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兄弟の絆 2
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【 ローランドの視点 】
アリサ嬢の義母や異母妹の裁判を終えて、別室に集めたのは、陛下、カイン、ブルイヤール伯爵、クロネック子爵、侍女長、侍従長、そしてシルビア様だった。
そして調査官と、アリサ嬢だ。
先ず、先程の裁判の内容を伝えたら、“毒殺だったのですね” と言葉を漏らした後、礼を述べた。
その他の反応は無い。
官「虚偽申請による閨事の強要と分かったため、アリサ嬢は今すぐ退職することが可能です。
今回の件で、実家のクロネック家より慰謝料として財産分与をなさるそうです。
どうなさいますか」
「私は…許されるなら、閨係を契約期間中は全うすることを希望します」
「本当にいいのですね?」
「はい」
「もう一つ、ブルイヤール伯爵家が養女にと希望なさっています」
「母の?」
「はい。伯爵は亡くなられた母君とは姉弟なので叔父にあたります」
「そんな資格はありません」
「それは決めたブルイヤール伯爵に失礼ですよ」
「失礼しました。よく分かりません」
「この後ブルイヤール伯爵とクロネック子爵との交流の場を設けますのでよく考えるように」
「はい」
一先ずカインの手元に残ってくれて良かった。
カインも緊張が解けたようだ。
ブルイヤール伯爵とは裁判後に面会をした。
「養女にした後、カイン殿下が娶りたいと?」
「そうです」
「どうするかはアリサ次第ですね。それに嫁に出す条件はカイン殿下が国王にならないことです」
「何故でしょう」
「アリサはずっと苦しんで来ました。もう楽しく生きてもらいたい。本当は王子妃にさえしたくない。
それが叶わぬなら嫁には出しません」
ブルイヤール伯爵は必ずそうするだろうことが感じ取れた。
アリサ嬢が王妃となればブルイヤール家にも有益となるだろうに、姪の幸せを優勢させる男なのだな。
「アリサ嬢は伯爵がいてくだされば幸せに導かれるでしょうね」
「私は姉が大好きで、アリサはよく似ています」
「そうでしたか。
そろそろアリサ嬢の所へご案内しましょう」
伯爵と子爵をアリサ嬢と合わせている間に、カインにブルイヤール伯爵の意向を伝えるとホッとした顔を見せた。
「後はアリサ嬢にイエスと言わせるだけだ」
「それが手強いんですよ。愛を囁いても本気にしていないようで」
「体を愛してると思っているのかもな」
「抱かないという選択肢は無いんです。掟もありますから。抱かない日が続くと解雇なのかと言い出しますし。
座学でもしっかり教え込まれていて奉仕をしないと不安みたいですね」
「真面目で誠実な性格なのだろう。
普通なら王子が囁くまま受け止めて、楽をして優遇を受け入れてその先も望むだろうに」
「俺は最初からアリサを閨係などと思ったことはないのに」
一週間後
執行官が報告に来た。
「義母ミネルヴァは二日前に死にました。
鳥に目玉を抉られて、そこから傷が悪化したようです」
「早かったな。一週間以上痛めつけられると思ったのに」
「庭師や清掃人が使う野外の厠に繋いだ異母妹メリッサは、好評で、本人自体が厠となっております。
噂を聞きつけて、兵士が使いたがっております」
「兵士は駄目だ。病気がうつれば戦力を失う。
しかし、厠掃除のために厠に住む汚物だぞ!? よくその気になれるなぁ」
「まあ、15歳で美人の類で豊満ですから」
「腹も膨れてきているのだろう?」
「あれは擬似妊娠だそうです」
「擬似妊娠?」
「孕みたい願望の強い者や、孕む不安の強い者が引き起こす現象で、腹が膨らみ悪阻などの症状を引き起こします。胎に子はおりません。
そもそも、胎に子がいる段階で刑の執行はしません。産ませてから執行します」
「孕んでもいないのに悪阻に苦しむのか」
「情報を元に構築しますから、孕んだ後に何が起こるのか知らない者は腹が膨れるだけと聞いております。稀なケースですので検証はできません。偶然かもしれません」
「面白いな。出産時期まで生かしたくなった。
で、肝心の清掃はやっているのか?」
「ええ。自分の住まいですから。汚物にまみれて食事は嫌でしょう」
「しっかり食わせてやってくれ。廃棄するような残り物も与えて構わないぞ」
「かしこまりました」
「アリサ嬢には知らせるな。喜ぶかもしれないが、気に病むかもしれないからな」
アリサ嬢の義母や異母妹の裁判を終えて、別室に集めたのは、陛下、カイン、ブルイヤール伯爵、クロネック子爵、侍女長、侍従長、そしてシルビア様だった。
そして調査官と、アリサ嬢だ。
先ず、先程の裁判の内容を伝えたら、“毒殺だったのですね” と言葉を漏らした後、礼を述べた。
その他の反応は無い。
官「虚偽申請による閨事の強要と分かったため、アリサ嬢は今すぐ退職することが可能です。
今回の件で、実家のクロネック家より慰謝料として財産分与をなさるそうです。
どうなさいますか」
「私は…許されるなら、閨係を契約期間中は全うすることを希望します」
「本当にいいのですね?」
「はい」
「もう一つ、ブルイヤール伯爵家が養女にと希望なさっています」
「母の?」
「はい。伯爵は亡くなられた母君とは姉弟なので叔父にあたります」
「そんな資格はありません」
「それは決めたブルイヤール伯爵に失礼ですよ」
「失礼しました。よく分かりません」
「この後ブルイヤール伯爵とクロネック子爵との交流の場を設けますのでよく考えるように」
「はい」
一先ずカインの手元に残ってくれて良かった。
カインも緊張が解けたようだ。
ブルイヤール伯爵とは裁判後に面会をした。
「養女にした後、カイン殿下が娶りたいと?」
「そうです」
「どうするかはアリサ次第ですね。それに嫁に出す条件はカイン殿下が国王にならないことです」
「何故でしょう」
「アリサはずっと苦しんで来ました。もう楽しく生きてもらいたい。本当は王子妃にさえしたくない。
それが叶わぬなら嫁には出しません」
ブルイヤール伯爵は必ずそうするだろうことが感じ取れた。
アリサ嬢が王妃となればブルイヤール家にも有益となるだろうに、姪の幸せを優勢させる男なのだな。
「アリサ嬢は伯爵がいてくだされば幸せに導かれるでしょうね」
「私は姉が大好きで、アリサはよく似ています」
「そうでしたか。
そろそろアリサ嬢の所へご案内しましょう」
伯爵と子爵をアリサ嬢と合わせている間に、カインにブルイヤール伯爵の意向を伝えるとホッとした顔を見せた。
「後はアリサ嬢にイエスと言わせるだけだ」
「それが手強いんですよ。愛を囁いても本気にしていないようで」
「体を愛してると思っているのかもな」
「抱かないという選択肢は無いんです。掟もありますから。抱かない日が続くと解雇なのかと言い出しますし。
座学でもしっかり教え込まれていて奉仕をしないと不安みたいですね」
「真面目で誠実な性格なのだろう。
普通なら王子が囁くまま受け止めて、楽をして優遇を受け入れてその先も望むだろうに」
「俺は最初からアリサを閨係などと思ったことはないのに」
一週間後
執行官が報告に来た。
「義母ミネルヴァは二日前に死にました。
鳥に目玉を抉られて、そこから傷が悪化したようです」
「早かったな。一週間以上痛めつけられると思ったのに」
「庭師や清掃人が使う野外の厠に繋いだ異母妹メリッサは、好評で、本人自体が厠となっております。
噂を聞きつけて、兵士が使いたがっております」
「兵士は駄目だ。病気がうつれば戦力を失う。
しかし、厠掃除のために厠に住む汚物だぞ!? よくその気になれるなぁ」
「まあ、15歳で美人の類で豊満ですから」
「腹も膨れてきているのだろう?」
「あれは擬似妊娠だそうです」
「擬似妊娠?」
「孕みたい願望の強い者や、孕む不安の強い者が引き起こす現象で、腹が膨らみ悪阻などの症状を引き起こします。胎に子はおりません。
そもそも、胎に子がいる段階で刑の執行はしません。産ませてから執行します」
「孕んでもいないのに悪阻に苦しむのか」
「情報を元に構築しますから、孕んだ後に何が起こるのか知らない者は腹が膨れるだけと聞いております。稀なケースですので検証はできません。偶然かもしれません」
「面白いな。出産時期まで生かしたくなった。
で、肝心の清掃はやっているのか?」
「ええ。自分の住まいですから。汚物にまみれて食事は嫌でしょう」
「しっかり食わせてやってくれ。廃棄するような残り物も与えて構わないぞ」
「かしこまりました」
「アリサ嬢には知らせるな。喜ぶかもしれないが、気に病むかもしれないからな」
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