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† 十五の罪――見えない星(参)
しおりを挟む「遂にこの時が来たか――怒りも、悲しみも、憎しみも、凡てが消える」
地上四百五十メートル。巨大電波塔の展望デッキより、じきに別れを告げる世界を見下ろし、象山紀章は囁く。
「彼には日本を再出発させて、世界を力でまとめ上げ、その先にあるべき未来を築くって声かけたんでしょー? 彼ごと消したら訴えられちゃうんじゃない?」
その隣で煙管を片手に、窓へ上体を預ける盟友。
「フン……この国の再出発も、世界を一つにするも、何ら偽っていないが。元より、人間に救いなど無い。いや、救いの手すら受け入れられない愚かな人間はもう消え去るべきだ。何れにせよ、八十億を助けるなどという夢物語ごと棄て、どこかで間引かねばならなかったまでのこと」
「変わらないね。その誰であろうと、切り捨てることに躊躇しないとこ……自分さえも犠牲に――キミはあの日も、そうだった」
そう吐露して、茅原が見遣る眼下の闇夜に、雨は降り続けた。
† † † † † † †
「死してなお、弟子の成長を直々に試せるとは心躍るが、戦いしかできない腕にしてくれと言った覚えはないんだけどねえ。まったく……これじゃ愛する者の手も握れなくなっちゃったじゃないか」
矢継ぎ早に浴びせる魔力弾が足止めにもなっていない。
「ま、この手もこれはこれで気に入ってんだけどさ……!」
多聞さんも返してきた。
「うぉおおおまだまだーッ!!」
撃ち合っても勝ち目はないので、空中へと退避する。
「……第二形態“解放”――弓!」
彼が弓状に変化した左腕に右手を添えると、その先端より分裂してゆくようにして、棘が生成された。無数の針として射出されたそれらは、追尾するように群がってくる。
迎撃する隙など、みすみす与えてはくれないはずだ。まとめて消すしかない――――
「くっそ……猛炎を以て終焉を与えん……!」
熱量が足りなければ、この盾に続いて俺も貫かれる。
「っぶねぇ……ッ!」
間一髪――いずれも直前で燃え尽きたようだ。
「あぶないのは、これからだよ! 第三形態“解放”――鎌!」
今度は双鎌と成した両腕を振りかざし、斬り込んでくる。
「この……ッ、次から次へと……!」
手の内だけではない。もはや、このパワーは妖屠にしても規格外だ。まともに受けられる威力ではないので、後退する他ない。
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