【完結】閨係の掟

ユユ

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求婚状

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【 カインの視点 】


ローランド兄上に呼ばれて私室へ向かった。

人払いをすると真剣な顔になった。

「カイン。アリサ嬢を妻にしたいのは変わらないな?」

「もちろんです」

「アリサ嬢は教会の告解室の前で襲われたと報告書に書いてあった。何を告白したかったのだろう」

「どういう意味ですか」

「アリサ嬢が閨係から降りようとしている」

「は!?」

「アリサ嬢から、新しい閨係が決まるまでの日数を尋ねられたと報告が上がった。心当たりはないのか」

「襲撃を受けて嫌になったとか」

「今一番の問題は、閨係を辞めるのは簡単だということだ。
彼女が辞めてしまえは新しい女が選出される。
もし他の閨係を迎えたらアリサ嬢はカインの元には戻らないだろう。

早いがブルイヤール伯爵家に求婚状を出そう」

「お願いします」

「閨でおかしいことはないのか」

「順調だと思っていたので」

「本音を聞き出さないと解決しない。だが、聞き方も大事だ。自白剤を飲ませるわけにもいかないしな」

「例えば、少量飲ませると少し効くという感じですか?それとも規定量を飲ませないと意味がありませんか」

「考えたこともないな。自白剤は完全に正直に話せることを目的としているからな」

「副作用でもあるのですか」

「精神の錯乱を起こす場合がある。稀に死ぬ者もいる」

「駄目です」

「分かっている」

「確かに、おかしい気がすると報告は上がっていましたが、俺の前ではそれほどは」

「閨係は王子を癒す役割を持つ。カインには言わないし、隠そうとするだろう」

「兄上、ブルイヤール邸へ行き直接渡し、アリサの件を相談してきたいのですが、いいでしょうか」

「慎重にな。貴族としても、アリサの父としても敵に回すことのないように」

「はい」




アリサは正式に辞意を告げたわけではなかった。
だが、それが今日かもしれないと思う毎日を送るのは辛かった。


約束の日に、父上署名入りの求婚状を持ってブルイヤール邸を訪れた。

「アリサには求婚したのですか」

「似たようなことは言っているのですがアリサの中でどう受け止めているのか分からないのです。
彼女は私に隠すので」

「王子妃になれると思っていないのかもしれませんね。殿下が望んでも許されないと思っているのかもしれません。

籍は伯爵家になりましたが、彼女は子爵家の娘のつもりでしょう。長年の疎外の影響を考えるともっと自分を低く見ているかもしれません」

「これ以上、どう愛を伝えればいいのか」


アリサを迎えてからのことを話した。


「殿下は最初からアリサだったのですね」

「ええ。選考であった時にすぐ運命の人だと感じました。実際に接してみると真面目で誠実な女性でした。

私にはアリサしかいないのに、アリサはそうではないようで焦りと不安しかありません。
嫌われてはいないと思っているのですが、そう思わせないのが閨係だと言われたら否定できません」

「アリサの気持を確認しましょう。面会の予約を入れます」




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