【完結】欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ

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ナディア王太子妃の弟

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お肉、美味しい!

「今日の鴨肉はナディアとイレーヌが仕留めたかもだ。子鹿肉はクロード、猪は私だ」

私の為にと陛下が数日後に狩りの時間を作ってくださったので同行させていただいた。

「イレーヌは飛んでいる鴨を仕留めたんです。凄かった!」

「騎乗のままで、格好良かったですわ」

「今後の狩りは2人に声をかけよう」

「楽しみですわ」

「楽しみね」

「父上、僕にもお声がけください」

「分かった、分かった」


到着した日には、夫となるウィリアム王太子の言動に第三妃としての生活を覚悟をしたが、国王陛下も王太子妃様も義弟のクロード様もとても優しいので、やっていけそうだなと安心できた。


そして今、就寝前のマッサージで癒してもらっている。

「気持ちいいですね、ナディア様」

「久々の狩りは疲れたわ」

王太子妃のナディア様が私が暮らしている別棟の宮に泊まりにきてくださった。

「クロード殿下はすっかりイレーヌの虜ね」

「優しい義弟殿下で嬉しいですわ」

「どうなるのか楽しみだわ」

「何がですか?」

「フフッ」

その後は互いの生い立ちの話をして眠りについた。




つまり、ほぼ徹夜。

「ふわぁ~」

「あらまぁ、大きな嘴だこと。雛が腹を空かせたのね。今日は弟と会うから、昼食を食べて身支度をしたら私の部屋へ来るのよ」

「え?」

「弟を紹介するわ」

「ナディア様の弟と仰ったら王子様ではありませんか」

「そうよ。当たり前でしょう。王弟ね」

「私は隠居した気分ですので、」

「何言ってるの。私の弟が来るのに歓迎パーティに出ないつもり?」

「…出ます。
あの、私 語学は堪能ではございません」

「大丈夫。弟はこの国の言葉を話せるから」

そう言いながら自室へ向かわれた。




何着よう。

パーティ……う~ん。

「イレーヌ様、変装はいけません」

やっぱり?

「ナディア様の国のドレスに近い物はあるかしら」

「お任せください。1時間ほど席を外します」

「気を付けてね」




コン、 コンコン、 コン

いつものノックの後にリタがドアを開けた。

ドレスと宝飾品を抱えていた。

「さあ、イレーヌ様、夕刻までに手直ししますので、まずは着てみましょう」

「一応聞くけど盗んでないわよね?」

「…当然です」

試着した後、直しを任せている間にナディア様のメイドが迎えに来てくれた。


ナディア様のサロンに到着すると、ナディア様と男性が立ち上がった。

「イレーヌ。弟のノアムよ。
ノアム。彼女はルフレーの王族で、ウィリアム王太子殿下の第三妃よ」

「イレーヌ妃、姉と仲良くしてくれてありがとう」

〈イレーヌと申します。私の方がナディア様に可愛がっていただいており、感謝しております。

ノアム殿下にお会いできて光栄にございます〉

〈イレーヌ妃はうちの言葉を話せるんだね〉

〈込み入った会話までは〉

〈しかも、エスペランスの王族への挨拶の仕方を知っているのだな。
逆に私がルフレーに対して知識不足で恥ずかしい。
無礼を許してくれ〉

〈このように接してくださるのですから十分ですわ〉

〈……実はね、ウィリアム王太子殿下がイレーヌに無礼な扱いをしてしまって、距離ができてしまったのよ。鎖国に近いわね〉

ソファに座り、お茶を飲みながら白い結婚になった経緯を話した。

〈その美しさを何故隠したのだ?〉

〈長旅ですので、賊対策ですわ。
魅力無しと思わせれば命をかけて襲う者も減るはずだと思いましたの。

馬車も外側からは古く見えるように仕上げて、護衛も荒くれ者風に変装させたせいで、逆に途中の町で避けられてしまいましたわ〉

〈確かに、イレーヌ妃がそのままで、いかにも王族が乗っていますって感じの馬車なら私でも襲うな。
だが絵姿は送ったのであろう〉

〈見た目だけで判断する殿方避けに醜く描かせました。利用したくてもこの女を妻にしたくないとも思わせましたわ。

ですが、国王陛下は昔お会いしたことがあるので、あの絵姿は偽りだとご存知だったと思います。
王太子殿下はきっと、私の全てがお気に召さないのだと思いますわ。

無礼なおかげで、隠居生活のように自由に過ごせていますし、嫌々閨に上がらなくても済んで、結果的には良かったですわ〉

〈だけど、王太子殿下はびっくりなさったのでは?〉

〈確かに、たまに共にいただく夕食の際には、チラチラとイレーヌを見ているわね〉

〈でも本当にいいの?
普通は寵愛争いになるところなのに〉

〈陛下が可愛がってくださいますし、ナディア様も可愛がってくださいますし、クロード様は人懐っこいですし。十分満足ですわ。
どうせ縁談をいただくなら、国王陛下の後妻に望まれたらと思ってしまいましたわ〉

〈イレーヌ妃のような女性ばかりなら私達も疲れなかったろうな〉

〈それは女性ばかり責められませんわ。
いくら後継が必要だと言っても、夫が妻達をしっかり敬い、統制をとっていれば、無用な争いを少しでも避けられるのではないかと思うのです〉

〈夫が?〉

〈はい。夫が正妃を一番と位置付けし、不動のものと知らしめ続ければ良かったのです。

新たな女性に心をや体を寄せたり、平等に扱ったりなさるから揉めるのです。
王子を産んだか否かではありません〉

〈王子を産んだ妃を優遇するのは当然では?〉

〈ならば、王子を産んだ者を正妃になさればよろしいのです。

第二妃、第三妃だの、側妃、妾だの、いずれにおいても子を産むという役目を背負わされますが、正妃の役目はそれだけではありません。

ナディア様は今は王太子妃として、ゆくゆくは王妃として、共に城内を掌握し、国を統べ、外交をなさるのです。

それは他の者の役割ではありません。
子を産む代わりはいてもナディア王太子妃殿下の代わりはおりません。

それなのに正妃を敬わず、他の者を優遇したり、同じように扱っては、荒れるに決まっておりますわ〉

〈なるほどな〉

〈イレーヌ〉

ナディア様が私に抱きついた。

〈ありがとう。胸の痞えがおりたわ〉

〈ナディア様、申し訳ございません。私は役割を拒否した分際で、公務も…〉

〈いいの。イレーヌは私の特別な女性ひとよ。貴女さえいてくれたらいいの〉

〈ナディア様〉

〈白い結婚か…〉




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