討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

文字の大きさ
上 下
124 / 139

† 十九の罪――禁じられた呪い(漆)

しおりを挟む

「友達だからね。ボクの存在が否定されても、彼にもらった不老不死まで否定させはしない! 彼の成果は、ボクに託してくれた夢は、こんなところで消えるわけにはいかないんだ……! 行かないと! 緑川くんのとこに、行かないと――――」
 そこまでの近くて遠い道のりが、彼には紛れもない永遠である。
「行かない、と……!」
 そうしているうちにも、その強固な魂を置き去りにするようにして、無へと還る肉体。ゆっくり、ゆっくりと屋上を目指し、彼は登ってゆく。

(信雄め、独力ひとりでも斯様な力を揮うに至ったか)
 一方のルシファーも、相方の奮闘する神殿上へと目を移した直後――――

 高まり続けた彼らの魔力がひときわ大規模な衝撃を引き起こし、砕け散った壁面と共に少女が吹き飛ばされてきた。
「む、此れは危ない」
 相も変わらず無表情のまま浮上して、気を失っている彼女を受け止める。
「……熱は無いな」
 抱えた彼女の額に手を当て、確認する魔王。
「んー、むぐむぅう…………」
 ルシファーの腕の中で、桜花は寝言のように呻いている。
「んごんご……むぅうううう!」
「騒々しい」
 冷淡な瞳と声色で、彼は一喝した。
「あー。ぬんぬん、んああ…………」
「……貴様、起きておろう……?」
 ルシファーが僅かに眉をひそめ、顔を覗き込むと――――
「ん、あー、わッ! ちょちょちょなにして……うわっ!?」
 目を覚ました桜花は、動揺のあまりバランスを崩し、さらに焦るという悪循環に猛スピードで突入。
「大人しくせよ」
「おおおとなしくって、なにするつもり!? ちょ……はなして変態ッ!」
「然れば墜ちて死するのみ。危険が故、大人しくせよと云っている。尚、余は変態ッではない」
 彼は依然として、冷静沈着に対処する。
(ベルゼブブの扱いで慣れておったのが幸いではあるが――ベルゼブブ……?)
 腹心の気配が消失していることに気づき、ルシファーの力が緩んだ。
「やめてやめてマジやめて――って、ああ……もしかしてきみ、たすけてくれたの?」
 大きな瞳をいっそう丸くして、桜花が問いかける。
「左様に申しておろう」
「いや、はじめて聞いたんだけど…………それより、ぼく――信雄は!?」
「其の者が事の他煩わせて呉れたのでな。此れより直に見物と赴くものよ」
 変わり果てた茅原の風体と、それでいていまだ歩みを止めないその心に、息を呑む彼女。
「……どうしてとどめを刺さないの? あんなの、苦しいってきもちが残るだけじゃん」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
ブラック企業に勤めてたのがいつの間にか死んでたっぽい。気がつくと異世界の伯爵令嬢(第五子で三女)に転生していた。前世働き過ぎだったから今世はニートになろう、そう決めた私ことマリアージュ・キャンディの奮闘記。 ※この小説はフィクションです。実在の国や人物、団体などとは関係ありません。 ※2020-01-16より執筆開始。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生先は殺ル気の令嬢

豆狸
恋愛
私はだれかを殺ルのも、だれかに殺ラレルのも嫌なのです。

処理中です...