【完結】欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします

ユユ

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酷い初対面

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花の匂いが私を眠りから呼び覚ます。
瞼を開けるとホッとする顔が覗き込んでいた。

「リタ」

「イレーヌ様、お目覚めですか」

「ここは…」

「エルドラドの王城です」

「私はどうしたのかしら」

「到着後にすぐお倒れになりました」

「どこくらい経ったのかしら」

「半刻です」

リタは祖国ルフレーから連れてきた、私の専属侍女兼メイド。多才な女性だ。

「イレーヌ様、誰か近付いてきます。複数です」

「どんな感じか分かる?」

「…王族と騎士3人です。“殿下”という言葉が微かに聞こえました」

「ならウィリアム王太子殿下と近衛かもしれないわね。本心はなしを聞きたいからもう一度横になるわ」

「かしこまりました」


リタがドアを開けると、やはり王太子だったらしくリタと揉めている。

「イレーヌ様はまだ、」

「煩い」

「まだ婚姻前の女性の部屋に勝手に、」

「私の城だ。お前達などに許可をとる必要はない。

側妃の娘で美しくもなく、凹凸のない身体の女に何の気を遣えと?メガネ女に欲情するわけがない。

しかも売れ残りの女など、父上も何を血迷ったのか。疲労で倒れる女など役に立つのか?」

私の姿を見たということは、出迎えはしてくれたのね。

「引っ叩いてでも起こして連れて来い。廊下の兵士が案内する。
来なければ要望は聞かない。分かったな」

そう言い捨てて去っていった。



「リタ、ありがとう」

「クソガキでございますね」

「そうね。安心したわ」

おかげで徹底できるもの。



この婚姻はエルドラドの国王陛下が強く望んだものだ。

私の父はルフレーの国王。母は別の国の王女で側妃として嫁いだ。産んだのは私1人。
正妃は王子2人に王女1人産んでいて、3人の子は私に意地悪だった。

リタは母が母国から連れてきた使用人の1人でずっと私の面倒を見てくれている。

私より2歳下の王女が国内の公爵家に嫁いだのを見届けて、私は他国に嫁ぐことに決めた。
あの子が国外に嫁げば私は国内にするつもりだった。

そして他国の嫁ぎ先を探し始めたら第三妃の打診がきた。

婚姻の条件は会ってから決めると返事をした。
私の条件を受け入れなければ破談になる。

王太子は既に娶ったつもりでいるらしいけど。

「リタ。外の兵士に謁見の申し入れを頼んでもらえる?条件が決まったから、王太子も同席するようにして欲しいわ」

「かしこまりました」



だけど、廊下の兵士と揉めている。

側に寄ると“国王陛下と王太子殿下はお忙しい”とかほざいていた。

「リタ。代わるわ」

「申し訳ございません」

「貴方、何故仕事をしないの?名前は?」

「……」

「今の私はルフレー王国の王女でエルドラド国王陛下の客人なの」

「先程、王太子殿下はそうは仰っておりませんでした」

「跪きなさい」

「は?」

「もう一度だけチャンスをあげる。跪きなさい」

「フッ」

兵士が鼻で笑ったので膝を蹴った。

「グアッ!!」

膝を抱えて痛がっている。

もう一人が向かってきた。

「止まりなさい」

それでも向かってくるので

「リタ」

ドゴッ

リタの回し蹴りが顔に当たって崩れ落ちた。

「素敵だわ」

「ありがとうございます」

「仕方ないから行きましょうか」

「はい、イレーヌ様」



途中の文官らしき人に宰相の補佐官の部屋を聞いて行ってみた。

「どちら様でしょう」

「ルフレー王国から参りましたイレーヌと申します。
婚姻の条件を告げるために国王陛下にお会いしたいのですが」

「お、お待ちください」

直ぐに上司らしき人が出てきて、応接間に通された。

「案内はおりませんでしたか?」

「拒否されました」

「はい?」

「廊下の兵士に国王陛下との謁見を調整して欲しいと申し上げましたら、陛下達は忙しいからと断られました」

「た、大変失礼いたしました」

「宰相は陛下と一緒におりますので直ぐに聞いて参ります。お茶をお出しいたします」

「お茶は結構ですわ」



そしてやっと案内された。

「よく来てくれた、イレーヌ姫」

「国王陛下にご挨拶を申し上げます。到着早々ご迷惑をおかけいたしました」

「大丈夫なのか?」

「はい。今は大丈夫です」

「宰相のデイビス・コルソンと申します」

「イレーヌと申します」

「兵士に不手際があったとか」

「ええ。

国王陛下の客人だと申しましたら、王太子殿下はそうは仰っていなかったからと、謁見の調整を拒否なさいましたの。
あまりにも不敬な態度だったのでちょっと実力行使をいたしました。

問題ございませんね?」

「はい。大変申し訳ございませんでした。
しかと罰を与えます。ご希望を伺っても?」

「コルソン宰相。二人は最下層に落としてください。下男でいいでしょう。最低5年は働かせてくださいね。舌を抜かれないだけマシでしょう?」

「……はい。お任せを」

「では、王太子殿下が来るまで待ちましょう」







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