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本来の第三妃に驚くウィリアム
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【 王太子 ウィリアムの視点 】
王女に声をかけたのは第三王子で17歳のクロードだった。
第二王子と第三王子は父上の第二妃の子で、第二王子は侯爵家に婿入りした。
同腹の王女達は既に嫁いでいる。
クロードは当たり障りのない存在だったはず……。
「しっかりイレーヌ王女をおもてなしして差し上げろ」
「はい、父上」
何故そんなに嬉しそうなんだ?
翌日の午後、父上と宰相の立ち合いで婚姻の儀を行った。
指輪も口付けも何も無し。ただ祭壇の前で婚姻契約書に署名をしただけ。
神父から御言葉をいただき、イレーヌは父上達に挨拶をして聖堂から去った。
本当にこれで良かったのか?
イレーヌは初婚だろう。
私が侮辱して白い結婚を選ばせたからか……。
週末、庭園のガゼボで楽しそうな声が聞こえた。
「クロードは誰と茶を?」
「顔は見えませんが、高貴な女性なのは間違いなさそうですね」
オーバンが ワゴンを持って歩いていたメイドをつかまえて相手を聞いた。
「? 王太子殿下の第三妃のイレーヌ様でございます」
「は!?」
顔が見える距離まで近付いて驚愕した。
青銀の髪にブルートパーズの瞳、そばかすなど無い白い肌は薄桃色に染まり、ドレスからは曲線美が伺えた。
メガネを外し、前髪は横に流し、顔をはっきりと出していた。
髪は編み込み、ひとつにまとまっていた。
「イレーヌはその時どう誤魔化したの?」
「誤魔化したりしていないわ。そのまま立ち去ったのよ。
誰も見ていないのだから、彼ならプライドが高いから黙っているはずだと思ったの。
クロード様ならどうなさる?」
「僕のことはクロードと呼んで。様なんか要らないよ。もっと気さくに話してよ。歳下の僕だけこんなに砕けていたら礼儀知らずみたいに思われちゃうよ」
「分かったわ、クロード」
「明日、お忍びしない?」
「どこに連れていってくれるの?」
「今、面白い観劇をやっているみたいでチケットを持っているんだ。一緒に観ようよ」
「誰かと約束があったのでは?」
「無いよ。イレーヌ、お願いだ」
「分かったわ。私はリタを連れて行くわよ」
「良かった。では宮まで送るよ」
そう言って立ち上がり、イレーヌの手を取ると甲に口付けをして、そのまま手を自身の腕に添えさせてガゼボを後にした。
クロードの部屋の前で待っていると、やっと戻って来たクロードが私を見て不思議そうな顔をした。
「イレーヌは私の妃だ。距離を保て」
「つまりそれは僕の義姉ということです。仲良くして何が悪いのです?」
「知っていたのか」
「何をです?」
「イレーヌの素顔のことだ!」
「知っていたと言うより、晩餐で気が付きました。
分かり難くはなかったですよ?
よく見れば分かったはずです。
首や顎、手と手首を見たら、ドレスに隠れた部分が不自然なのが分かります。
厚みがないなら、そういう体型なのだと思いますが、ドレスに隠れていない部分はあの細さで、隠れた部分に厚みがあるということは、何かを巻いて体型を誤魔化しているのだと思いました。
手を加えてアレならば、魅力的に見えないようにしたのだなと分かります。
だとすると顔もそうだと思いました。
髪は少しくすんでいましたが睫毛を見たら分かります。何かを塗ってくすませていたようです。
メガネと前髪で隠すということは、体と同じで美しさを隠しているのだなと。
そばかすだって他の部分にはありませんから化粧で作り出しているのだと思いました。
ちゃんと相手を見れば分かることです。
妻にする兄上が分からなかったことが僕には驚きですよ」
「……」
「兄上は侮辱して白い結婚と別居をイレーヌに選ばせたのです。僕が好きになったって構わないでしょう?兄上が拒否したのですから。
白い結婚は離縁が可能ですし、僕と再婚も可能です。
父上も喜んでくださると思います。父上はできればイレーヌに子を産んで欲しかったのですから。僕と子を成すと言えば喜んで再婚させてくれますよ」
「そんなことは許されない!」
「許されます。法律がそうなっているのですから。
イレーヌは中身もとても魅力的です。歳上なのにとても可愛い。
僕、やることがあるので失礼します」
そう言って部屋に入ってしまった。
翌日、2人が馬車に乗り込む姿を窓から見下ろした。帰って来たのは夕方だった。
夕食ではクロードが父上に報告をしていた。
「イレーヌはとても喜んでいました。
また一緒に行く約束をしました」
「そうか。喜んでいたか」
「はい。父上も一緒に行けたら良いのですが」
「イレーヌは何に興味を示していた?」
「観劇を観た後は気になった店に入りました。
ルフレーに無い工芸品などに興味を示していました」
「今度宝飾品を選んでやるといい」
「はい、父上」
王女に声をかけたのは第三王子で17歳のクロードだった。
第二王子と第三王子は父上の第二妃の子で、第二王子は侯爵家に婿入りした。
同腹の王女達は既に嫁いでいる。
クロードは当たり障りのない存在だったはず……。
「しっかりイレーヌ王女をおもてなしして差し上げろ」
「はい、父上」
何故そんなに嬉しそうなんだ?
翌日の午後、父上と宰相の立ち合いで婚姻の儀を行った。
指輪も口付けも何も無し。ただ祭壇の前で婚姻契約書に署名をしただけ。
神父から御言葉をいただき、イレーヌは父上達に挨拶をして聖堂から去った。
本当にこれで良かったのか?
イレーヌは初婚だろう。
私が侮辱して白い結婚を選ばせたからか……。
週末、庭園のガゼボで楽しそうな声が聞こえた。
「クロードは誰と茶を?」
「顔は見えませんが、高貴な女性なのは間違いなさそうですね」
オーバンが ワゴンを持って歩いていたメイドをつかまえて相手を聞いた。
「? 王太子殿下の第三妃のイレーヌ様でございます」
「は!?」
顔が見える距離まで近付いて驚愕した。
青銀の髪にブルートパーズの瞳、そばかすなど無い白い肌は薄桃色に染まり、ドレスからは曲線美が伺えた。
メガネを外し、前髪は横に流し、顔をはっきりと出していた。
髪は編み込み、ひとつにまとまっていた。
「イレーヌはその時どう誤魔化したの?」
「誤魔化したりしていないわ。そのまま立ち去ったのよ。
誰も見ていないのだから、彼ならプライドが高いから黙っているはずだと思ったの。
クロード様ならどうなさる?」
「僕のことはクロードと呼んで。様なんか要らないよ。もっと気さくに話してよ。歳下の僕だけこんなに砕けていたら礼儀知らずみたいに思われちゃうよ」
「分かったわ、クロード」
「明日、お忍びしない?」
「どこに連れていってくれるの?」
「今、面白い観劇をやっているみたいでチケットを持っているんだ。一緒に観ようよ」
「誰かと約束があったのでは?」
「無いよ。イレーヌ、お願いだ」
「分かったわ。私はリタを連れて行くわよ」
「良かった。では宮まで送るよ」
そう言って立ち上がり、イレーヌの手を取ると甲に口付けをして、そのまま手を自身の腕に添えさせてガゼボを後にした。
クロードの部屋の前で待っていると、やっと戻って来たクロードが私を見て不思議そうな顔をした。
「イレーヌは私の妃だ。距離を保て」
「つまりそれは僕の義姉ということです。仲良くして何が悪いのです?」
「知っていたのか」
「何をです?」
「イレーヌの素顔のことだ!」
「知っていたと言うより、晩餐で気が付きました。
分かり難くはなかったですよ?
よく見れば分かったはずです。
首や顎、手と手首を見たら、ドレスに隠れた部分が不自然なのが分かります。
厚みがないなら、そういう体型なのだと思いますが、ドレスに隠れていない部分はあの細さで、隠れた部分に厚みがあるということは、何かを巻いて体型を誤魔化しているのだと思いました。
手を加えてアレならば、魅力的に見えないようにしたのだなと分かります。
だとすると顔もそうだと思いました。
髪は少しくすんでいましたが睫毛を見たら分かります。何かを塗ってくすませていたようです。
メガネと前髪で隠すということは、体と同じで美しさを隠しているのだなと。
そばかすだって他の部分にはありませんから化粧で作り出しているのだと思いました。
ちゃんと相手を見れば分かることです。
妻にする兄上が分からなかったことが僕には驚きですよ」
「……」
「兄上は侮辱して白い結婚と別居をイレーヌに選ばせたのです。僕が好きになったって構わないでしょう?兄上が拒否したのですから。
白い結婚は離縁が可能ですし、僕と再婚も可能です。
父上も喜んでくださると思います。父上はできればイレーヌに子を産んで欲しかったのですから。僕と子を成すと言えば喜んで再婚させてくれますよ」
「そんなことは許されない!」
「許されます。法律がそうなっているのですから。
イレーヌは中身もとても魅力的です。歳上なのにとても可愛い。
僕、やることがあるので失礼します」
そう言って部屋に入ってしまった。
翌日、2人が馬車に乗り込む姿を窓から見下ろした。帰って来たのは夕方だった。
夕食ではクロードが父上に報告をしていた。
「イレーヌはとても喜んでいました。
また一緒に行く約束をしました」
「そうか。喜んでいたか」
「はい。父上も一緒に行けたら良いのですが」
「イレーヌは何に興味を示していた?」
「観劇を観た後は気になった店に入りました。
ルフレーに無い工芸品などに興味を示していました」
「今度宝飾品を選んでやるといい」
「はい、父上」
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