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婚約者が嫌いな理由
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赤いソファに座ること30分。
ようやく現れたのは冠をのせた王様達と、7歳の僕と同い歳くらいの女の子だった。
「フェリックス。この子はレア、シャレッド公爵家の長女だ。今日から君の婚約者だ。大事にするといい」
そう言ったのは王様だ。
「レア・シャレッドと申します。よろしくお願いします」
レッドブラウンの髪に透き通った空色の瞳の綺麗な人形のような子だった。
「フェリックス。こんなに可愛い公女がお嫁さんだなんて良かったな」
「×××××××××!」
彼女の挨拶以降記憶はない。
帰って父上に叱られた。
「まともに挨拶も出来ずにあんなことを言うなんて」
「陛下の前で緊張したのよ」
庇ってくれる母上は僕を撫でてくれる。
「いいか?この婚約は王命だ。叛けば罪に問われる。
ちゃんと公女と仲良くするんだぞ」
「…はい」
それから僕はレアを思い出さない日は無かった。
だけど何ヶ月経とうと何も変化はない。
「ねえ。婚約者って結婚まで会わないの?」
家令に聞いてみた。
「大抵は交流がございます。住まいが近ければ招待し合ったり、誕生日を祝ったりします。
場合によっては子供のうちでも茶会に一緒に出ることもありますし、大人になればパーティなど一緒に参加します」
「何でレアは僕に会いに来ないの?」
「私めにはわかりかねますが、次のお誕生日にお誘いしてはいかがでしょう」
誕生日に会えるのは間違いないだろうと思ったが。
「え?来ない?」
「そうよ。偶然あなたの誕生日と公爵夫人の誕生日が近くて、領地にいるそうよ」
「遠いの?」
「近いけど…お祝いは届いているわ。後で見てお礼状を書きましょうね」
パーティの後にシャレッド公爵家から届いていた包みを開けた。
子供向けの劇のチケットだった。
その後も会うこともなく、手紙もなく、年に一度の贈り物は必ず何かのチケットだった。
12歳の時の初冬に子供向けの王宮主催の茶会があった。1つ歳上の第一王子殿下の茶会で、伯爵家以上の11歳以上15歳以下の子が招かれた。
それにはレアも現れた。5年ぶりの再会だった。
更に綺麗になって驚いた。だけど
「スタール侯爵令息、ごきげんよう」
「あ、ああ」
それだけ言うと別の席に座ってしまった。
「なあ、フェリックス。あの綺麗な子は?」
「…僕の婚約者だ」
「そっか。王命だって言っていたな」
そこで気が付いた。出席者の大半が男女のペアだった。雰囲気からすると婚約者と同伴しているようだった。
なのに僕の婚約者は…
王子殿下は一通り挨拶を終えるとレアのテーブルに座り、話し始めた。
「やっぱりヴィクトル王子殿下のお気に入りって本当だったのね」
近くのテーブルで歳上の令嬢の話が聞こえてきた。
「王子がよく城に呼び付けているらしいな」
は?
「見て、絵になるわね」
「あんな嬉しそうな殿下の顔は、公女でないと引き出せないだろうな」
「何でお二人は婚約なさらなかったのかしら」
「ヴィクトル王子は他国の王女との政略結婚があるから」
「でも寵妃として第二妃になさればいいのに」
「よく分からないが、公女は王命で他の令息と婚約してるよ」
席を外して外に出た。
ベンチを探して座ると悔しさが込み上げた。
彼女は自分との婚約が嫌だったのだろう。
王子とは会って僕とは会わない。それが証拠だ。
王子とあんなに楽しげに話す姿を見て惨めだった。
5年も待っていたのに。
その日から彼女が嫌いになった。
ようやく現れたのは冠をのせた王様達と、7歳の僕と同い歳くらいの女の子だった。
「フェリックス。この子はレア、シャレッド公爵家の長女だ。今日から君の婚約者だ。大事にするといい」
そう言ったのは王様だ。
「レア・シャレッドと申します。よろしくお願いします」
レッドブラウンの髪に透き通った空色の瞳の綺麗な人形のような子だった。
「フェリックス。こんなに可愛い公女がお嫁さんだなんて良かったな」
「×××××××××!」
彼女の挨拶以降記憶はない。
帰って父上に叱られた。
「まともに挨拶も出来ずにあんなことを言うなんて」
「陛下の前で緊張したのよ」
庇ってくれる母上は僕を撫でてくれる。
「いいか?この婚約は王命だ。叛けば罪に問われる。
ちゃんと公女と仲良くするんだぞ」
「…はい」
それから僕はレアを思い出さない日は無かった。
だけど何ヶ月経とうと何も変化はない。
「ねえ。婚約者って結婚まで会わないの?」
家令に聞いてみた。
「大抵は交流がございます。住まいが近ければ招待し合ったり、誕生日を祝ったりします。
場合によっては子供のうちでも茶会に一緒に出ることもありますし、大人になればパーティなど一緒に参加します」
「何でレアは僕に会いに来ないの?」
「私めにはわかりかねますが、次のお誕生日にお誘いしてはいかがでしょう」
誕生日に会えるのは間違いないだろうと思ったが。
「え?来ない?」
「そうよ。偶然あなたの誕生日と公爵夫人の誕生日が近くて、領地にいるそうよ」
「遠いの?」
「近いけど…お祝いは届いているわ。後で見てお礼状を書きましょうね」
パーティの後にシャレッド公爵家から届いていた包みを開けた。
子供向けの劇のチケットだった。
その後も会うこともなく、手紙もなく、年に一度の贈り物は必ず何かのチケットだった。
12歳の時の初冬に子供向けの王宮主催の茶会があった。1つ歳上の第一王子殿下の茶会で、伯爵家以上の11歳以上15歳以下の子が招かれた。
それにはレアも現れた。5年ぶりの再会だった。
更に綺麗になって驚いた。だけど
「スタール侯爵令息、ごきげんよう」
「あ、ああ」
それだけ言うと別の席に座ってしまった。
「なあ、フェリックス。あの綺麗な子は?」
「…僕の婚約者だ」
「そっか。王命だって言っていたな」
そこで気が付いた。出席者の大半が男女のペアだった。雰囲気からすると婚約者と同伴しているようだった。
なのに僕の婚約者は…
王子殿下は一通り挨拶を終えるとレアのテーブルに座り、話し始めた。
「やっぱりヴィクトル王子殿下のお気に入りって本当だったのね」
近くのテーブルで歳上の令嬢の話が聞こえてきた。
「王子がよく城に呼び付けているらしいな」
は?
「見て、絵になるわね」
「あんな嬉しそうな殿下の顔は、公女でないと引き出せないだろうな」
「何でお二人は婚約なさらなかったのかしら」
「ヴィクトル王子は他国の王女との政略結婚があるから」
「でも寵妃として第二妃になさればいいのに」
「よく分からないが、公女は王命で他の令息と婚約してるよ」
席を外して外に出た。
ベンチを探して座ると悔しさが込み上げた。
彼女は自分との婚約が嫌だったのだろう。
王子とは会って僕とは会わない。それが証拠だ。
王子とあんなに楽しげに話す姿を見て惨めだった。
5年も待っていたのに。
その日から彼女が嫌いになった。
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