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ヴィンセントの誤算
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【 ヴィンセントの視点 】
子爵が亡くなって、アリサと婚約の解消をした一ヶ月後に、婚約解消に伴う返却物が父宛に送られてきた。
『ヴィンセント、子爵家から婚約指輪が戻ってきた。何か知っているか?』
『子爵が亡くなって直ぐに解消しました。
だって約束した相手が亡くなっては無効ですよね』
ドカッ!
父に蹴り飛ばされた。
『何をするんですか!』
『何で勝手なことをしたんだ!大事な婚約だったのに!』
『妹のメリッサと婚約しますから大丈夫ですよ。
もう、胎に私の子が居ますから』
『今なんて言った』
『アリサの妹のメリッサと婚約します。私の子を孕んでいますし』
『……メリッサ嬢は今いくつだ?』
『15歳ですが、産む頃にはギリギリ成人しています』
『何でこんな馬鹿に育ったんだ…。関係を持った日が問題視されるんだよ。合意はあったのか?』
『はい。メリッサが夜這いをかけてきました』
『いつ』
『アリサの婚約で屋敷に泊まった夜です』
『……生娘じゃなかっただろう』
『え?』
『破瓜はどうだったか?血は出たか?』
『え?…分かりません』
『普通、媚薬の類など使わなければ、怖がったり、腰が逃げるものだ。挿入もかなり解さないと痛いし、押し戻されるような抵抗がある。未開通の他に、恐怖や緊張で力が入ってしまうからだ』
『そういえば…』
『前戯はしませんでした。
メリッサは媚薬を持っていて、私と半分ずつ飲みました』
『メリッサは恐らく経験者だ。伯爵夫人を狙ったんだよ。14歳でその状態なら、13歳以前に経験していたことになる。そんな女の孕んだ子など、お前の子か分からないだろう』
『そんな』
『それに、メリッサは無価値だ。娼婦なら人気が出ただろうがな』
『え?』
『亡くなった正妻の実子で、その正妻の実家の血が流れていることが大事だった。
正妻の実家は大富豪で二人は恋愛結婚だった。
だが婚姻して正妻が孕むと子爵は愛人を作った。
飽きてはまた次と作っていたよ』
『大富豪…』
『貧乏男爵家の娘が愛人になって産んだ娘を娶ったら笑い者だ。
アリサ嬢は母親の遺産を半分引き継いでいるし、母親の実家の伯爵家の相続人の一人でもある。
縁者となれば我がスローウィット家もあやかれたんだ。
お前は好きにメリッサと婚姻するといい』
『父上?』
『次期伯爵は次男にする』
『そんな!』
そして、
「ヴィンセント」
「はい」
「子爵家の後妻と、メリッサが逮捕されて城に連れて行かれた。共謀者が他にもいて一緒に連れて行かれたようだ」
「何の罪ですか」
「殺人だ。子爵を毒殺したようだ」
毒殺!?
「旦那様、ブルイヤール伯爵から緊急の先触れが届きました」
「受けるしかない。いついらしてもいいように応接間を整えておいてくれ」
「かしこまりました」
訪問があったのは二日後だった。
アリサとメリッサの兄のクロネック子爵が一緒だった。
ブルイヤール伯爵はアリサと子爵の叔父だ。
かなりの威圧感があった。
ブ「ご子息が、私の姪を裏切り侮辱し、騙したそうで」
父「騙したというより、騙されたのです」
ブ「というと?」
父「後から知ったのですが、きっかけは婚約の日にメリッサ嬢が息子の充てがわれた部屋に夜這いに来たことです。
詳しく聞くと、彼女は既に経験者でした、
息子は初めてで、よく分からなかったのです。
子爵と私の約束だから、子爵が亡くなれば解消しても構わないと囁きました。
息子はメリッサ嬢の虜になり、従いました。
その後妊娠を告げられたのですが、話を聞くと息子の子かどうか分かりません」
ブ「私が言いたいことは二つだ。
これは円満解消ではない。不貞による破棄だ。
だが、慰謝料は要らない。アリサは傷付いただろうが、長い目で見れば婚姻前で良かった。
そして、クロネック子爵家からは、未成年との性交に対して、スローウィット伯爵家と、ヴィンセント殿を相手に訴訟を起こす。
誘ったのがどちらかなど関係ない。ヴィンセント殿は成人していて、メリッサが未成年だと知っていた。
婚約者が未成年なのだから、妹も未成年だと誰でも分かる」
父「そんな…慰謝料でなんとかおさめてはもらえませんか」
ブ「メリッサを娶らないのだろう?殺人犯だしな。
腹の子は引き取ってくれよ。性犯罪者と殺人犯の子として産まれるのは可哀想だが仕方ない」
私「ブルイヤール伯爵!私だって被害者なのです!」
ブ「婚約したその日に、婚約者の妹と寝るのは下等動物と一緒だ。ちょん切ったらどうだ?」
私「マーク義兄上!」
マ「義兄などと呼ばないでもらいたい。アリサは日記に死にたいと書いていたよ」
私「っ!」
二人が帰った後、
「なんてことだ…ブルイヤール伯爵家を敵に回してしまった。スローウィット家から性犯罪者が出るなんて」
「……」
「訴訟が終わるまで追放も出来ない。
ずっと部屋で息を潜めていろ!」
もう終わりだ…
子爵が亡くなって、アリサと婚約の解消をした一ヶ月後に、婚約解消に伴う返却物が父宛に送られてきた。
『ヴィンセント、子爵家から婚約指輪が戻ってきた。何か知っているか?』
『子爵が亡くなって直ぐに解消しました。
だって約束した相手が亡くなっては無効ですよね』
ドカッ!
父に蹴り飛ばされた。
『何をするんですか!』
『何で勝手なことをしたんだ!大事な婚約だったのに!』
『妹のメリッサと婚約しますから大丈夫ですよ。
もう、胎に私の子が居ますから』
『今なんて言った』
『アリサの妹のメリッサと婚約します。私の子を孕んでいますし』
『……メリッサ嬢は今いくつだ?』
『15歳ですが、産む頃にはギリギリ成人しています』
『何でこんな馬鹿に育ったんだ…。関係を持った日が問題視されるんだよ。合意はあったのか?』
『はい。メリッサが夜這いをかけてきました』
『いつ』
『アリサの婚約で屋敷に泊まった夜です』
『……生娘じゃなかっただろう』
『え?』
『破瓜はどうだったか?血は出たか?』
『え?…分かりません』
『普通、媚薬の類など使わなければ、怖がったり、腰が逃げるものだ。挿入もかなり解さないと痛いし、押し戻されるような抵抗がある。未開通の他に、恐怖や緊張で力が入ってしまうからだ』
『そういえば…』
『前戯はしませんでした。
メリッサは媚薬を持っていて、私と半分ずつ飲みました』
『メリッサは恐らく経験者だ。伯爵夫人を狙ったんだよ。14歳でその状態なら、13歳以前に経験していたことになる。そんな女の孕んだ子など、お前の子か分からないだろう』
『そんな』
『それに、メリッサは無価値だ。娼婦なら人気が出ただろうがな』
『え?』
『亡くなった正妻の実子で、その正妻の実家の血が流れていることが大事だった。
正妻の実家は大富豪で二人は恋愛結婚だった。
だが婚姻して正妻が孕むと子爵は愛人を作った。
飽きてはまた次と作っていたよ』
『大富豪…』
『貧乏男爵家の娘が愛人になって産んだ娘を娶ったら笑い者だ。
アリサ嬢は母親の遺産を半分引き継いでいるし、母親の実家の伯爵家の相続人の一人でもある。
縁者となれば我がスローウィット家もあやかれたんだ。
お前は好きにメリッサと婚姻するといい』
『父上?』
『次期伯爵は次男にする』
『そんな!』
そして、
「ヴィンセント」
「はい」
「子爵家の後妻と、メリッサが逮捕されて城に連れて行かれた。共謀者が他にもいて一緒に連れて行かれたようだ」
「何の罪ですか」
「殺人だ。子爵を毒殺したようだ」
毒殺!?
「旦那様、ブルイヤール伯爵から緊急の先触れが届きました」
「受けるしかない。いついらしてもいいように応接間を整えておいてくれ」
「かしこまりました」
訪問があったのは二日後だった。
アリサとメリッサの兄のクロネック子爵が一緒だった。
ブルイヤール伯爵はアリサと子爵の叔父だ。
かなりの威圧感があった。
ブ「ご子息が、私の姪を裏切り侮辱し、騙したそうで」
父「騙したというより、騙されたのです」
ブ「というと?」
父「後から知ったのですが、きっかけは婚約の日にメリッサ嬢が息子の充てがわれた部屋に夜這いに来たことです。
詳しく聞くと、彼女は既に経験者でした、
息子は初めてで、よく分からなかったのです。
子爵と私の約束だから、子爵が亡くなれば解消しても構わないと囁きました。
息子はメリッサ嬢の虜になり、従いました。
その後妊娠を告げられたのですが、話を聞くと息子の子かどうか分かりません」
ブ「私が言いたいことは二つだ。
これは円満解消ではない。不貞による破棄だ。
だが、慰謝料は要らない。アリサは傷付いただろうが、長い目で見れば婚姻前で良かった。
そして、クロネック子爵家からは、未成年との性交に対して、スローウィット伯爵家と、ヴィンセント殿を相手に訴訟を起こす。
誘ったのがどちらかなど関係ない。ヴィンセント殿は成人していて、メリッサが未成年だと知っていた。
婚約者が未成年なのだから、妹も未成年だと誰でも分かる」
父「そんな…慰謝料でなんとかおさめてはもらえませんか」
ブ「メリッサを娶らないのだろう?殺人犯だしな。
腹の子は引き取ってくれよ。性犯罪者と殺人犯の子として産まれるのは可哀想だが仕方ない」
私「ブルイヤール伯爵!私だって被害者なのです!」
ブ「婚約したその日に、婚約者の妹と寝るのは下等動物と一緒だ。ちょん切ったらどうだ?」
私「マーク義兄上!」
マ「義兄などと呼ばないでもらいたい。アリサは日記に死にたいと書いていたよ」
私「っ!」
二人が帰った後、
「なんてことだ…ブルイヤール伯爵家を敵に回してしまった。スローウィット家から性犯罪者が出るなんて」
「……」
「訴訟が終わるまで追放も出来ない。
ずっと部屋で息を潜めていろ!」
もう終わりだ…
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