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このままでは帰れなかった
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護衛騎士達を診療所へ運び入れ重傷者から手当をしていく。
「先生、軽傷者はこちらで手当をします。消毒液と清潔な布と針と糸を貸してください」
「できるのかい?」
「彼女が」
「お任せください」
医師が重傷者の手当をしながらリタの手さばきを確認すると、安心したようで任せてもらえた。
手当てが落ち着いてきた頃に外が騒がしくなった。
医師が村人に屋敷に連絡を入れに行かせたから、迎えが来たのだろう。
「母上!! マリオ!!」
「父上!!」
「静かにしてください!」
「っ! すまない」
新たな護衛も連れて来たようだから大丈夫かな。
護衛騎士が主に報告をした。
「母と息子を助けていただき有難うございました」
「あの、出来れば頑丈で貧乏そうに見える馬車がいいですよ。アレでは襲ってくださいと言っているようなものです。
特に中にいる方が戦えないのであれば尚更です。
この護衛の数で襲われるのですから、手練の護衛を増やすか、周辺の賊狩りをするか、何かしら対策を取ってください。
では、私達はこれで」
「待ってください。何処へ行くのですか」
「湖です」
「水浴びですか?」
「いえ、観光です」
「返り血が酷すぎてそれは無理でしょう。
貴女はそうでもありませんが、他の三名は湯浴みをして服を洗わねば。きっと馬も鞍も汚れたのでは?」
「あっ」
「後、外で縛られているのが賊ですね?」
「はい。賊の中で指示を出していた者を生かして連れてきました。残りは襲撃現場で息の根を止めましたので、後始末をなさる方々に連絡を入れてください」
「分かりました。感謝します」
手当が済んだ軽傷者と夫人と幼子とともに屋敷に向かった。
到着後、リタと交代で湯浴みをした。
服も貸してもらった。
そして、改めて応接間に呼ばれた。
「私は侯爵家当主のルシアン・クラヴィノと申します。
貴女方に救って頂いた母のビクトリアと息子のマリオです」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「イレーヌと申します。彼女はリタ。彼らは初めて見る護衛です」
「? え?」
「恐らく私に内緒で身内が付けた護衛だと思うのです。住まいから着いてきていますから」
「イレーヌ様は貴族の方かと」
「近いですわね」
「ご令嬢?夫人?」
「捨て置かれた3番目の妻です」
「「……」」
「父上、どういう意味ですか?」
「マリオ、聞くんじゃない」
「マリオ様。例え話で説明しますね。
マリオ様がお父様から、また玩具をプレゼントされました。
だけどマリオ様はその玩具が嫌でした。
その玩具は一度も手に取らず使わず見向きもせず、部屋の玩具入れに放置したままでした。
このお話は分かりますか?」
「はい」
「私はその気に入らない玩具なのです」
「……およめさんに来たのにイヤがられたの?」
「はい。その通りです」
「だったら家においでよ」
「マリオ?」
「だって、強くて優しくてオンジンでこんなにキレイなお姉様だもん。要らないなら僕が欲しい」
「こら!マリオ!」
「まあ、嬉しいわ。だけど簡単には解放されないの。要らないクセに酷いわよね。
でも、それ以外の人が良くしてくださるから、離れで静かにリタと暮らしているの」
「僕が姉様とケッコンする!」
「嬉しいけど、マリオ様が成人する頃には、嫁入りできない年齢になってしまうの。
でもありがとう」
「しばらく滞在してくれないか。命の恩人にお礼ともてなしをしたい」
「帰りませんと」
「姉様、泊まっていって。もうすぐ暗くなるよ?」
リタと顔を見合わせると、リタが微笑んだ。仕方がないようだ。
「貴方達だけでも戻ってお義父様と第一夫人に伝えてくださる?」
「ですが」
「さっきで分かったでしょう?女二人が日暮れに移動すれば狙われるし、連絡を入れなければお義父様が大騒ぎしてしまうわ」
「かしこまりました」
「侯爵様。彼らが走り抜けられるように、少し食料と水を持たせてもらえますか」
「用意させよう」
「二人とも、気を付けてね。
それと、明日、主に説明させてね」
「え? 」
「怒られるの?」
「……」
「でも結局私にバレたことに代わりはないし、貴方達だけ戻ったら事情を説明しないと対象を置き去りにして戻った護衛として叱られるわよ?」
「……確かに」
「気を付けてね」
彼等を送り出し、食べ損ねた食事をしようとした。
「昼食は買ったので、場所を貸していただければ」
「いつお買いに?」
「6時間近く前です」
「駄目ですわ!」
「大丈夫ですわ(多分)」
袋を開けるとグチャグチャだった。
疾走して戦ったものね。
「急いで用意させますわ。私達もお腹が空きましたもの」
「僕も食べたい!」
「私も腹が鳴りかけている」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきますわ」
「姉様、それまで僕と遊んで?」
「こら、マリオ!」
「何をして遊ぶのかしら」
「チビを撫でるの」
「チビ?」
「犬だよ」
子犬なのね。
「撫でに行きましょう」
「エスコートするぅ」
「まあ。マリオ様、よろしくお願いしますわね」
マリオ様の手を繋いで庭に向かった。
「先生、軽傷者はこちらで手当をします。消毒液と清潔な布と針と糸を貸してください」
「できるのかい?」
「彼女が」
「お任せください」
医師が重傷者の手当をしながらリタの手さばきを確認すると、安心したようで任せてもらえた。
手当てが落ち着いてきた頃に外が騒がしくなった。
医師が村人に屋敷に連絡を入れに行かせたから、迎えが来たのだろう。
「母上!! マリオ!!」
「父上!!」
「静かにしてください!」
「っ! すまない」
新たな護衛も連れて来たようだから大丈夫かな。
護衛騎士が主に報告をした。
「母と息子を助けていただき有難うございました」
「あの、出来れば頑丈で貧乏そうに見える馬車がいいですよ。アレでは襲ってくださいと言っているようなものです。
特に中にいる方が戦えないのであれば尚更です。
この護衛の数で襲われるのですから、手練の護衛を増やすか、周辺の賊狩りをするか、何かしら対策を取ってください。
では、私達はこれで」
「待ってください。何処へ行くのですか」
「湖です」
「水浴びですか?」
「いえ、観光です」
「返り血が酷すぎてそれは無理でしょう。
貴女はそうでもありませんが、他の三名は湯浴みをして服を洗わねば。きっと馬も鞍も汚れたのでは?」
「あっ」
「後、外で縛られているのが賊ですね?」
「はい。賊の中で指示を出していた者を生かして連れてきました。残りは襲撃現場で息の根を止めましたので、後始末をなさる方々に連絡を入れてください」
「分かりました。感謝します」
手当が済んだ軽傷者と夫人と幼子とともに屋敷に向かった。
到着後、リタと交代で湯浴みをした。
服も貸してもらった。
そして、改めて応接間に呼ばれた。
「私は侯爵家当主のルシアン・クラヴィノと申します。
貴女方に救って頂いた母のビクトリアと息子のマリオです」
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「イレーヌと申します。彼女はリタ。彼らは初めて見る護衛です」
「? え?」
「恐らく私に内緒で身内が付けた護衛だと思うのです。住まいから着いてきていますから」
「イレーヌ様は貴族の方かと」
「近いですわね」
「ご令嬢?夫人?」
「捨て置かれた3番目の妻です」
「「……」」
「父上、どういう意味ですか?」
「マリオ、聞くんじゃない」
「マリオ様。例え話で説明しますね。
マリオ様がお父様から、また玩具をプレゼントされました。
だけどマリオ様はその玩具が嫌でした。
その玩具は一度も手に取らず使わず見向きもせず、部屋の玩具入れに放置したままでした。
このお話は分かりますか?」
「はい」
「私はその気に入らない玩具なのです」
「……およめさんに来たのにイヤがられたの?」
「はい。その通りです」
「だったら家においでよ」
「マリオ?」
「だって、強くて優しくてオンジンでこんなにキレイなお姉様だもん。要らないなら僕が欲しい」
「こら!マリオ!」
「まあ、嬉しいわ。だけど簡単には解放されないの。要らないクセに酷いわよね。
でも、それ以外の人が良くしてくださるから、離れで静かにリタと暮らしているの」
「僕が姉様とケッコンする!」
「嬉しいけど、マリオ様が成人する頃には、嫁入りできない年齢になってしまうの。
でもありがとう」
「しばらく滞在してくれないか。命の恩人にお礼ともてなしをしたい」
「帰りませんと」
「姉様、泊まっていって。もうすぐ暗くなるよ?」
リタと顔を見合わせると、リタが微笑んだ。仕方がないようだ。
「貴方達だけでも戻ってお義父様と第一夫人に伝えてくださる?」
「ですが」
「さっきで分かったでしょう?女二人が日暮れに移動すれば狙われるし、連絡を入れなければお義父様が大騒ぎしてしまうわ」
「かしこまりました」
「侯爵様。彼らが走り抜けられるように、少し食料と水を持たせてもらえますか」
「用意させよう」
「二人とも、気を付けてね。
それと、明日、主に説明させてね」
「え? 」
「怒られるの?」
「……」
「でも結局私にバレたことに代わりはないし、貴方達だけ戻ったら事情を説明しないと対象を置き去りにして戻った護衛として叱られるわよ?」
「……確かに」
「気を付けてね」
彼等を送り出し、食べ損ねた食事をしようとした。
「昼食は買ったので、場所を貸していただければ」
「いつお買いに?」
「6時間近く前です」
「駄目ですわ!」
「大丈夫ですわ(多分)」
袋を開けるとグチャグチャだった。
疾走して戦ったものね。
「急いで用意させますわ。私達もお腹が空きましたもの」
「僕も食べたい!」
「私も腹が鳴りかけている」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきますわ」
「姉様、それまで僕と遊んで?」
「こら、マリオ!」
「何をして遊ぶのかしら」
「チビを撫でるの」
「チビ?」
「犬だよ」
子犬なのね。
「撫でに行きましょう」
「エスコートするぅ」
「まあ。マリオ様、よろしくお願いしますわね」
マリオ様の手を繋いで庭に向かった。
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