「影の都市」

第1章: 影の都市への旅

第5話 旅立ちの準備

朝の光が薄く、まだ霧が立ち込める中、レイナは村の外れにある家の前で準備を整えていた。彼女の目の前には、家族から受け継いだ古びた魔法の道具が整然と並んでいる。これらの道具は、彼女の家族が長い間使ってきたもので、今や彼女にとっては唯一無二の宝物であった。中でも、彼女の母が使っていた青いクリスタルが特に重要で、強力な魔法を発揮するための鍵となる。

レイナは慎重にそれらの道具をバッグに詰め込み、最後の確認を行った。手にしたのは、彼女が幼い頃からずっと使っていた小さな魔法の杖で、その先端には家族の紋章が刻まれている。これからの旅のために、彼女はこの杖を手放すことはないだろうと、強い決意を持っていた。

村の生き残りたちが、彼女を見守る中で、レイナは一人一人に別れを告げた。彼女の目には涙が浮かび、言葉が詰まることもあったが、村の人々の励ましと共に、彼女は自分の使命を果たす決意を固めていた。誰もが彼女の無事を祈り、無言のまま見守っている。

レイナが村を離れる準備を進める中、彼女は逃げ延びた村人たちと偶然再会することとなった。これらの人々は、混乱の中で村から逃げ出し、今は近くの森に避難していた。彼らは目の前に現れたレイナを見て驚き、彼女の安否を確認しようとした。

「レイナさん、無事だったんですね！」と、村の青年が声を上げる。

「はい、でも私はこれから影の都市に向かいます。」レイナは決意を込めて言った。「あなたたちはここでしばらく安全に過ごしてください。」

村人たちは彼女の言葉に頷き、彼女の勇気に感謝の意を示した。彼女の心には、一層強い使命感が湧き上がり、この旅が決して無駄にはならないと信じる気持ちが深まった。

レイナが村を去る準備を整えたその時、村の長老が彼女に近づいてきた。長老の顔には複雑な感情が浮かんでおり、期待と不安が入り混じっているのが見て取れた。彼は静かにレイナに手渡された巻物のような地図を差し出した。

「これは影の都市への道の地図だ。」長老は低い声で言った。「この道を辿れば、影の都市へとたどり着くことができるだろう。ただし、その道のりは非常に危険だ。お前の家族のように、無事に帰ってくることを祈っている。」

レイナは地図を受け取り、長老の言葉を心に刻んだ。彼女の心は固く、影の都市に向かう決意を新たにしていた。

「ありがとうございます、長老。必ず、影の都市を解放します。」レイナは力強く応じた。

長老は彼女の肩に手を置き、その目には深い愛情と同時に、彼女に対する不安も見えた。レイナはその手の温もりを感じながら、村の長老に最後の別れを告げ、影の都市への旅を始めるために足を踏み出した。