討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

文字の大きさ
上 下
43 / 139

† 七の罪――劫火、日輪をも灼き尽くし(陸)

しおりを挟む

「……もう追いつくとは、流石だな」
 流れるようにビルの屋上を跳びながら、背後の気配に茅原が呼びかける。
「お戯れを。名残惜しさがその走りを遅めているのではなくて?」
 横につき、妖艶に微笑んで顔を覗き込む柚木。
「もっとも――お前がその気になっていれば、どのみち既に鬼遊びは終わっていたさ」
「……お試しになりますか?」
「フン、人生で会えるとも思っていなかった化け物とやり合った後だ。体を労わるとするわ」
 並走する彼女を気にも留めない。
「まだまだ余裕があるように見受けられましたけど?」
「それは奴も同じだろう。それとも、俺の暴れっぷりに文句があるとでも?」
「滅相もない。十分な戦いをなさりましたよ。そう……十分すぎるぐらいに、ね」
 淫靡な目つきで革命者を流し見ると、柚木は正面に広がる地平線へと視線を移した。


               † † † † † † †


「しっかし不思議だな。こんだけの力を持った連中を何百人も使ってたら、誰かしら反乱を起こしてもおかしくねーと思うが……さすがに上も妖屠の弱点ぐらいご存知なんすかね」
 いつだろう。こんなことを多聞さんに聞いたっけ。
「さあねー。ま、対策してないってなら、たとえ盾つかれても潰せるだけの力をお上も持ってるってことだろうさ」
 彼は気怠そうに、ライターを取り出した。
「誰も勝てなかったか、それとも、挑まなかったのか――――」
「すくなくとも、僕の知る限りそんなバカげたことする人はいなかったなー」
 咥えかけた煙草を遠ざけ、おもむろに多聞さんは続ける。
「……信雄。お前は死に急ぐなよ」
 そう口にした彼の背中は相変わらず大きく、それでいて、どことなく哀しさを湛えているようだった。
「心配ご無用。奪ってきた命の分まで生きるなんて殊勝な心がけはしてねーけど、俺しぶといんで! そうそうくたばりゃしませんって」
 俺の返事を聞いた多聞さんが、どう言ったかは思い出せない。ただ、ほっとしたような顔をしていた気がする。

(――そうだ。俺は……生き続けてやるよ)

 俺が瞼を開けると、サンタの格好をしたルシファーと目が合った。もう少し寝ていたほうが良かったかもしれない。

「メリクリ」

 こんなに涼しい声のメリクリを耳にしたのは初めてだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

俺の娘、チョロインじゃん!

ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ? 乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……? 男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?  アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね? ざまぁされること必至じゃね? でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん! 「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」 余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた! え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ! 【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

帰らずの森のある騒動記   (旧 少女が魔女になったのは)

志位斗 茂家波
ファンタジー
平凡だったけど、皆が幸せに暮らしていた小国があった。 けれどもある日、大国の手によって攻められ、その国は滅びてしまった。 それから捕えられ、とある森にその国の王女だった少女が放置されるが、それはとある出会いのきっかけになった‥‥‥ ・・・・・ちょっと短め。構想中の新たな連載物の過去話予定。 人気のある無しに関わらず、その連載ができるまでは公開予定。ちまちまと別視点での話を更新したりするかも。 2018/01/18 旧「少女が魔女になったのは」 変更し、「帰らずの森のある騒動記」にしました。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
ブラック企業に勤めてたのがいつの間にか死んでたっぽい。気がつくと異世界の伯爵令嬢(第五子で三女)に転生していた。前世働き過ぎだったから今世はニートになろう、そう決めた私ことマリアージュ・キャンディの奮闘記。 ※この小説はフィクションです。実在の国や人物、団体などとは関係ありません。 ※2020-01-16より執筆開始。

処理中です...