……ウィリアムと呼んでくれたら」
「はあ?」
「(名前くらい……)」
「……絶対庇ってくれますか?」
「庇う」
「全力で?」
「力の限り」
「矛先にも?」
「なる」
「約束を破ったら?」
「有り得ないが、罰を受ける」
「一日女装?」
「入る服があれば」
「私にお任せを」
「くっ…リタは頼もしいな」
「では、頼みましたよ。ウィリアム様」
「ありがとう、イレーヌ」
お城に着くと、陛下に報告をして、その間も殿下は一緒にいてくれた。
その後、殿下の応接間に行き、そこにナディア様を呼んだ。
「イレーヌ!」
「ナディア様」
「2人きりでお忍びなんて!」
「すみません」
「どれだけ心配したか!」
「すみません」
「ちょっと、何でウィリアム様が立ちはだかるのです!」
「ナディア、落ち着け。
イレーヌもちょっとは反省しているから」
「襲撃している賊に向かっていって襲撃するなんて!」
「だって、子供の声が、」
「イレーヌは放っておけないんだ。なあ?リタ」
「はい。王太子殿下」
「イレーヌ!こっちに来なさい!」
「可哀想だろう。そんなに怒らずに、優しく諭してやれ」
「何でウィリアム様が私とイレーヌの邪魔をなさるのですか!」
「無謀だけど、おかげで侯爵家からは感謝された。
今度から出かける時は護衛をたくさん連れて行くし、こっそり出ていかない。
な、イレーヌ」
「え~」
「こっちに来なさい!」
「ナディア、そんなにキツく言うな。
疲れているんだから休ませないと」
「私だって眠れませんでした!」
「ナディア様、ごめんなさい」
「もう、二度としないと誓いなさい!」
「それはちょっと……」
「こっちに来なさい!」
「ナディア、そんなに怖い顔をしていたら、今度は家出してしまうぞ」
「 !! 」
「ナディア様ぁ」
「もうっ! 困った子なんだから!」
「ナディア様、ご心配をお掛けしました」
「本当よ!寿命が縮んだんだから、今夜のパーティはちゃんと私の傍にいるのよ」
「私がですか?邪魔になったりは、」
「紐で繋ぐわよ」
「分かりました」
「良かったな。ナディアもイレーヌが好きだからこんなに怒るんだぞ?
さあ、もうこの話は終わりだ。茶を飲んで体を温めたらパーティの身支度をしよう。ナディア達は時間がかかるからな」
そのまま3人でティータイムをして自室に戻った。
そこにノアム様がやってきたが、支度があるので少し言葉を交わしてから戻ってもらった。
「メイドを入れますのでマッサージしてもらいましょう」
「分かったわ」
メイドがマッサージの支度をしていると今度はクロード様が訪ねてきた。
「イレーヌ! 心配したよ」
「ありがとう。無傷だし、襲われたのは私達じゃないから」
「2人で出かけるなんて!」
「クロード様、お支度が間に合わなくなってしまうの。戻って貰えないかしら」
「っ! 分かった」
「ごめんなさいね」
支度で忙しいのは本当だけど、怒られ疲れた。
「しかし、ナディア様はイレーヌ様のお母様みたいでしたね」
「恐ろしいお母様だったわ。本当のお母様は静かに怒るタイプだし、2人揃ったら大変なことになるわ」
「それは私も避けたいです」
「ナディア様が好む髪型はどんな感じかしら」
「聞いてきてもらいましょうか」
「そうね」
ちょっと聞いてくるだけのことなのに……
「違うわ。もっとふんわりさせて」
「かしこまりました」
「その色は駄目よ。イレーヌの髪や瞳の色を邪魔しないようにしないと」
「こちらはいかがでしょう」
「いいわ」
言葉で返事を貰いたかったのに、たくさんの荷物を抱えたメイド達とナディア様が宮におしかけてきた。
ここで身支度を一緒にやるのだという。
まあ、怒ってたことを忘れてくださって良かった。
リタも苦笑いしていた。
私を自分好みに染められてご満悦のようだし。
マリオくんには泣かれるし、しがみついて離れないし。
そして馬車は私とリタと王太子殿下が乗って気疲れしてしまった。
馬に乗ると言っても駄目だって譲らなし、終いには“矢が飛んで来たらどうするつもりだ” と言われ。
賊に矢を放った私が否定できるはずもなく。
「ナディアが半狂乱だった」
「ナディア様が?」
「私も驚いた。
戻ったら一番に会うのはナディアかもしれない。
甘んじて受け止めてくれ」
「何をですか?」
「説教だな」
「え!?」
「あの様なナディアは初めて見た」
「間に入って宥めてくださったりは?」
「君のため、皆のためだ。
しっかりと叱られてくれ」
「……」
ナディア様、怖そうね…。戻りたくないけどナディア様の誕生日だものね。
「んん``」
ん?
「庇ってやらないこともない」
「本当ですか!?」
「条件がある」
「……」
「そんな目で見るな。大したことではない」
「大したことでなければ条件にしなくたって、」
「頑張ってくれ」
「何ですか、条件は」
「(……ウィリアムと……)」
「はい?」
聞こえませんが。
「……ウィリアムと呼んでくれたら」
「はあ?」
「(名前くらい……)」
「……絶対庇ってくれますか?」
「庇う」
「全力で?」
「力の限り」
「矛先にも?」
「なる」
「約束を破ったら?」
「有り得ないが、罰を受ける」
「一日女装?」
「入る服があれば」
「私にお任せを」
「くっ…リタは頼もしいな」
「では、頼みましたよ。ウィリアム様」
「ありがとう、イレーヌ」
お城に着くと、陛下に報告をして、その間も殿下は一緒にいてくれた。
その後、殿下の応接間に行き、そこにナディア様を呼んだ。
「イレーヌ!」
「ナディア様」
「2人きりでお忍びなんて!」
「すみません」
「どれだけ心配したか!」
「すみません」
「ちょっと、何でウィリアム様が立ちはだかるのです!」
「ナディア、落ち着け。
イレーヌもちょっとは反省しているから」
「襲撃している賊に向かっていって襲撃するなんて!」
「だって、子供の声が、」
「イレーヌは放っておけないんだ。なあ?リタ」
「はい。王太子殿下」
「イレーヌ!こっちに来なさい!」
「可哀想だろう。そんなに怒らずに、優しく諭してやれ」
「何でウィリアム様が私とイレーヌの邪魔をなさるのですか!」
「無謀だけど、おかげで侯爵家からは感謝された。
今度から出かける時は護衛をたくさん連れて行くし、こっそり出ていかない。
な、イレーヌ」
「え~」
「こっちに来なさい!」
「ナディア、そんなにキツく言うな。
疲れているんだから休ませないと」
「私だって眠れませんでした!」
「ナディア様、ごめんなさい」
「もう、二度としないと誓いなさい!」
「それはちょっと……」
「こっちに来なさい!」
「ナディア、そんなに怖い顔をしていたら、今度は家出してしまうぞ」
「 !! 」
「ナディア様ぁ」
「もうっ! 困った子なんだから!」
「ナディア様、ご心配をお掛けしました」
「本当よ!寿命が縮んだんだから、今夜のパーティはちゃんと私の傍にいるのよ」
「私がですか?邪魔になったりは、」
「紐で繋ぐわよ」
「分かりました」
「良かったな。ナディアもイレーヌが好きだからこんなに怒るんだぞ?
さあ、もうこの話は終わりだ。茶を飲んで体を温めたらパーティの身支度をしよう。ナディア達は時間がかかるからな」
そのまま3人でティータイムをして自室に戻った。
そこにノアム様がやってきたが、支度があるので少し言葉を交わしてから戻ってもらった。
「メイドを入れますのでマッサージしてもらいましょう」
「分かったわ」
メイドがマッサージの支度をしていると今度はクロード様が訪ねてきた。
「イレーヌ! 心配したよ」
「ありがとう。無傷だし、襲われたのは私達じゃないから」
「2人で出かけるなんて!」
「クロード様、お支度が間に合わなくなってしまうの。戻って貰えないかしら」
「っ! 分かった」
「ごめんなさいね」
支度で忙しいのは本当だけど、怒られ疲れた。
「しかし、ナディア様はイレーヌ様のお母様みたいでしたね」
「恐ろしいお母様だったわ。本当のお母様は静かに怒るタイプだし、2人揃ったら大変なことになるわ」
「それは私も避けたいです」
「ナディア様が好む髪型はどんな感じかしら」
「聞いてきてもらいましょうか」
「そうね」
ちょっと聞いてくるだけのことなのに……
「違うわ。もっとふんわりさせて」
「かしこまりました」
「その色は駄目よ。イレーヌの髪や瞳の色を邪魔しないようにしないと」
「こちらはいかがでしょう」
「いいわ」
言葉で返事を貰いたかったのに、たくさんの荷物を抱えたメイド達とナディア様が宮におしかけてきた。
ここで身支度を一緒にやるのだという。
まあ、怒ってたことを忘れてくださって良かった。
リタも苦笑いしていた。
私を自分好みに染められてご満悦のようだし。
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