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自分の妻だと言いたいウィリアム
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【 王太子 ウィリアムの視点 】
イレーヌは宮から出てこない。
食事も参加しない。
ティータイムも。
公務は別だし、しばらく彼女に振り分けはない。
公式行事は正妃のナディアをエスコートするし、全く接点がない。ダンスにも誘えない。
父上達と狩りに出掛けて楽しそうだった。
国王と王太子は同時に狩りに行けない決まりになっている。私が行けないのに今まで行ったことのないクロードが何故行くんだ!
ナディアまで狩りが出来るとは知らなかった。
ペネロープと子供達と昼食をとったがつまらない。
イレーヌが夕食を伴にする日も話に加われない。
クロードは好意を剥き出しにしているし。
「ナディアは?」
夜、イレーヌのことを聞こうとナディアの部屋を訪ねても誰も居なかった。
通りかかった侍女長に尋ねると、
「王太子妃殿下はイレーヌ妃の宮でお泊まりです」
は?
「イレーヌが誘ったのか」
「王太子妃殿下がおしゃべりしながら一緒に寝たいとお願いをなさいました」
「一緒に!?」
「仲の良い姉妹のようでございました」
「ありがとう」
私が出来ないイレーヌとの共寝をナディアが…。
翌朝、といっても昼に近いがナディアの弟が到着した。
「ウィリアム王太子殿下、お招きいただきありがとうございます。婚姻の儀以来ですね。
あれ?姉上は?」
「城内にいるのだが……呼ばせているので先に部屋へ案内させます」
昼食の席にやっとナディアが顔を見せた。
「待たせてごめんなさい、ノアム。よく来てくれたわね」
「姉様、ご機嫌だね。そんなに私と会えて嬉しいの?」
「嬉しいわ。もう一つ嬉しいことがあったの。
会わせたい人がいるから後でいいかしら」
「会わせたい人?」
「そうよ。今日のパーティは彼女をエスコートして欲しいの」
「誤解を生まないか?」
「大丈夫、彼の第三妃だから」
「え?」
「いいですわよね、ウィリアム様」
「……」
「王太子殿下、よろしいですわね?」
「イレーヌが参加とエスコートを承諾すればな」
「誘ったから参加はしますわ。この後交渉します」
「姉様、そこまでしてパートナーは必要ないよ」
「この機会を逃したら後悔するわよ」
「はあ、分かったよ。仰せのままに」
気に入らない。
何故私の妻を他の男に……。
歓迎のパーティは内輪のものだ。
要職の者と王族、エスペランス出身の貴族が集まった。
本格的なパーティは明々後日のナディアの誕生日に行う。
私はペネロープを。父上がナディアを。そして…
ノ「イレーヌ、なんて美しいんだ」
何故其方がイレーヌと呼ぶんだ!
ナ「まあ、素敵。エスペランスのドレスね」
王「まさか、あのドレスがこれに?」
イ「いただいたドレスを勝手に申し訳ございません」
ナ「どういうこと?」
イ「陛下に不要なドレスを下げ渡していただきたいと申し上げたのです」
〈王妃様の古いドレスを二着くださいましたのでリタがエスペランス風に手を加えましたの〉
ナ〈嬉しいわ〉
ノ〈ありがとう、イレーヌ。素晴らしい持て成しだ。天に召された王妃様のドレスを受け継いだことも素晴らしい。両国の素敵な思い出になりそうだ〉
王〈不思議なものだ。然程変わっていないのにシルエットが変わって少し飾りを付けると別のものに見える〉
ノ〈さあ、イレーヌ。私の手を取って〉
イ〈よろしくお願いします、ノアム様〉
何故エスペランスの言葉で話すんだ!
挨拶や簡単な単語しか分からないから想定するしかない。
歓迎のパーティが始まるとノアム殿下がイレーヌを伴って挨拶回りを始めた。特にエスペランス出身の貴族達は大喜びだし、何を話しているのかまるでわからないくらいに難しい。
イレーヌは私の妻なのに、あれではまるでノアム殿下の妻みたいではないか。
「殿下、ノアム殿下が気になるのですか」
「まあ。彼に失礼があってはならないからな」
「あのドレス、どうしちゃったのでしょう。
我が国の品位が問われますわね」
「ペネロープ。無知ならば閉口するがよい」
「へ、陛下」
「あのデザインはエスペランス王国伝統のドレスのシルエットになるよう、ウィリアムの母である亡くなった王妃のドレスを手直しした両国の思い出と伝統を重んじたドレスだ。
先程、そう話していただろう」
「あちらの言葉は分からなくて、」
「言い訳は見苦しい。
そもそも同じ夫をもつ妻同士であろう。
何故貶めるような言葉が出てくるのだ。
妃としての心得も其方には不足しておるようだな」
「申し訳ございません」
「悪意は己に返るぞ。
しかも其方は子の親ではないか。手本になるべきところであろう。甘えれば許された時代とは違うのだと分からんのか。
少しは人として、王太子の妻の一人として成長してくれ」
「っ!!」
「もう一度、妃教育の講師をつかわそう。
合格がもらえるまで社交は出なくてよい」
「ペネロープ様、イレーヌを下に見ることなど許さないわ。いいわね」
父上とナディアも挨拶回りを再開した。
「ペネロープ、言葉にする前に良く考えろ。
もう退がってよい」
「でも、ダンスが、」
「これは外交だ。
其方がダンスをして楽しむ場ではない。
明後日も出なくていい」
「そんな!明後日は両親も来るのですよ!?」
「どうしてもというなら其方の両親を部屋へ向かわせよう。親子で不参加とするがいい」
メイドを呼んでペネロープを部屋へ送らせた。
イレーヌは宮から出てこない。
食事も参加しない。
ティータイムも。
公務は別だし、しばらく彼女に振り分けはない。
公式行事は正妃のナディアをエスコートするし、全く接点がない。ダンスにも誘えない。
父上達と狩りに出掛けて楽しそうだった。
国王と王太子は同時に狩りに行けない決まりになっている。私が行けないのに今まで行ったことのないクロードが何故行くんだ!
ナディアまで狩りが出来るとは知らなかった。
ペネロープと子供達と昼食をとったがつまらない。
イレーヌが夕食を伴にする日も話に加われない。
クロードは好意を剥き出しにしているし。
「ナディアは?」
夜、イレーヌのことを聞こうとナディアの部屋を訪ねても誰も居なかった。
通りかかった侍女長に尋ねると、
「王太子妃殿下はイレーヌ妃の宮でお泊まりです」
は?
「イレーヌが誘ったのか」
「王太子妃殿下がおしゃべりしながら一緒に寝たいとお願いをなさいました」
「一緒に!?」
「仲の良い姉妹のようでございました」
「ありがとう」
私が出来ないイレーヌとの共寝をナディアが…。
翌朝、といっても昼に近いがナディアの弟が到着した。
「ウィリアム王太子殿下、お招きいただきありがとうございます。婚姻の儀以来ですね。
あれ?姉上は?」
「城内にいるのだが……呼ばせているので先に部屋へ案内させます」
昼食の席にやっとナディアが顔を見せた。
「待たせてごめんなさい、ノアム。よく来てくれたわね」
「姉様、ご機嫌だね。そんなに私と会えて嬉しいの?」
「嬉しいわ。もう一つ嬉しいことがあったの。
会わせたい人がいるから後でいいかしら」
「会わせたい人?」
「そうよ。今日のパーティは彼女をエスコートして欲しいの」
「誤解を生まないか?」
「大丈夫、彼の第三妃だから」
「え?」
「いいですわよね、ウィリアム様」
「……」
「王太子殿下、よろしいですわね?」
「イレーヌが参加とエスコートを承諾すればな」
「誘ったから参加はしますわ。この後交渉します」
「姉様、そこまでしてパートナーは必要ないよ」
「この機会を逃したら後悔するわよ」
「はあ、分かったよ。仰せのままに」
気に入らない。
何故私の妻を他の男に……。
歓迎のパーティは内輪のものだ。
要職の者と王族、エスペランス出身の貴族が集まった。
本格的なパーティは明々後日のナディアの誕生日に行う。
私はペネロープを。父上がナディアを。そして…
ノ「イレーヌ、なんて美しいんだ」
何故其方がイレーヌと呼ぶんだ!
ナ「まあ、素敵。エスペランスのドレスね」
王「まさか、あのドレスがこれに?」
イ「いただいたドレスを勝手に申し訳ございません」
ナ「どういうこと?」
イ「陛下に不要なドレスを下げ渡していただきたいと申し上げたのです」
〈王妃様の古いドレスを二着くださいましたのでリタがエスペランス風に手を加えましたの〉
ナ〈嬉しいわ〉
ノ〈ありがとう、イレーヌ。素晴らしい持て成しだ。天に召された王妃様のドレスを受け継いだことも素晴らしい。両国の素敵な思い出になりそうだ〉
王〈不思議なものだ。然程変わっていないのにシルエットが変わって少し飾りを付けると別のものに見える〉
ノ〈さあ、イレーヌ。私の手を取って〉
イ〈よろしくお願いします、ノアム様〉
何故エスペランスの言葉で話すんだ!
挨拶や簡単な単語しか分からないから想定するしかない。
歓迎のパーティが始まるとノアム殿下がイレーヌを伴って挨拶回りを始めた。特にエスペランス出身の貴族達は大喜びだし、何を話しているのかまるでわからないくらいに難しい。
イレーヌは私の妻なのに、あれではまるでノアム殿下の妻みたいではないか。
「殿下、ノアム殿下が気になるのですか」
「まあ。彼に失礼があってはならないからな」
「あのドレス、どうしちゃったのでしょう。
我が国の品位が問われますわね」
「ペネロープ。無知ならば閉口するがよい」
「へ、陛下」
「あのデザインはエスペランス王国伝統のドレスのシルエットになるよう、ウィリアムの母である亡くなった王妃のドレスを手直しした両国の思い出と伝統を重んじたドレスだ。
先程、そう話していただろう」
「あちらの言葉は分からなくて、」
「言い訳は見苦しい。
そもそも同じ夫をもつ妻同士であろう。
何故貶めるような言葉が出てくるのだ。
妃としての心得も其方には不足しておるようだな」
「申し訳ございません」
「悪意は己に返るぞ。
しかも其方は子の親ではないか。手本になるべきところであろう。甘えれば許された時代とは違うのだと分からんのか。
少しは人として、王太子の妻の一人として成長してくれ」
「っ!!」
「もう一度、妃教育の講師をつかわそう。
合格がもらえるまで社交は出なくてよい」
「ペネロープ様、イレーヌを下に見ることなど許さないわ。いいわね」
父上とナディアも挨拶回りを再開した。
「ペネロープ、言葉にする前に良く考えろ。
もう退がってよい」
「でも、ダンスが、」
「これは外交だ。
其方がダンスをして楽しむ場ではない。
明後日も出なくていい」
「そんな!明後日は両親も来るのですよ!?」
「どうしてもというなら其方の両親を部屋へ向かわせよう。親子で不参加とするがいい」
メイドを呼んでペネロープを部屋へ送らせた。
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※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。
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