【完結】欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ

文字の大きさ
上 下
7 / 29

自分の妻だと言いたいウィリアム

しおりを挟む
【 王太子 ウィリアムの視点 】

イレーヌは宮から出てこない。
食事も参加しない。
ティータイムも。

公務は別だし、しばらく彼女に振り分けはない。
公式行事は正妃のナディアをエスコートするし、全く接点がない。ダンスにも誘えない。


父上達と狩りに出掛けて楽しそうだった。 
国王と王太子は同時に狩りに行けない決まりになっている。私が行けないのに今まで行ったことのないクロードが何故行くんだ!

ナディアまで狩りが出来るとは知らなかった。
ペネロープと子供達と昼食をとったがつまらない。

イレーヌが夕食を伴にする日も話に加われない。
クロードは好意を剥き出しにしているし。


「ナディアは?」

夜、イレーヌのことを聞こうとナディアの部屋を訪ねても誰も居なかった。
通りかかった侍女長に尋ねると、

「王太子妃殿下はイレーヌ妃の宮でお泊まりです」

は?

「イレーヌが誘ったのか」

「王太子妃殿下がおしゃべりしながら一緒に寝たいとお願いをなさいました」

「一緒に!?」

「仲の良い姉妹のようでございました」

「ありがとう」

私が出来ないイレーヌとの共寝をナディアが…。




翌朝、といっても昼に近いがナディアの弟が到着した。

「ウィリアム王太子殿下、お招きいただきありがとうございます。婚姻の儀以来ですね。
あれ?姉上は?」

「城内にいるのだが……呼ばせているので先に部屋へ案内させます」


昼食の席にやっとナディアが顔を見せた。

「待たせてごめんなさい、ノアム。よく来てくれたわね」

「姉様、ご機嫌だね。そんなに私と会えて嬉しいの?」

「嬉しいわ。もう一つ嬉しいことがあったの。
会わせたい人がいるから後でいいかしら」

「会わせたい人?」

「そうよ。今日のパーティは彼女をエスコートして欲しいの」

「誤解を生まないか?」

「大丈夫、彼の第三妃だから」

「え?」

「いいですわよね、ウィリアム様」

「……」

「王太子殿下、よろしいですわね?」

「イレーヌが参加とエスコートを承諾すればな」

「誘ったから参加はしますわ。この後交渉します」

「姉様、そこまでしてパートナーは必要ないよ」

「この機会を逃したら後悔するわよ」

「はあ、分かったよ。仰せのままに」

気に入らない。

何故私の妻を他の男に……。



歓迎のパーティは内輪のものだ。

要職の者と王族、エスペランス出身の貴族が集まった。

本格的なパーティは明々後日のナディアの誕生日に行う。

私はペネロープを。父上がナディアを。そして…

ノ「イレーヌ、なんて美しいんだ」

何故其方がイレーヌと呼ぶんだ!

ナ「まあ、素敵。エスペランスのドレスね」

王「まさか、あのドレスがこれに?」

イ「いただいたドレスを勝手に申し訳ございません」

ナ「どういうこと?」

イ「陛下に不要なドレスを下げ渡していただきたいと申し上げたのです」
〈王妃様の古いドレスを二着くださいましたのでリタがエスペランス風に手を加えましたの〉

ナ〈嬉しいわ〉

ノ〈ありがとう、イレーヌ。素晴らしい持て成しだ。天に召された王妃様のドレスを受け継いだことも素晴らしい。両国の素敵な思い出になりそうだ〉

王〈不思議なものだ。然程変わっていないのにシルエットが変わって少し飾りを付けると別のものに見える〉

ノ〈さあ、イレーヌ。私の手を取って〉

イ〈よろしくお願いします、ノアム様〉

何故エスペランスの言葉で話すんだ!
挨拶や簡単な単語しか分からないから想定するしかない。


歓迎のパーティが始まるとノアム殿下がイレーヌを伴って挨拶回りを始めた。特にエスペランス出身の貴族達は大喜びだし、何を話しているのかまるでわからないくらいに難しい。

イレーヌは私の妻なのに、あれではまるでノアム殿下の妻みたいではないか。

「殿下、ノアム殿下が気になるのですか」

「まあ。彼に失礼があってはならないからな」

「あのドレス、どうしちゃったのでしょう。
我が国の品位が問われますわね」

「ペネロープ。無知ならば閉口するがよい」

「へ、陛下」

「あのデザインはエスペランス王国伝統のドレスのシルエットになるよう、ウィリアムの母である亡くなった王妃のドレスを手直しした両国の思い出と伝統を重んじたドレスだ。
先程、そう話していただろう」

「あちらの言葉は分からなくて、」

「言い訳は見苦しい。
そもそも同じ夫をもつ妻同士であろう。
何故貶めるような言葉が出てくるのだ。
妃としての心得も其方には不足しておるようだな」

「申し訳ございません」

「悪意は己に返るぞ。
しかも其方は子の親ではないか。手本になるべきところであろう。甘えれば許された時代とは違うのだと分からんのか。
少しは人として、王太子の妻の一人として成長してくれ」

「っ!!」

「もう一度、妃教育の講師をつかわそう。
合格がもらえるまで社交は出なくてよい」

「ペネロープ様、イレーヌを下に見ることなど許さないわ。いいわね」

父上とナディアも挨拶回りを再開した。

「ペネロープ、言葉にする前に良く考えろ。
もう退がってよい」

「でも、ダンスが、」

「これは外交だ。
其方がダンスをして楽しむ場ではない。
明後日も出なくていい」

「そんな!明後日は両親も来るのですよ!?」

「どうしてもというなら其方の両親を部屋へ向かわせよう。親子で不参加とするがいい」

メイドを呼んでペネロープを部屋へ送らせた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢ルーナは、婚約者で公爵令息エヴァンから、一方的に婚約破棄を告げられる。この1年、エヴァンに無視され続けていたルーナは、そんなエヴァンの申し出を素直に受け入れた。 傷つき疲れ果てたルーナだが、家族の支えで何とか気持ちを立て直し、エヴァンへの想いを断ち切り、親友エマの支えを受けながら、少しずつ前へと進もうとしていた。 そんな中、あれほどまでに冷たく一方的に婚約破棄を言い渡したはずのエヴァンが、復縁を迫って来たのだ。聞けばルーナを嫌っている公爵令嬢で王太子の婚約者、ナタリーに騙されたとの事。 自分を嫌い、暴言を吐くナタリーのいう事を鵜呑みにした事、さらに1年ものあいだ冷遇されていた事が、どうしても許せないルーナは、エヴァンを拒み続ける。 絶対にエヴァンとやり直すなんて無理だと思っていたルーナだったが、異常なまでにルーナに憎しみを抱くナタリーの毒牙が彼女を襲う。 次々にルーナに攻撃を仕掛けるナタリーに、エヴァンは…

幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!

ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。 同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。 そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。 あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。 「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」 その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。 そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。 正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。  ところが新婚初夜、ダミアンは言った。 「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」  そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。  しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。  心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。  初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。  そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは───── (※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)

彼と婚約破棄しろと言われましても困ります。なぜなら、彼は婚約者ではありませんから

水上
恋愛
「私は彼のことを心から愛しているの! 彼と婚約破棄して!」 「……はい?」 子爵令嬢である私、カトリー・ロンズデールは困惑していた。 だって、私と彼は婚約なんてしていないのだから。 「エリオット様と別れろって言っているの!」  彼女は下品に怒鳴りながら、ポケットから出したものを私に投げてきた。  そのせいで、私は怪我をしてしまった。  いきなり彼と別れろと言われても、それは無理な相談である。  だって、彼は──。  そして勘違いした彼女は、自身を破滅へと導く、とんでもない騒動を起こすのだった……。 ※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。

処理中です...