討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

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† 九の罪――殺し屋殺し(参)

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 多聞と柚木は、訪れた一室の異様な主を無言で見つめていた。
「いやー、喜多村さん。此度はまことに嘆かわしいことに相成ってしまった」
 座したまま、口火を切る筆頭顧問。
「茅原の愚行に引き続き、これでは私も都内を離れるに離れられぬというもの」
 来客は、いずれも沈黙を貫いている。象山は溜息を挟み、続けた。
「と、いえど……飼い犬に手を噛まれてばかりともゆかなくてね――――」
 多聞の横に控えていた柚木が、おもむろに下がってゆく。
「悪魔と契約した者は必ずや裁くのが掟。彼等二人も例外でない」
「いや――三人だと、おじさんは思うなー」
 一閃。
 薄暗い室内に火花が奔ると、暗器が床に転がった。
「ふむ」
 象山の呟きは、得物を叩き落されるや否や、宙吊りのまま天井を滑って退いた柚木ではなく、ガンブレードへ瞬時に変成したデスペルタルを構え、自身を狙う多聞への感嘆である。
「なっ、なぜ正体が……!? 暗示までかけていたのに……!」
 クモさながらに壁を捉え、柚木が喚いた。
「腐れ縁、ってやつかね。地獄大公さん」
 多聞がウインクを飛ばすと、翡翠色の魔力縄が彼女を拘束する。
「大切な部下を乗っとってくれたことは追々おしおきするとして、悪魔ばらいの前にまずは君ほどの魔界的有名人が象山くんに肩入れしているわけを教えてくれるかな」
 問われたベリアルは肩を震わせ、高笑いを響かせた。


「ふふ……人間って意外と死なねーんだな」
 咄嗟に魔法陣を張っていなければ、信雄は細切れになっていただろう。いや、障壁が破られた以上、次こそ即死は免れない。
「強がっとる場合か! ここは吾輩が――」
「いや、まだ終わっちゃいない。剣(こころ)が折れない限りは負けじゃねーよ。人間の相手は――――」
 カルタグラを持ち直し、
「人間がするさ」
  彼は言い放った。
「ベルゼブブ、ここは彼を信じよう。ぼくたちの相手はあっちだ」
 桜花がガンランスと化したデスペルタルで指した先には、またも十は下らない新手。
「むぅ、人づかいが荒いのう」
 愚痴をこぼしつつも、自分から彼女に憑依する。
「まったく――――」
 深緑の燐光を発しながら、桜花は苦笑いを浮かべた。
「きみ、人じゃないでしょ……ッ!」
 翼を得たかの如く、華麗に天へと舞い上がる。
「な……ッ!?」

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