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お忍び?

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「ねえ、リタ。お出かけしない?」

「どちらへ」

「何処でもいいわ。城から離れられたら。日帰りで」

「馬車ですか?それとも、」

「馬に乗るわ」

「かしこまりました」

朝食のワゴンを外に出し、衣装部屋へ向かうリタを見ながら溜息をついた。

王太子の視線が煩いし、とち狂ったのか花を贈ってきたから、間違えてますよとそのまま持ち帰らせた。
持ってきてくれた使用人には悪いことをしたけど、ここで受け取ると癖が付く。つまり躾だ。

「どちらがよろしいでしょうか」

「貧乏に見えそうな方」

「かしこまりました」


そしてノアム様とナディア様が離れない。
昨日は丸一日こちらに来て過ごして行った。
二人とも泊まろうとしたので遠慮してもらった。

隠居暮らしが急に王族だのパーティだので疲れてしまった。


支度をしてメッセージを書いた。
陛下宛とナディア様宛だ。
“一日出かけます”

ノアム様と何も約束してないから大丈夫よね。

メイドを捕まえて託した。

「これ、陛下とナディア様に渡してくれる?」

「イレーヌ様はどちらへ行かれるのですか!?」

「外」

「え!? イレーヌ様!?」

宮の中でベルが鳴り響いているが無視して外に出るとリタが馬を二頭連れていた。

「お好きな方へどうぞ」

「ありがとう」


そして城門でも一悶着あったけど、

「私は王太子殿下の第三妃で、ルフレーの王族でもあるの。囚人じゃないのよ?
外出に貴方の許可はもちろん、誰の許可も必要ないの」

「……開門!!」

「ごめんね、バロウ」

門番バロウに謝った。

「必ず無事にお戻りを」

「もちろんよ。

リタ、走るわよ」



30分ほど走らせると王都から外れた最初の町に着いた。

「ここで食料を買いましょう」

馬を繋ぎ店入った。

「ピクニックをしたいの。パンに具を挟んだものと飲み物とデザートになるようなものが欲しいわ。
馬に乗るから揺れて崩れるようなものは避けたいの。お願いできるかしら」

「はい、あちらで座ってお待ちください」


リタと座り外を眺めた。

「ねえ。放っておいて大丈夫かしら」

「アレはイレーヌおじょう様をお守りしているつもりの者です」

「そうなの?」

「エスペランス(の者)かもしれません。
王太子(の命令)という可能性もございますが」

「どうして?」

「お気に召されたのでしょう。嫌でしたら縛って参りますが」

「可哀想だから止めてあげて」

「まきますか」

「お昼ご飯がグチャグチャになっちゃうし、彼らも怒られるでしょう?危険がないなら放っておくことにするわ」

「お優しい」



さらに馬で移動すること二時間。

「この先に少し行くと人気の観光地がございます。右の方に向かえば少し大きな町があります。
左は大きな湖があります」

「湖がいいわ」

「では、あと一息でございます」



しばらくして湖が見えてきた。
だけど、運が悪かった。


「右に回れ!」

カン カン 

「死守しろ!」

キーン

「うわぁっ!」

「隊長が斬られた!」


豪華な馬車と、それを守る護衛の騎馬隊が襲わていた。

「引き返しましょう」

馬の向きを変えると馬車から叫び声が聞こえてきた。

「おばあさま!」

幼い男の子の声だった。

「リタ!」

「かしこまりました」

リタは長剣を抜き、私は箙の蓋を開けて肩にかけ弓を手にした。

全速力で向かいながら弓を射っていく。

「グッ」

「一人!」

「ガハッ」

「二人!」

「ウッ」

「三人!」

「目が!」

「四人!」

四人射抜いた所で馬車まで到着してリタが賊を斬っていく。

そこに王城から後をつけてきた二人が 賊退治をする私達に加勢をした。

「撤退だ!てっ、」

ドサッ

賊の頭と思われる男を射抜くと落馬した。
鞭を取り出して、男の腕に巻き付け馬を走らせた。

「止めろ!!止めてくれ~!!」

構わず引き摺り続けた。


数分後、残りを全て斬り終えたリタが合図に手を挙げた。

男を引き摺りながら馬車まで戻った。

「リタ、彼の応急処置を」

「かしこまりました」

隊長らしき人の手当をさせている間に無事だった護衛に命じた。

「馬車の中は?開けなさい」

「……」

馬車の車体を叩いた。

ドンドンドン!

「脅威は去った!扉を開けなさい!」

「貴女は誰です」

馬車の扉は閉まったまま 中から返事が返ってきた。

「このまま私達が去ると、この隊は格好の餌ですよ。先ず貴女がすべき事をなさい!」

ガチャ

扉を開けて出てきたのは夫人と幼子だった。
多分男の子の祖母だろう。

「軽傷者は馬に乗り、助かりそうな馬を引いて。
一人で騎乗が出来なさそうな者の内、二人はこの人達の後ろに乗せてもらい、残りは馬車に乗せて。
夫人は御者台へ。君はリタが乗せるわ」

「待ってくれ、そのようなことはさせられません」

「隊長さん。選択肢は無いの。
守るべき者は守ったのだから、構わないでしょう?貴方達を置いていくような主人なら私達はこのまま去るわ」

「ヘイリック卿、言う通りにしましょう。

助けていただき感謝いたします。
屋敷までお供していただけますでしょうか」

「では、深手の傷の処置を終えたら出発しましょう。在中医は?」

「いえ。呼びに行かねばなりません」

「ここから屋敷までの間に医師のいる診療所か何かはありますか」

「ここから屋敷まで馬車で30分ほど。医師はその手前です」

「では、先に医師のところに寄りましょう。道は大きく逸れませんね?」

「はい」

「そこの君、怪我は?」

「かすり傷です」

「では先に馬で医師の元に行ってくれる?
不在なのに行っても意味が無いから。
行って、医師を見つけて何処にも行かないようにしてもらえるかしら。あと、刀傷の者を数名運ぶから準備するように伝えて。
医師が不在なら知らせに戻って」

「かしこまりました。行って参ります」


医師は見つかり、準備を整えて迎えてもらえた。
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