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2章:ダンジョン調査編 〜未知の法則を探る〜
第11話:洞窟の構造と成虫の脱出経路
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成虫型の魔物を迎え撃ったあの夜から、二日が経った。魔物はそれ以来一体も現れていない。
ファシムたちによる監視網は崩れていないし、出現地点に異常もない。それなのに、魔物は現れない。
「……何があった?」
俺はファシムを連れて、洞窟の奥へと足を踏み入れた。
あの戦いで魔物の出現地点を一部まで絞り込めたことと、火を用いた防衛策が効果的だったこと。そして、何よりも——戦いが突然終わったという事実が、今も頭から離れない。
道中には焼け焦げたサナギの灰が点々と残っている。ファシムが処理した痕跡だ。だが、それよりも目を引いたのは、空になったサナギの“殻”だった。
「……残骸、か?」
見た目はサナギそのもの。だが、内部は完全に空洞。死骸とは違い、まるで羽化を終えて抜け出たかのような形をしている。
「こいつら……すでに孵化して、飛び立った……?」
ファシムと共に進みながら、奥の壁を見上げたときだった。
「上に……穴がある」
岩肌の高所に、縦に裂けたような隙間が空いている。光がわずかに差し込み、そこから風が吹き込んでくる。
俺は驚きに言葉を失った。
「……外に、繋がってるのか?」
ファシムの一体を指示してその穴へ向かわせる。慎重に登っていったファシムは、やがて報告を返してきた。
その際、縦穴の周囲には羽の破片や粘着質の液体がこびりついていたという。壁面には鋭利な爪痕のような擦過も残されており、つい最近まで多くの成虫がこの隙間を通っていたことがうかがえる。
「外気を確認。天井部の隙間は、成虫が通り抜け可能な広さを持つ。」
それだけではない。風の音に混じって、かすかに何かの鳴き声のような音が聞こえたという。洞窟の外には、生き物がいる。そして、それは成虫とは別の何かかもしれない。
穴の向こうには、光と木の影が揺れていた。空は曇っていて、灰色の雲が遠くまで広がっているという。
「ってことは、あいつらはここから外へ……」
俺は頭を抱えた。魔物たちが洞窟という枠を超えて、森の中へと拡散している可能性。それは、これまで以上に脅威の範囲が広がることを意味していた。
「こいつらは……巣から出ていったんだ」
それに……
「……あのファシムがやられたのは、この出口から戻ってきた成虫に襲われた可能性もある」
餌を求めて再び洞窟に戻ってきたのだとしたら、外にいる成虫たちも、完全に出て行ったわけではないのかもしれない。
巣を捨てたのではなく、必要に応じて戻ることすらあるとしたら——
空になったサナギの殻が、まだ幾つも残されている。その一つひとつが、既に飛び立った成虫の痕跡だとすれば——
その数は、計り知れない。
「まずいな……これは」
状況は一旦落ち着いている。だが、それは嵐の前の静けさかもしれない。
俺はファシムたちに命じ、残っていたサナギを改めて火で焼却させた。焼き焦げた繭はぱちぱちと音を立てながら炭と化し、成虫へ進化する前に完全に消える。
これが間に合っていなければ、さらに多くの成虫が飛び立っていたに違いない。
「……間に合ったんだろうか」
不安は消えない。だが、これ以上手の打ちようもない。
拠点に戻った俺は、ファシムのひとりを新たに生成し、探索の補助につける。今後、洞窟の隅々まで調べ直す必要がある。
「ここは閉じた空間じゃない。外と……繋がってる」
今まで俺が見てきた“世界”が、小さな洞窟の中だけではないという事実。知らなかった。考えたことすらなかった。
「外には……何がある?」
森、空、他の生き物。そして、もしかすると——人間。
そんな考えが、ふと頭をよぎった。
《現在のファシム数:8体(新たに1体生成)》
1体:洞窟の入り口で監視
2体:洞窟の奥の探索(縦穴調査含む)
2体:魔物の討伐と出現監視
2体:サナギ処理(火を使用)
1体:水汲み
ファシムたちによる監視網は崩れていないし、出現地点に異常もない。それなのに、魔物は現れない。
「……何があった?」
俺はファシムを連れて、洞窟の奥へと足を踏み入れた。
あの戦いで魔物の出現地点を一部まで絞り込めたことと、火を用いた防衛策が効果的だったこと。そして、何よりも——戦いが突然終わったという事実が、今も頭から離れない。
道中には焼け焦げたサナギの灰が点々と残っている。ファシムが処理した痕跡だ。だが、それよりも目を引いたのは、空になったサナギの“殻”だった。
「……残骸、か?」
見た目はサナギそのもの。だが、内部は完全に空洞。死骸とは違い、まるで羽化を終えて抜け出たかのような形をしている。
「こいつら……すでに孵化して、飛び立った……?」
ファシムと共に進みながら、奥の壁を見上げたときだった。
「上に……穴がある」
岩肌の高所に、縦に裂けたような隙間が空いている。光がわずかに差し込み、そこから風が吹き込んでくる。
俺は驚きに言葉を失った。
「……外に、繋がってるのか?」
ファシムの一体を指示してその穴へ向かわせる。慎重に登っていったファシムは、やがて報告を返してきた。
その際、縦穴の周囲には羽の破片や粘着質の液体がこびりついていたという。壁面には鋭利な爪痕のような擦過も残されており、つい最近まで多くの成虫がこの隙間を通っていたことがうかがえる。
「外気を確認。天井部の隙間は、成虫が通り抜け可能な広さを持つ。」
それだけではない。風の音に混じって、かすかに何かの鳴き声のような音が聞こえたという。洞窟の外には、生き物がいる。そして、それは成虫とは別の何かかもしれない。
穴の向こうには、光と木の影が揺れていた。空は曇っていて、灰色の雲が遠くまで広がっているという。
「ってことは、あいつらはここから外へ……」
俺は頭を抱えた。魔物たちが洞窟という枠を超えて、森の中へと拡散している可能性。それは、これまで以上に脅威の範囲が広がることを意味していた。
「こいつらは……巣から出ていったんだ」
それに……
「……あのファシムがやられたのは、この出口から戻ってきた成虫に襲われた可能性もある」
餌を求めて再び洞窟に戻ってきたのだとしたら、外にいる成虫たちも、完全に出て行ったわけではないのかもしれない。
巣を捨てたのではなく、必要に応じて戻ることすらあるとしたら——
空になったサナギの殻が、まだ幾つも残されている。その一つひとつが、既に飛び立った成虫の痕跡だとすれば——
その数は、計り知れない。
「まずいな……これは」
状況は一旦落ち着いている。だが、それは嵐の前の静けさかもしれない。
俺はファシムたちに命じ、残っていたサナギを改めて火で焼却させた。焼き焦げた繭はぱちぱちと音を立てながら炭と化し、成虫へ進化する前に完全に消える。
これが間に合っていなければ、さらに多くの成虫が飛び立っていたに違いない。
「……間に合ったんだろうか」
不安は消えない。だが、これ以上手の打ちようもない。
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「外には……何がある?」
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そんな考えが、ふと頭をよぎった。
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