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15話 解決しました
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私が男に連れてこられたお店は兎に角可愛かった。
辺り一面色んなピンクやフリルにレース、可愛らしいぬいぐるみや宝石を散りばめたような小さなケース、アンティーク調の小物や置物が飾られていた。
前世の私も結構好きだった。特にアンティーク調が好きで、今も結構集めていている。
こんなお店が町にあったなんて思いもしなかった。普段ならお店の中をくまなく見て欲しいものを買っていただろうが、今は出来ないだろう。
隣にいる筋肉ダルマの男の所為で。
隣にいる男は兎に角目立った。それも悪い意味で。何かを考えているその姿はどこか悪巧みをしているようで、目も鋭く射殺さんばかりだ。
深窓の令嬢なんかが見たら卒倒しそうだ。そうでなくても失神しそうだ。
店内にいた他の客も店員も顔を青ざめて、男を遠巻きにしていた。決して男と一緒に遠巻きにはされていない……と良いな。
「どうしよう、このまま他人のフリをして帰ろうかしら」
遠い目をしながらぼやく私を気にした風になく、店内を見渡していた男は私に顔を向けた。
「ディアナ・ブラッドフォール、お前には女人が好むぷっプレゼントを選んでほしいのだ」
どこか気恥ずかし気に言う姿にギャップを感じるも決して可愛くなんかない。そもそもそのプレゼントを贈るような女がいたこと自体が驚きだった。
「何でそんなことを私に頼むのよ」
此処で「俺を畏れなくて普通じゃない図太い女じゃないと会話がままならないから」なんて言ったらしばいてやろう。それを自分で言ってしまうのは複雑だが、一般の女性が怖がったりする者に対してあまり動じないことは自覚している。苦手な物は確かにあるけど。黒光りで生命力が半端ないアレとかは本当に無理だ。
前世で二度ほど誤って裸足でアレを踏んだという事もあり、正直トラウマだが。
それはさて置き、私は男がどう答えるかと凝視する。
「彼女はその、お前の熱狂的なファンでな。最初はお前を見繕うと思ったが相手は伝説の大魔導士、銀色の乙女。下手に手を出せばただでは済まないと思い、それならばお前が選んだものなら喜ぶと思ったのだ」
「結局やっていること変わらないと思うんだけど」
それよりもミリー以外で私のファンがいたのね。隊員が300人突破したとか言っていたけれどはっきり言って実感がない。そのうちの一人の女が私のファンということなのだろう。
私の発言に「むっ」と気付いたように男は声を唸らせた。
「それに私が選ぶよりも貴方が選んだ方が良いわ。その方がその人も喜ぶと思うわ。……それにして誘拐っていう強硬手段に出ている貴方が私の私物をプレゼントにしようと考えなったのがちょっと意外だわ」
私の諭すような言葉に「そうだろうか」と考え込んでいた男だったが、私の最後の言葉にさもありなんというようにさらっと爆弾を落とした。
「彼女は既にお前の私物をコレクションしている。今更渡してもよっぽどのレアでなければ彼女は大喜びしないだろう」
してるんかいっ! と心の中で激しく突っ込みをする。自分の顔が引きつっているのが分かる。
ミリー以外にもこんな変態がいたなんて……。そもそも私のコレクションって一体どうやって集めたんだ?
背筋に冷や汗が流れるのを感じ、もっと自宅の警備システムを強化しておこうと胸に誓った。
「ま、まぁ彼女が喜びそうなものは教えてあげるわ。見た所貴方はそういうのは不慣れなんでしょう?」
私の言葉に「あぁ」と頷く男に私は溜息を吐きたくなった。自分で適当に選んでしまえと思いつつも、男にとってその女性が大事だという事はよく分かった。とっと良い物見繕って検討させよう。
「それじゃあその人はどんな人なの? それによって選ぶイメージも変わってくるわ」
すると、男は照れたようにして顔を赤らませながら少し静かな声で話し出した。
「彼女は、兎に角愛らしい。小さく、それでいて柔らかくまるで小動物のようなのだ。こちらが守ってやらねばと思う程可愛らしいのだが、反面とても強かで男の俺よりも高い戦闘能力をはっきする、素晴らしい女性だ」
なんと言っていいのかよく分からない。小動物と怪獣を足して二で割ったような存在といしか想像がつかない。何故怪獣かと言えば、この男に勝てるにそれぐらいしか居ないとおもったからだ。
「そ、そうね……。可愛らしい物が似合うのでしょうけど、私としてはぬいぐるみなんかよりも実用的なものを勧めるわ。確かにぬいぐるみや定番のアクセサリーを貰ったら女性は嬉しいものだけど、生活で使えるものならあっても邪魔にはならないと思うの。彼女に似合う癒しの効果があるアロマとかおそろいのマグカップとか、庶民ではなかなか手に入りずらいスキンケアのクリームとかも良いと思うわ」
個人的な見解だが、私ならそう言ったものを貰った方が嬉しい。確かにアクセサリーを貰うのも嬉しいけれど、お揃いのものとか自分を気遣ってくれるものを贈ってくれた方が嬉しいと思うのだ。
基本的に家事から仕事をこなす一般庶民の手は荒れてしまうものだ。貴族の様に日焼け対策もほとんどしていない。そんな所にスキンケアクリームなんて送れば大喜びするだろう。
なるほど、と頷く男は暫く物色すると、キラキラと輝くビーズが沢山あしらわれたケースに入っているスキンケアクリームと可愛らしい花があしらわれたバレッタを購入した。
ビクビクと怖がっている店員に包装してもらっている姿は嬉々としており、やっと私の役目も終えたかと息を吐く。
店を出てた瞬間、目の前に土埃がたったかと思うと隣にいた男が数メートル先に吹き飛ばされていることに気が付いた。
よく見ると、仰向けに倒れている男に人が跨って胸倉を掴んでいた。
「ミリー?!」
思わず驚きの声を上げていると、ミリーは顔を般若の様にして凄い剣幕で男に怒鳴りつけた。
「この盗人誘拐犯!! よくも私のディアナ様に手を出しましたね!! 私からディアナ様を掻っ攫おうなんて100億年早いです! ディアナ様を誘拐しあ~んなことやこ~んな事なんてした羨ましい事山の如くな罪として私が成敗します!!」
目を光らせ鉄拳を食らわそうと振りかぶるミリーを慌てて私は制止した。
「まっ待ってミリー! 私なにもされてないから! これには深いわけが……」
「何で温情を掛けるんですかディアナ様! ディアナ様がお優しく誰にでも慈悲を与えようとする姿はとても誇らしいですが、よく見てくださいこの悪人面を! こんな顔の…………あら?」
男の顔を突き出して私に見せようとしたミリーは、男の顔を凝視したかと思うと首を傾げた。
「ギル?」
ミリーは男に向けて、男の名前だろうものを呟いた。
「ミリー、知り合いなの?」
何だか大体の辻妻が分かってきた私は男とミリーの関係性を悟った。
「私の婚約者のギルバートです、ディアナ様」
そう言ったミリーは済まなそうにギルと呼んだ男を起こした。
「ごめんなさい、ギル。ディアナ様が不審な筋肉ダルマに誘拐されたって聞いていてもたってもいられなくって、ついドロップキックを食らわせてしまったわ。大丈夫?」
「大丈夫だ。相変わるキレのある素晴らしい足技だった。ますます惚れ直した。もっと強く蹴り上げてくれてもよかったぞ」
二人の空気が作られて私は居た堪れなくなった。それに男・ギルバートの発言がМとしか思えなくて顔が引きつる。
これで本当にギルバートがМだったら本当の変態カップルだ。私には到底処置できない境地にまで達してしまったら本当に困ったことになる。
それにギルバートが婚約者と言うこと自体が驚きなのだ。ミリーは婚約者のことを、「ヘタレですけど、優しくて包容力があって頼りになるんですよ」といっていたけど何とも言えない。
ヘタレというよりもミリーに尻に敷かれている感がある。包容力も、私の偏見だが不器用な彼が十分にできるとは想えなかったが、物理的にと言われれば納得である。まぁ、しっかしりしているようだし頼りになるだろうが、不安が拭えない。
私が思考に浸っていると後ろの方から声が聞こえてきた。
「師匠―!」
「ディアナー!」
走りながら大声で私を呼んでいたのは、アルと和也だった。2人は私の所まで着くと安心したような顔をして息を吐いた。
「2人ともどうしたの?」
私が首を傾げると和也が食って掛かった。
「どうしの? じゃないだろ! どれだけ心配したと思っているんだ! 目の前でお前が誘拐されて胸が張り裂けそうで大変だったんだからな!」
アルも和也に続くように口を開いた
「そうですよ! 和さんに師匠が誘拐されたと聞いて本当に心配したんですよ?! 師匠の身に何かがあったらどうしようとずっと不安だったんですから!」
「それは……ごめんなさい」
二人の気迫に私はたじたじとしてしまう。
以後気を付けるようにと重々言いつけられた私は頷くしかなかった。
「それにしてもどうしてギルはディアナ様を誘拐したんですか?」
ミリーが首を傾げて聞いてきたため、事の顛末話した。その後ミリー達の話を聞くと完全に全てのピースが埋まり、完全に辻妻を理解する。
簡単に言うと、ミリーの誕生日が今日らしく密かに誕生日会をすることを計画していたらしい。
その部屋や料理の準備をルークやミリー達の友人がしている間にアルがミリーを連れ出して時間稼ぎをしていたらしい。その時間稼ぎがアルが受けた依頼でもあった。ギルバートもミリーが居ない間にプレゼントを買おうとしたが悩みに悩んで私を誘拐し、誰かの助けを求めて人を探していた和也がアルを見つけて私をミリー達3人が捜索して今に至るのだ。
「でも私ミリーが誕生日だったなんて知らなかったわ。プレゼントも何も準備してなかったわ」
知っていたなら先ほどの店で買っていたのに。
私がしょんぼりとしていると、ミリーは「気にしないでください」と満面の笑みを湛えた。
「もともと私は、ディアナ様を私の誕生日会にご招待をした後、『初めてディアナ様が私の誕生日を祝ってくれた記念日』としてディアナ様を主役にして祝う予定だったんです。それでもプレゼントを、というのでしたらどうぞその熟れたさくらんぼの様な可愛らしい唇で私の頬に口づけをお願いしますねっ」
興奮したミリーから庇う様にアルと和也が私の前にでた。和也は初めてミリーの変態ぶりを見た所為か、「ミリーが違う」と小さく呟きながら顔を引きつらせていた。
この後無事ミリーの誕生日を祝い、誕生日会はとても楽しいものとなった。
酔っぱらったミリーにキスをせがまれたのは想像に難くないだろう。
辺り一面色んなピンクやフリルにレース、可愛らしいぬいぐるみや宝石を散りばめたような小さなケース、アンティーク調の小物や置物が飾られていた。
前世の私も結構好きだった。特にアンティーク調が好きで、今も結構集めていている。
こんなお店が町にあったなんて思いもしなかった。普段ならお店の中をくまなく見て欲しいものを買っていただろうが、今は出来ないだろう。
隣にいる筋肉ダルマの男の所為で。
隣にいる男は兎に角目立った。それも悪い意味で。何かを考えているその姿はどこか悪巧みをしているようで、目も鋭く射殺さんばかりだ。
深窓の令嬢なんかが見たら卒倒しそうだ。そうでなくても失神しそうだ。
店内にいた他の客も店員も顔を青ざめて、男を遠巻きにしていた。決して男と一緒に遠巻きにはされていない……と良いな。
「どうしよう、このまま他人のフリをして帰ろうかしら」
遠い目をしながらぼやく私を気にした風になく、店内を見渡していた男は私に顔を向けた。
「ディアナ・ブラッドフォール、お前には女人が好むぷっプレゼントを選んでほしいのだ」
どこか気恥ずかし気に言う姿にギャップを感じるも決して可愛くなんかない。そもそもそのプレゼントを贈るような女がいたこと自体が驚きだった。
「何でそんなことを私に頼むのよ」
此処で「俺を畏れなくて普通じゃない図太い女じゃないと会話がままならないから」なんて言ったらしばいてやろう。それを自分で言ってしまうのは複雑だが、一般の女性が怖がったりする者に対してあまり動じないことは自覚している。苦手な物は確かにあるけど。黒光りで生命力が半端ないアレとかは本当に無理だ。
前世で二度ほど誤って裸足でアレを踏んだという事もあり、正直トラウマだが。
それはさて置き、私は男がどう答えるかと凝視する。
「彼女はその、お前の熱狂的なファンでな。最初はお前を見繕うと思ったが相手は伝説の大魔導士、銀色の乙女。下手に手を出せばただでは済まないと思い、それならばお前が選んだものなら喜ぶと思ったのだ」
「結局やっていること変わらないと思うんだけど」
それよりもミリー以外で私のファンがいたのね。隊員が300人突破したとか言っていたけれどはっきり言って実感がない。そのうちの一人の女が私のファンということなのだろう。
私の発言に「むっ」と気付いたように男は声を唸らせた。
「それに私が選ぶよりも貴方が選んだ方が良いわ。その方がその人も喜ぶと思うわ。……それにして誘拐っていう強硬手段に出ている貴方が私の私物をプレゼントにしようと考えなったのがちょっと意外だわ」
私の諭すような言葉に「そうだろうか」と考え込んでいた男だったが、私の最後の言葉にさもありなんというようにさらっと爆弾を落とした。
「彼女は既にお前の私物をコレクションしている。今更渡してもよっぽどのレアでなければ彼女は大喜びしないだろう」
してるんかいっ! と心の中で激しく突っ込みをする。自分の顔が引きつっているのが分かる。
ミリー以外にもこんな変態がいたなんて……。そもそも私のコレクションって一体どうやって集めたんだ?
背筋に冷や汗が流れるのを感じ、もっと自宅の警備システムを強化しておこうと胸に誓った。
「ま、まぁ彼女が喜びそうなものは教えてあげるわ。見た所貴方はそういうのは不慣れなんでしょう?」
私の言葉に「あぁ」と頷く男に私は溜息を吐きたくなった。自分で適当に選んでしまえと思いつつも、男にとってその女性が大事だという事はよく分かった。とっと良い物見繕って検討させよう。
「それじゃあその人はどんな人なの? それによって選ぶイメージも変わってくるわ」
すると、男は照れたようにして顔を赤らませながら少し静かな声で話し出した。
「彼女は、兎に角愛らしい。小さく、それでいて柔らかくまるで小動物のようなのだ。こちらが守ってやらねばと思う程可愛らしいのだが、反面とても強かで男の俺よりも高い戦闘能力をはっきする、素晴らしい女性だ」
なんと言っていいのかよく分からない。小動物と怪獣を足して二で割ったような存在といしか想像がつかない。何故怪獣かと言えば、この男に勝てるにそれぐらいしか居ないとおもったからだ。
「そ、そうね……。可愛らしい物が似合うのでしょうけど、私としてはぬいぐるみなんかよりも実用的なものを勧めるわ。確かにぬいぐるみや定番のアクセサリーを貰ったら女性は嬉しいものだけど、生活で使えるものならあっても邪魔にはならないと思うの。彼女に似合う癒しの効果があるアロマとかおそろいのマグカップとか、庶民ではなかなか手に入りずらいスキンケアのクリームとかも良いと思うわ」
個人的な見解だが、私ならそう言ったものを貰った方が嬉しい。確かにアクセサリーを貰うのも嬉しいけれど、お揃いのものとか自分を気遣ってくれるものを贈ってくれた方が嬉しいと思うのだ。
基本的に家事から仕事をこなす一般庶民の手は荒れてしまうものだ。貴族の様に日焼け対策もほとんどしていない。そんな所にスキンケアクリームなんて送れば大喜びするだろう。
なるほど、と頷く男は暫く物色すると、キラキラと輝くビーズが沢山あしらわれたケースに入っているスキンケアクリームと可愛らしい花があしらわれたバレッタを購入した。
ビクビクと怖がっている店員に包装してもらっている姿は嬉々としており、やっと私の役目も終えたかと息を吐く。
店を出てた瞬間、目の前に土埃がたったかと思うと隣にいた男が数メートル先に吹き飛ばされていることに気が付いた。
よく見ると、仰向けに倒れている男に人が跨って胸倉を掴んでいた。
「ミリー?!」
思わず驚きの声を上げていると、ミリーは顔を般若の様にして凄い剣幕で男に怒鳴りつけた。
「この盗人誘拐犯!! よくも私のディアナ様に手を出しましたね!! 私からディアナ様を掻っ攫おうなんて100億年早いです! ディアナ様を誘拐しあ~んなことやこ~んな事なんてした羨ましい事山の如くな罪として私が成敗します!!」
目を光らせ鉄拳を食らわそうと振りかぶるミリーを慌てて私は制止した。
「まっ待ってミリー! 私なにもされてないから! これには深いわけが……」
「何で温情を掛けるんですかディアナ様! ディアナ様がお優しく誰にでも慈悲を与えようとする姿はとても誇らしいですが、よく見てくださいこの悪人面を! こんな顔の…………あら?」
男の顔を突き出して私に見せようとしたミリーは、男の顔を凝視したかと思うと首を傾げた。
「ギル?」
ミリーは男に向けて、男の名前だろうものを呟いた。
「ミリー、知り合いなの?」
何だか大体の辻妻が分かってきた私は男とミリーの関係性を悟った。
「私の婚約者のギルバートです、ディアナ様」
そう言ったミリーは済まなそうにギルと呼んだ男を起こした。
「ごめんなさい、ギル。ディアナ様が不審な筋肉ダルマに誘拐されたって聞いていてもたってもいられなくって、ついドロップキックを食らわせてしまったわ。大丈夫?」
「大丈夫だ。相変わるキレのある素晴らしい足技だった。ますます惚れ直した。もっと強く蹴り上げてくれてもよかったぞ」
二人の空気が作られて私は居た堪れなくなった。それに男・ギルバートの発言がМとしか思えなくて顔が引きつる。
これで本当にギルバートがМだったら本当の変態カップルだ。私には到底処置できない境地にまで達してしまったら本当に困ったことになる。
それにギルバートが婚約者と言うこと自体が驚きなのだ。ミリーは婚約者のことを、「ヘタレですけど、優しくて包容力があって頼りになるんですよ」といっていたけど何とも言えない。
ヘタレというよりもミリーに尻に敷かれている感がある。包容力も、私の偏見だが不器用な彼が十分にできるとは想えなかったが、物理的にと言われれば納得である。まぁ、しっかしりしているようだし頼りになるだろうが、不安が拭えない。
私が思考に浸っていると後ろの方から声が聞こえてきた。
「師匠―!」
「ディアナー!」
走りながら大声で私を呼んでいたのは、アルと和也だった。2人は私の所まで着くと安心したような顔をして息を吐いた。
「2人ともどうしたの?」
私が首を傾げると和也が食って掛かった。
「どうしの? じゃないだろ! どれだけ心配したと思っているんだ! 目の前でお前が誘拐されて胸が張り裂けそうで大変だったんだからな!」
アルも和也に続くように口を開いた
「そうですよ! 和さんに師匠が誘拐されたと聞いて本当に心配したんですよ?! 師匠の身に何かがあったらどうしようとずっと不安だったんですから!」
「それは……ごめんなさい」
二人の気迫に私はたじたじとしてしまう。
以後気を付けるようにと重々言いつけられた私は頷くしかなかった。
「それにしてもどうしてギルはディアナ様を誘拐したんですか?」
ミリーが首を傾げて聞いてきたため、事の顛末話した。その後ミリー達の話を聞くと完全に全てのピースが埋まり、完全に辻妻を理解する。
簡単に言うと、ミリーの誕生日が今日らしく密かに誕生日会をすることを計画していたらしい。
その部屋や料理の準備をルークやミリー達の友人がしている間にアルがミリーを連れ出して時間稼ぎをしていたらしい。その時間稼ぎがアルが受けた依頼でもあった。ギルバートもミリーが居ない間にプレゼントを買おうとしたが悩みに悩んで私を誘拐し、誰かの助けを求めて人を探していた和也がアルを見つけて私をミリー達3人が捜索して今に至るのだ。
「でも私ミリーが誕生日だったなんて知らなかったわ。プレゼントも何も準備してなかったわ」
知っていたなら先ほどの店で買っていたのに。
私がしょんぼりとしていると、ミリーは「気にしないでください」と満面の笑みを湛えた。
「もともと私は、ディアナ様を私の誕生日会にご招待をした後、『初めてディアナ様が私の誕生日を祝ってくれた記念日』としてディアナ様を主役にして祝う予定だったんです。それでもプレゼントを、というのでしたらどうぞその熟れたさくらんぼの様な可愛らしい唇で私の頬に口づけをお願いしますねっ」
興奮したミリーから庇う様にアルと和也が私の前にでた。和也は初めてミリーの変態ぶりを見た所為か、「ミリーが違う」と小さく呟きながら顔を引きつらせていた。
この後無事ミリーの誕生日を祝い、誕生日会はとても楽しいものとなった。
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