60 / 62
59話 白夜の終わり
しおりを挟む
「これがレベルプラチナ。人間と堕天使の融合ともいえる力だ」
灰色とも銀色とも取れるそのオーラからは凄まじいプレッシャーを感じる。
「さあ、魔剣フルレを返してもらおうか」
プラチナと呼ぶオーラを纏い、先ほどまでの所有者である御堂の傍に佇む魔剣を奴は手にする。その蒼色に輝く剣を恍惚な目で眺めながら、
「君を排除すれば、この世界は私のものになるな」
バルサロッサは地を蹴って向かってきた。
速い!
僕は即座に応戦する。
「地獄の炎斬ヘルスパーダ!」
業火の斬撃の後には、奴の姿が消えていた。躱したのかと思った瞬間、無数の黒炎弾が僕を襲う。すかさず飛んでそれをやり過ごしたが、左の肩に鋭敏な衝撃を感じた。
バルサロッサの空中での胴回し回転蹴りだ。
僕は地面に急降下するが、
「ぐっ!」
叩きつけられる寸前になんとかとどまった。地面に激突するダメージは避けられた。
奴は余裕の笑みを浮かべて、僕の眼前に降り立つ。
左肩に痛みが走る。かまいたちにでも裂かれたような切り傷がいくつかできていた。
「肩とはいえ、緑風の旋風脚をくらって、その程度のダメージとはさすがゴールドの魔装ですね」
強い! おそらく、今の僕と互角以上の魔力を秘めている。余裕の笑みはそこからくるものだろう。
しかし、ここでバルサロッサを倒さなければ本当にこの世界は奴の手に……。
「うおおおおお!」
僕は魔装全開でイフリートを携え、奴へ飛び出した。黄金色のオーラを放ちながら。
バルサロッサは魔剣を手に構えた。
僕と奴は大地から空中へと移動しながら、数合打ちあう。いや、正確には奴が僕の攻撃を捌いている。もちろん、お互い魔装させているので、接触のたびに大きな光がまだ薄暗い辺りを照らすように飛び散る。
「ははは、なかなかの剣技じゃないか! 学園で練度したのかな!?」
確かに奴の言う通りだ。学園で体術以外も、ある程度の武器の扱いはする。なぜなら、いつか悪魔の極みであるレベルレッドになれることを夢見て。
「うおらぁ!」
「気迫は認めますが、当たらなければ意味がないですよ」
「くっ!」
僕はイフリートの業火の斬撃を幾度も繰り出すが、奴にはヒットしない。奴と再び数合打ち合う。
しかし、徐々に後手後手に回り、奴の斬撃を受け止めるのが精一杯になってくる。
次の瞬間、バルサロッサは僕の剣を自分の剣で絡め取るように弾き飛ばした。
「しまった!」
「これまでだ……」
バルサロッサは両手で剣を握り、力一杯振り下ろす。刹那の出来事で防ぎようがない。
ごめん、リン……みんなを守れなくて……。
僕は覚悟した時、身体からなにかが抜け出すような感覚に捉われた。
次の瞬間、魔剣フルレによる氷の斬撃を数え切れないほどの黒い蝶が受け止めるように舞っていた。
「なに!?」
バルサロッサは驚きから目を見開いた。
その黒蝶は僕がよく知るものだった。
「ここよ!」
そう彼女の声が聞こえた気がした。
僕はすべての魔力を右手に込める。得意の雷系魔法の発勁での一撃。
「赤御雷アカミカヅチ!」
紅の閃光がバルサロッサを貫く。その刹那、奴の身体から電撃が迸る。
「ぐあああああぁぁぁぁ!!!!!……そんな……私が……こん……な所で」
そう言葉を残し、奴は数秒後、黒い塵と化した。
「はあはあはあ」
…………やったのか……。
そうだ! さっきの黒蝶はリンが! リンはもしかしたら、生きてるんじゃないのか!? 淡い期待を膨らませて彼女の元へと向かう。
しかし、期待はあっさりと裏切られ、倒れているはずの場所に彼女の姿は忽然と消えていた……。
そうか……あの黒蝶は僕を守る為にリンが空間魔法であの別れる際に施してくれたものだったのだ。
僕は一人、その場で立ち尽くした。
白夜はやがて終わりを告げ、長い夢から覚めるように陽が登り始める。僕の心はぽっかりと穴が開いたまま……。
灰色とも銀色とも取れるそのオーラからは凄まじいプレッシャーを感じる。
「さあ、魔剣フルレを返してもらおうか」
プラチナと呼ぶオーラを纏い、先ほどまでの所有者である御堂の傍に佇む魔剣を奴は手にする。その蒼色に輝く剣を恍惚な目で眺めながら、
「君を排除すれば、この世界は私のものになるな」
バルサロッサは地を蹴って向かってきた。
速い!
僕は即座に応戦する。
「地獄の炎斬ヘルスパーダ!」
業火の斬撃の後には、奴の姿が消えていた。躱したのかと思った瞬間、無数の黒炎弾が僕を襲う。すかさず飛んでそれをやり過ごしたが、左の肩に鋭敏な衝撃を感じた。
バルサロッサの空中での胴回し回転蹴りだ。
僕は地面に急降下するが、
「ぐっ!」
叩きつけられる寸前になんとかとどまった。地面に激突するダメージは避けられた。
奴は余裕の笑みを浮かべて、僕の眼前に降り立つ。
左肩に痛みが走る。かまいたちにでも裂かれたような切り傷がいくつかできていた。
「肩とはいえ、緑風の旋風脚をくらって、その程度のダメージとはさすがゴールドの魔装ですね」
強い! おそらく、今の僕と互角以上の魔力を秘めている。余裕の笑みはそこからくるものだろう。
しかし、ここでバルサロッサを倒さなければ本当にこの世界は奴の手に……。
「うおおおおお!」
僕は魔装全開でイフリートを携え、奴へ飛び出した。黄金色のオーラを放ちながら。
バルサロッサは魔剣を手に構えた。
僕と奴は大地から空中へと移動しながら、数合打ちあう。いや、正確には奴が僕の攻撃を捌いている。もちろん、お互い魔装させているので、接触のたびに大きな光がまだ薄暗い辺りを照らすように飛び散る。
「ははは、なかなかの剣技じゃないか! 学園で練度したのかな!?」
確かに奴の言う通りだ。学園で体術以外も、ある程度の武器の扱いはする。なぜなら、いつか悪魔の極みであるレベルレッドになれることを夢見て。
「うおらぁ!」
「気迫は認めますが、当たらなければ意味がないですよ」
「くっ!」
僕はイフリートの業火の斬撃を幾度も繰り出すが、奴にはヒットしない。奴と再び数合打ち合う。
しかし、徐々に後手後手に回り、奴の斬撃を受け止めるのが精一杯になってくる。
次の瞬間、バルサロッサは僕の剣を自分の剣で絡め取るように弾き飛ばした。
「しまった!」
「これまでだ……」
バルサロッサは両手で剣を握り、力一杯振り下ろす。刹那の出来事で防ぎようがない。
ごめん、リン……みんなを守れなくて……。
僕は覚悟した時、身体からなにかが抜け出すような感覚に捉われた。
次の瞬間、魔剣フルレによる氷の斬撃を数え切れないほどの黒い蝶が受け止めるように舞っていた。
「なに!?」
バルサロッサは驚きから目を見開いた。
その黒蝶は僕がよく知るものだった。
「ここよ!」
そう彼女の声が聞こえた気がした。
僕はすべての魔力を右手に込める。得意の雷系魔法の発勁での一撃。
「赤御雷アカミカヅチ!」
紅の閃光がバルサロッサを貫く。その刹那、奴の身体から電撃が迸る。
「ぐあああああぁぁぁぁ!!!!!……そんな……私が……こん……な所で」
そう言葉を残し、奴は数秒後、黒い塵と化した。
「はあはあはあ」
…………やったのか……。
そうだ! さっきの黒蝶はリンが! リンはもしかしたら、生きてるんじゃないのか!? 淡い期待を膨らませて彼女の元へと向かう。
しかし、期待はあっさりと裏切られ、倒れているはずの場所に彼女の姿は忽然と消えていた……。
そうか……あの黒蝶は僕を守る為にリンが空間魔法であの別れる際に施してくれたものだったのだ。
僕は一人、その場で立ち尽くした。
白夜はやがて終わりを告げ、長い夢から覚めるように陽が登り始める。僕の心はぽっかりと穴が開いたまま……。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました
結城芙由奈
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】
20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ――
※他サイトでも投稿中
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
異世界に来たからといってヒロインとは限らない
あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理!
ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※
ファンタジー小説大賞結果発表!!!
\9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/
(嬉しかったので自慢します)
書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン)
変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします!
(誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願
※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。
* * *
やってきました、異世界。
学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。
いえ、今でも懐かしく読んでます。
好きですよ?異世界転移&転生モノ。
だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね?
『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。
実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。
でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。
モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ?
帰る方法を探して四苦八苦?
はてさて帰る事ができるかな…
アラフォー女のドタバタ劇…?かな…?
***********************
基本、ノリと勢いで書いてます。
どこかで見たような展開かも知れません。
暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる