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十二話 幼き狐 弐
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戦闘訓練が終わり、皆の集まっている所にいく。
チラチラと物言いたげに翔が見てくるが、とりあえずスルーする。全く戦闘訓練をしていないけれど俺には何ら支障はない。
そもそも人と比べて戦闘能力が高い上に1000年生きていれば嫌でも経験値が高い。そんじゃそこらの人間なんて歯もたたないだろうと俺は自負している。
晴明ならばもしかするかもしれないが、それだって俺が手傷を負うだけで死にはしないだろう。
とは言えそんな事態になりはしないだろうが。俺も晴明、雅幸や業平は身内に甘い。それがどんな形かはさておき、身内を甘やかすのが俺たちだ。
当然、今俺の腕の中で大人しく抱かれているこの子狐も俺の中では身内に入り甘やかす対象になる。
「大人しくしていられるなんて偉いぞ~、白玉」
白面金毛九尾の狐の白と玉藻の玉で白玉。ネーミングセンスがないと言わないでほしい。美味しそうだけど似合うからいいのだ。
取りあえずくしゃくしゃと頭を撫でまくる。
「きゅんっ!」
あぁ、本当に可愛い。目に入れても痛くない。寧ろ可愛い。流石絶世の美女、玉藻前の子どもだ。
1000年前はたいそう面倒臭かったが、白玉を産んだことだけは褒めたい。
それよりも、晴明に合わせてしまって良いのだろうか。白玉にとって晴明は敵だ。俺も多少関与したにせよ討伐自体には関わっていない。殺生石の破壊しかしていないから何とも言えないが晴明程恨まれはしないだろう。多分。
どうか気付かないでいてほしいと願うばかりだ。
漸く周りが落ち着いたところで、雅幸が号令をかけて一か所に集まるように言い、俺たちの前に立った。
今回の戦闘訓練での注意箇所や良かった点を話している時だった。ふと俺に視線をとめた。正確には俺の腕に抱かれている白玉だが。
雅幸の視線に、周りの生徒の視線が俺に集まる。中にはぎょっとしている者や面白そうな顔をしている者、白玉の可愛さにノックアウトしている者もいた。それが誰かは想像にお任せするが、最後のやつとは仲良くなりたいものだ。一緒に白玉について語りたい。
暫しの沈黙の後、雅幸はまたやらかしたな、というような顔をした。
「烏丸、その子狐はなんだ?」
「白玉」
「それは名前か? ネーミングセンスねーなぁおい。……そうじゃなくてだな、何で抱いてるんだ。それはお前の戦闘相手だろ。何じゃれあってんだ?」
何やら思考が追い付かないならしい雅幸は眉間に皺をよせて指をあてた。
「なりたいっていうから、式にしちゃった」
「いや、なにちょっと手が滑っちゃったみたいに言うんだ、お前は。なりたいからってそう簡単に式に出来るものでもないだろ。訓練用の妖怪を式に下すなんて前代未聞だぞ」
余りに真剣な顔で言われ、ふと白玉を見る。くりくりとした金の目で俺を見つめ、首を傾げる姿は悶絶ものだった。もこもこな白金の毛が柔らかくて思わず頬ずりしながら雅幸に見せびらかす。
「だってほら、可愛いでしょ」
「まったく説明になっていないんだが」
呆れ顔で返され、俺は目を逸らす。
「ほら、人間やろうと思えば何でもできるもんだよ」
限度があるだろ、という無言の圧力を感じつつも白玉に声をかける。
「ほら、白玉、自己紹介してみて」
きゅっ、と白玉は可愛らしく返事をした。
「僕は白玉でし。よろしくお願いするでし! 主の為に頑張るでし!」
場の空気が和やかになったのは仕方がない事だろう。白玉が可愛すぎるのが悪い。でも許す! 可愛いから。可愛いは正義だから。
あの常に顔をしかめている不良こと武井 総司も一瞬表情を崩した。よっぽど可愛いものに弱いらしい。
……ん? 待てよ。これはもしかしたら、もしかして……。
俺はあることを企みながら、ごり押しで俺の式だと白玉は認めさせた。
普段の学校生活では隠形をして見鬼の才があってもかなりの力がない限りみえないようにするということで、はなしはまとまった。
チラチラと物言いたげに翔が見てくるが、とりあえずスルーする。全く戦闘訓練をしていないけれど俺には何ら支障はない。
そもそも人と比べて戦闘能力が高い上に1000年生きていれば嫌でも経験値が高い。そんじゃそこらの人間なんて歯もたたないだろうと俺は自負している。
晴明ならばもしかするかもしれないが、それだって俺が手傷を負うだけで死にはしないだろう。
とは言えそんな事態になりはしないだろうが。俺も晴明、雅幸や業平は身内に甘い。それがどんな形かはさておき、身内を甘やかすのが俺たちだ。
当然、今俺の腕の中で大人しく抱かれているこの子狐も俺の中では身内に入り甘やかす対象になる。
「大人しくしていられるなんて偉いぞ~、白玉」
白面金毛九尾の狐の白と玉藻の玉で白玉。ネーミングセンスがないと言わないでほしい。美味しそうだけど似合うからいいのだ。
取りあえずくしゃくしゃと頭を撫でまくる。
「きゅんっ!」
あぁ、本当に可愛い。目に入れても痛くない。寧ろ可愛い。流石絶世の美女、玉藻前の子どもだ。
1000年前はたいそう面倒臭かったが、白玉を産んだことだけは褒めたい。
それよりも、晴明に合わせてしまって良いのだろうか。白玉にとって晴明は敵だ。俺も多少関与したにせよ討伐自体には関わっていない。殺生石の破壊しかしていないから何とも言えないが晴明程恨まれはしないだろう。多分。
どうか気付かないでいてほしいと願うばかりだ。
漸く周りが落ち着いたところで、雅幸が号令をかけて一か所に集まるように言い、俺たちの前に立った。
今回の戦闘訓練での注意箇所や良かった点を話している時だった。ふと俺に視線をとめた。正確には俺の腕に抱かれている白玉だが。
雅幸の視線に、周りの生徒の視線が俺に集まる。中にはぎょっとしている者や面白そうな顔をしている者、白玉の可愛さにノックアウトしている者もいた。それが誰かは想像にお任せするが、最後のやつとは仲良くなりたいものだ。一緒に白玉について語りたい。
暫しの沈黙の後、雅幸はまたやらかしたな、というような顔をした。
「烏丸、その子狐はなんだ?」
「白玉」
「それは名前か? ネーミングセンスねーなぁおい。……そうじゃなくてだな、何で抱いてるんだ。それはお前の戦闘相手だろ。何じゃれあってんだ?」
何やら思考が追い付かないならしい雅幸は眉間に皺をよせて指をあてた。
「なりたいっていうから、式にしちゃった」
「いや、なにちょっと手が滑っちゃったみたいに言うんだ、お前は。なりたいからってそう簡単に式に出来るものでもないだろ。訓練用の妖怪を式に下すなんて前代未聞だぞ」
余りに真剣な顔で言われ、ふと白玉を見る。くりくりとした金の目で俺を見つめ、首を傾げる姿は悶絶ものだった。もこもこな白金の毛が柔らかくて思わず頬ずりしながら雅幸に見せびらかす。
「だってほら、可愛いでしょ」
「まったく説明になっていないんだが」
呆れ顔で返され、俺は目を逸らす。
「ほら、人間やろうと思えば何でもできるもんだよ」
限度があるだろ、という無言の圧力を感じつつも白玉に声をかける。
「ほら、白玉、自己紹介してみて」
きゅっ、と白玉は可愛らしく返事をした。
「僕は白玉でし。よろしくお願いするでし! 主の為に頑張るでし!」
場の空気が和やかになったのは仕方がない事だろう。白玉が可愛すぎるのが悪い。でも許す! 可愛いから。可愛いは正義だから。
あの常に顔をしかめている不良こと武井 総司も一瞬表情を崩した。よっぽど可愛いものに弱いらしい。
……ん? 待てよ。これはもしかしたら、もしかして……。
俺はあることを企みながら、ごり押しで俺の式だと白玉は認めさせた。
普段の学校生活では隠形をして見鬼の才があってもかなりの力がない限りみえないようにするということで、はなしはまとまった。
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