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† 十七の罪――ともだち(参)
しおりを挟む「ああっ、あれを……!」
吃驚して、一人が指さす。
「あれだのなんかだの、曖昧な報告で混乱させないよういつも注意してるでしょ――って……ええええッ!? どういうこと、あれ……まさか、ソロモン七十二柱……!?」
おぞましい影が、全貌を現した巨大な祭壇の至る所に舞い降りていた。
それも、怪魔の大群みたいに数ばかり寄せ集めた、という訳ではない。そのひとつずつが、神代の絶技を挨拶代わりに出してくるような大物だと、直感で見てとれた。
「……アスモデウス、アシュタロト、エリゴス――そちら……またも人間にくっしおったか!?」
「やっぱベリアルの件もあんたら最初から仕組んでやがった訳か。組織のトップっつーのは、人間を指揮するよりポーカーフェイスが上手くなきゃ務まらねーもんなんですかね」
気怠そうな目つきで、こちらを一瞥する茅原。
「正義の為には汚い手段だろうが厭わないのは、上に立つ者の条件だろう」
「人の血で塗れた手に掴み取った正義とやらがそんな綺麗なものであるかのような顔で語っちゃうとは、どこまでも面の皮が厚い連中だな。自分から正義って掲げるヤツがうさんくさくなかったことなんて、古今東西ねーだろが。戦争なんて、いつの世も正義の名の元におっぱじめられてきたって歴史の授業で気づかなかったのか、とっつぁん坊や」
最後の一言に、一瞬だけ眉を強張らせたかに見えたが、呆れたように彼は続ける。
「ならば戦争を起こせばいいだけの話だ。あらゆる戦争を終わらせる為のな」
「争いは生き物の本質だし、それが消えた先に残ってるとしたら無人の地球じゃねーのか」
溜息をつくと茅原は、煙管を口に含んだ。ゆっくりと吐き出され、流れた煙が溶けてゆく。
「青二才と議論するつもりは無い。言っただろう、俺がやり合うのはそこの堕天使だと」
「……あんた、どうしてそこまでルシファーを――」
「許せないだけだ。俺たちがどれだけの覚悟と努力と絶望の末に、人間であることを捨てたか想像もできんような、生まれもって超常の到達者な天使様がよ」
刺すような眼光で、武人は言い放った。
「一つ。余からも問うが、貴様程の手練が何故斯様な男の夢物語に助勢する?」
一切の反応を見せていなかったルシファーが、ふと沈黙を破る。
「……友達だから」
彼は静かに、しかし、決然と答えた。
「友達だから……友達と、その夢を守りたいんだ――――」
狂気じみた目力で、喉を震わせ、茅原は呟く。
「世界でたった一人の友達と交わした約束を、邪魔されてたまるか…………」
悪魔たちが意識をこちらに向け始めたようだ。本能的な悪寒が警鐘を鳴らしている。
「そういうことだ。まずは豪華なゲストの皆さんに、邪魔者を排除していただこう!」
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