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兄弟王子の取り引き
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【 ローランドの視点 】
私の応接間には私と弟王子カインと侍従長と侍女長しかいない。
侍従長は探る様に見るから知らない。
侍女長は心当たりがあるようだ。
「侍従長と侍女長には、私の希望を兄上が聞き入れてくだされば協力を乞うことになるので同席してもらった。忙しいところすまない」
王族が頭を下げたので二人は慌てて頭を上げる様に促した。
「兄上。話を進める前に二つ宣言をします。
一つ目。俺は国王になる気はありません。
元々第二王子はスペアのようなものです。兄上が健康で正妃も娶った今、スペアは要りません。継承権の放棄をしてもかまいません。
二つ目。婚約を解消し、アリサを唯一の妻として娶ります」
「アリサ?」
「子爵家の娘で、今は俺の閨係です」
「…気に入ったということか」
「いえ。ずっとアリサを探していました。閨係として現れたのは偶然です」
その後、カインが前世の記憶を持ち、閨係のアリサは前世で愛した女の生まれ変わりだと話した。
「アリサ嬢に記憶はあるのか?」
「分かりません」
「どう解消するんだ」
「ヴィオレットとの婚約は解消可能と明記されております。
問題のある子爵家のことを聞けば王妃殿下は反対はしないでしょう。
これがクロネック子爵家の調査結果です」
クロネック子爵家の調査結果を読むと、アリサ嬢にとって虐待と屈辱の人生が書かれていた。
「酷いことをする」
母を亡くし、父の浮気が分かり、後妻に虐められ、父を亡くし、婚約者を寝取られ、閨係に出されてしまった令嬢。
可哀想なのは分かった。
「カイン。彼女は子爵家の令嬢だ。正妻には出来ない決まりだ」
「王族法に触れない立場になれば良いだけです。
もしくは正妻を迎えなければ、妾でもアリサが唯一の妻になります」
「だがな、カイン。
この様な目に遭った女性を妾にしてしまうのか?」
「今よりはいいでしょう。いざとなれば王族籍から抜けられるように仕組みます」
「アリサ嬢の気持ちは?
本気で愛しているのなら伯爵家以上に養女に出せ」
「何処に?」
「母方の親族に打診すればいい。まずはカインの母君に相談するんだ。
何にしてもお前の行動は全てシルビア様に降りかかるからな」
「直ぐに相談します」
「婚約者の件は家門と令嬢としっかり調査させないと駄目だ。もしカインに執着があったら矛先はアリサ嬢に向かう。今すぐでなくてもな。
孕んでもうすぐ産まれるというときに殺されることもあるのだからな」
「……はい」
「まだ三年近くある。養女の件や婚約者の件は慎重に確実にやらないと駄目だ。
その間、アリサ嬢の気持ちを手に入れないとな」
「はい」
「カイン。無理はさせるなよ」
「はい」
「ということだ侍従長、侍女長。アリサ嬢は第二王子カインの次期正妃。相応しい対応をお願いしたい」
「かしこまりました」
「兄上、感謝致します」
「カイン。王位継承を掛けなくていい」
「兄上、俺は元々その気が無いのです」
「分かった」
全く想定外だった。カインの好きな女が偶然閨係として現れて彼女と一緒にいるために王族でいることも捨ててもいいとまで思うとは。
「だけど嬉しかったな」
賢い弟が相談に来てくれるのはこんなに嬉しいものなのだな。
あの知識は前世のものだとは言ってはいたが。
私の応接間には私と弟王子カインと侍従長と侍女長しかいない。
侍従長は探る様に見るから知らない。
侍女長は心当たりがあるようだ。
「侍従長と侍女長には、私の希望を兄上が聞き入れてくだされば協力を乞うことになるので同席してもらった。忙しいところすまない」
王族が頭を下げたので二人は慌てて頭を上げる様に促した。
「兄上。話を進める前に二つ宣言をします。
一つ目。俺は国王になる気はありません。
元々第二王子はスペアのようなものです。兄上が健康で正妃も娶った今、スペアは要りません。継承権の放棄をしてもかまいません。
二つ目。婚約を解消し、アリサを唯一の妻として娶ります」
「アリサ?」
「子爵家の娘で、今は俺の閨係です」
「…気に入ったということか」
「いえ。ずっとアリサを探していました。閨係として現れたのは偶然です」
その後、カインが前世の記憶を持ち、閨係のアリサは前世で愛した女の生まれ変わりだと話した。
「アリサ嬢に記憶はあるのか?」
「分かりません」
「どう解消するんだ」
「ヴィオレットとの婚約は解消可能と明記されております。
問題のある子爵家のことを聞けば王妃殿下は反対はしないでしょう。
これがクロネック子爵家の調査結果です」
クロネック子爵家の調査結果を読むと、アリサ嬢にとって虐待と屈辱の人生が書かれていた。
「酷いことをする」
母を亡くし、父の浮気が分かり、後妻に虐められ、父を亡くし、婚約者を寝取られ、閨係に出されてしまった令嬢。
可哀想なのは分かった。
「カイン。彼女は子爵家の令嬢だ。正妻には出来ない決まりだ」
「王族法に触れない立場になれば良いだけです。
もしくは正妻を迎えなければ、妾でもアリサが唯一の妻になります」
「だがな、カイン。
この様な目に遭った女性を妾にしてしまうのか?」
「今よりはいいでしょう。いざとなれば王族籍から抜けられるように仕組みます」
「アリサ嬢の気持ちは?
本気で愛しているのなら伯爵家以上に養女に出せ」
「何処に?」
「母方の親族に打診すればいい。まずはカインの母君に相談するんだ。
何にしてもお前の行動は全てシルビア様に降りかかるからな」
「直ぐに相談します」
「婚約者の件は家門と令嬢としっかり調査させないと駄目だ。もしカインに執着があったら矛先はアリサ嬢に向かう。今すぐでなくてもな。
孕んでもうすぐ産まれるというときに殺されることもあるのだからな」
「……はい」
「まだ三年近くある。養女の件や婚約者の件は慎重に確実にやらないと駄目だ。
その間、アリサ嬢の気持ちを手に入れないとな」
「はい」
「カイン。無理はさせるなよ」
「はい」
「ということだ侍従長、侍女長。アリサ嬢は第二王子カインの次期正妃。相応しい対応をお願いしたい」
「かしこまりました」
「兄上、感謝致します」
「カイン。王位継承を掛けなくていい」
「兄上、俺は元々その気が無いのです」
「分かった」
全く想定外だった。カインの好きな女が偶然閨係として現れて彼女と一緒にいるために王族でいることも捨ててもいいとまで思うとは。
「だけど嬉しかったな」
賢い弟が相談に来てくれるのはこんなに嬉しいものなのだな。
あの知識は前世のものだとは言ってはいたが。
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