討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

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† 四の罪――現世(うつしよ)の邂逅(肆)

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「ほら、この前さ、同級生を見かけたら親子連れで……やっぱ憧れるよねー。いや、まあ僕だってこの仕事じゃなかったら、選り取りみどりでとっくに美女とゴールインしてるけどね」
「ま、こいつよりは望みあるんじゃないすかね」
 口を閉ざしたまま多聞さんを凝視している三条の肩に、手を乗せた。
「き……きみだって似たようなものでしょ! って、勝手にさわらないで。今の犯罪だよ」
「軽くポンってしただけじゃねーか。くっそ、どうせ犯罪になんなら胸にしときゃ良かった……」
「やっぱり下心あるじゃん。法廷で会おう!」
「あんた法廷がどんだけ大変か知ってんのかよ」
「そういうそっちこそ知ってるの?」
 繰り広げられる不毛な攻防を、ベルゼブブは楽しげに眺めている。
「おお、なんだかとても愉快なのだ。そちたちは仲が良いのだな」
「……これ見てそう思えんなら、愉快なのはあんたの脳内だと思うぜ」


 夜も更け、三条の部屋で輪になって腰を下ろしている三人と一匹。
「つまり、桜花くんは力を欲するあまり、魂を対価にベルゼブブを召喚した、と。いちおう成功はしたみたいだけど、さすがに一から自分でやったわけじゃなく、アジトの最深部に高位の悪魔を召喚したと思われる術式の痕が隠されてて、霊脈にも沿っていたから流用したんだね」
 灯台下暗し、か。信じ難いことだが、初の悪魔召喚で地獄トップツーがこうもポンポンと出てきてくれる、なんて方が考えにくい。
「現場の状況が気になるところだけど、この件に深入りするのは危なそうだから、しばらくは見なかったことにしたほうがいい。で、これからは彼女?をパートナーとするつもりかな? 正式に契約していないとはいえ、この部屋の汚染されっぷりは見ての通りだ。これほどの大物と、呑み込まれることなくやってゆけるのかい?」
「なっ……にゃにを申すか! 魔軍の長たる吾輩がこのような小娘ふぜいに仕えるとでも?」
 うとうとしていたベルゼブブが、たどたどしい呂律で割り込む。
「きみのほうが子どもっぽく見えるじゃん」
 眉尻を下げて呆れる三条が言いたいのは、主に胸のボリューム的な意味だろうか。
「たわけが! 吾輩に命じることができるのはご主人さま、ただ一人! 召喚に応じてやったのも、ご主人さまがこちらに来ておるがゆえ。この者の魂なぞいらん! さあ、はよご主人さまを出すのだ」
 出し入れする方法があるのなら、俺も知りたいぐらいだ。
「そーいや多聞さん、さっきこの仕事じゃなかったらって……軍隊にいたときはどうだったんすか?」
 話題を変えたかったのと、ふとした疑問から、俺は悪気もなく口にしてしまった。
「の、信ッ……そ、その話は――」

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