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八話 憂い
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お昼を食べ終えた俺たちは教室に戻った。
晴明と翔は早速特進コースでの授業があるという事で、教室まで送ってもらった。
授業で使うだろう教科書は翔から借りたから問題はないけれど。
そろそろ授業が始まるだろうという時だった。校内放送が流れだした。
≪2-Aの烏丸雅斗、至急職員室に来い。繰り返す、2-Aの烏丸雅斗、至急職員室に来い≫
声は恐らく雅幸ことかもっちゃん。こんな微妙なタイミングで何の様だろう。雑用だったらそこらにいる奴を使ってもらいたい。その前に周囲に集まるだろうチワワだかポメラニアンだかの小動物が手伝っていそうだけれど。
という現実逃避は兎も角として、早速決まったのかな。俺の特進コース行きの話し。
「ま、雅斗君、呼び出されるなんて一体何したの……?」
放送を聞いた恵が、びくびくとしながら俺に話しかけてきた。そんなに怯えるなんて雅幸は何をしたのだろうか。
見た目ホストなため、気弱そうな恵が気押されてしまうのは想像に難くないけれど。
「んー、やったと言えばやったけど……、あぁそんな顔しないで、大丈夫だから。何も悪い事してないから」
あまりに心配すぎて泣きそうな恵を制止する。
「とりあえず行ってくるよ」
「僕が付いていかなくても大丈夫? まだ学園の地理分からないでしょ?」
確かにそうだ。でも恵を授業に遅らせるわけにはいかない。いざとなったら雅幸の気配を探れば何とかなるだろう。
不安は多々あるけれど、初めて行く場所でもない。
「大丈夫。それに恵を授業に遅刻させるのは悪いし。それじゃ」
恵の返事を待つ前に手を振って教室を出る。
その後、クラスメイトが恵に対して、何でそんなに仲良くなっているのかと質問攻めしていたことを俺は知るよしもなかった。
何とかして漸く職員室に辿り着くと、待ち草臥れたようにして雅幸が待っていた。
「おそいぞ、雅斗」
「仕方ないでしょ、この学園広すぎるんだから。俺は久しぶり過ぎてこの学園の地理把握してないんだよ」
それもそうかと、雅幸は笑った。
「長生きするのも大変だな」
「何? 俺を茶化すつもりなの忠行。君こそ人のことは言えないよね」
真っ黒な笑みを浮かべると、雅幸は真っ青な顔をしてビクつく。
「すまない……。だから忠行はやめてくれ……」
怯えて謝るくらいなら最初からやらなければいいのに、と思いつつも許す。元々サドっ気のある雅幸だから仕方な。これでヘタレなんだからな……。なんというか。
「それで、何の様? 大体は想像できてるけど」
そう言うと雅幸は静かに頷いた。
「雅斗、かなり派手な事を食堂でやったみたいだな」
「それほどでも? ちょっとぱちーんって柏打っただけ」
「だけって、お前なぁ」
雅幸は呆れたような顔をしながら、眉間に指を添えた。
「あのなぁ、お前はあの田所に憑りついていた悪霊を完全に祓っただけじゃなくその場を清め、アフターケアまでしたんだぞ? ただの素人ができるわけがない。特進コース行きは確定して、お前の計画が進めやすくなったかもしれないが……あいつ等に確実に目をつけられたぞ」
もしかしたら前よりやりずらくなるかもしれない、と雅幸は続ける。
心配げな顔は、あの頃の、雪斗だった頃の俺と重ねてるのだろうか。何も憂う必要はないと言うのに。あの頃の俺と今の俺とでは全く違う。
覚悟も、力も、何もかも。あいつ等よりも力らの差からして俺の方が上手。あいつらが何か仕掛けてきたとしても俺には到底通用しない。
それに、興味を抱かれたからと言っても今の段階からしてそんなに警戒する程のものではないはずだ。
物珍しさからくるものだろ。転校初日で特進コース行きになったのだからそれも仕方ないだろう。不審に思われない程度に距離をとって晴明か翔の傍にいれば問題ない。
「大丈夫だよ、雅幸。大丈夫」
自分より上の方にある頭を軽く撫でる。
目を見開く雅幸だったが、表情を柔らくした後静かに微笑んだ。
「こうして慰められるとどちらが年上か分からなくなるな」
そういう雅幸の頭を俺は小突く。
「ばーか、当然でしょ。俺の方が年上なんだから」
「それもそうだが、今のお前は生徒で俺は教師だろうが」
それもそうだな、とつい笑うと、雅幸も釣られた様に肩を揺らして笑った。
「それじゃあ時間も押してるだろうから、そろそろ行こうか。行くんでしょう? 特進コースのクラスに」
「あぁ。荷物は何もいらない。今日は使わないからな」
そう言って俺は雅幸の後に続いて歩きだした。
晴明と翔は早速特進コースでの授業があるという事で、教室まで送ってもらった。
授業で使うだろう教科書は翔から借りたから問題はないけれど。
そろそろ授業が始まるだろうという時だった。校内放送が流れだした。
≪2-Aの烏丸雅斗、至急職員室に来い。繰り返す、2-Aの烏丸雅斗、至急職員室に来い≫
声は恐らく雅幸ことかもっちゃん。こんな微妙なタイミングで何の様だろう。雑用だったらそこらにいる奴を使ってもらいたい。その前に周囲に集まるだろうチワワだかポメラニアンだかの小動物が手伝っていそうだけれど。
という現実逃避は兎も角として、早速決まったのかな。俺の特進コース行きの話し。
「ま、雅斗君、呼び出されるなんて一体何したの……?」
放送を聞いた恵が、びくびくとしながら俺に話しかけてきた。そんなに怯えるなんて雅幸は何をしたのだろうか。
見た目ホストなため、気弱そうな恵が気押されてしまうのは想像に難くないけれど。
「んー、やったと言えばやったけど……、あぁそんな顔しないで、大丈夫だから。何も悪い事してないから」
あまりに心配すぎて泣きそうな恵を制止する。
「とりあえず行ってくるよ」
「僕が付いていかなくても大丈夫? まだ学園の地理分からないでしょ?」
確かにそうだ。でも恵を授業に遅らせるわけにはいかない。いざとなったら雅幸の気配を探れば何とかなるだろう。
不安は多々あるけれど、初めて行く場所でもない。
「大丈夫。それに恵を授業に遅刻させるのは悪いし。それじゃ」
恵の返事を待つ前に手を振って教室を出る。
その後、クラスメイトが恵に対して、何でそんなに仲良くなっているのかと質問攻めしていたことを俺は知るよしもなかった。
何とかして漸く職員室に辿り着くと、待ち草臥れたようにして雅幸が待っていた。
「おそいぞ、雅斗」
「仕方ないでしょ、この学園広すぎるんだから。俺は久しぶり過ぎてこの学園の地理把握してないんだよ」
それもそうかと、雅幸は笑った。
「長生きするのも大変だな」
「何? 俺を茶化すつもりなの忠行。君こそ人のことは言えないよね」
真っ黒な笑みを浮かべると、雅幸は真っ青な顔をしてビクつく。
「すまない……。だから忠行はやめてくれ……」
怯えて謝るくらいなら最初からやらなければいいのに、と思いつつも許す。元々サドっ気のある雅幸だから仕方な。これでヘタレなんだからな……。なんというか。
「それで、何の様? 大体は想像できてるけど」
そう言うと雅幸は静かに頷いた。
「雅斗、かなり派手な事を食堂でやったみたいだな」
「それほどでも? ちょっとぱちーんって柏打っただけ」
「だけって、お前なぁ」
雅幸は呆れたような顔をしながら、眉間に指を添えた。
「あのなぁ、お前はあの田所に憑りついていた悪霊を完全に祓っただけじゃなくその場を清め、アフターケアまでしたんだぞ? ただの素人ができるわけがない。特進コース行きは確定して、お前の計画が進めやすくなったかもしれないが……あいつ等に確実に目をつけられたぞ」
もしかしたら前よりやりずらくなるかもしれない、と雅幸は続ける。
心配げな顔は、あの頃の、雪斗だった頃の俺と重ねてるのだろうか。何も憂う必要はないと言うのに。あの頃の俺と今の俺とでは全く違う。
覚悟も、力も、何もかも。あいつ等よりも力らの差からして俺の方が上手。あいつらが何か仕掛けてきたとしても俺には到底通用しない。
それに、興味を抱かれたからと言っても今の段階からしてそんなに警戒する程のものではないはずだ。
物珍しさからくるものだろ。転校初日で特進コース行きになったのだからそれも仕方ないだろう。不審に思われない程度に距離をとって晴明か翔の傍にいれば問題ない。
「大丈夫だよ、雅幸。大丈夫」
自分より上の方にある頭を軽く撫でる。
目を見開く雅幸だったが、表情を柔らくした後静かに微笑んだ。
「こうして慰められるとどちらが年上か分からなくなるな」
そういう雅幸の頭を俺は小突く。
「ばーか、当然でしょ。俺の方が年上なんだから」
「それもそうだが、今のお前は生徒で俺は教師だろうが」
それもそうだな、とつい笑うと、雅幸も釣られた様に肩を揺らして笑った。
「それじゃあ時間も押してるだろうから、そろそろ行こうか。行くんでしょう? 特進コースのクラスに」
「あぁ。荷物は何もいらない。今日は使わないからな」
そう言って俺は雅幸の後に続いて歩きだした。
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