壮絶無慈悲ないじめを体験した僕の魔界転生譚

陽 碧空

文字の大きさ
上 下
51 / 62

50話 仲間

しおりを挟む
「お前に殺されそうになって、絶望していた俺をこんな楽しい世界に誘ってくれたバルサ様に感謝してるんだ」

 この世界でも、僕は奴……御堂テシマに支配されるのか……。
 そう思うと、物凄い速さで僕の心は恐怖に埋め尽くされ、自然と息が荒くなる。

「はあはあはあはあはあ」

「アレル!」

 うずくまる僕にミランの心配そうに叫ぶ声が聞こえる。

「はあはあはっはっはっはっはっ」

 苦しくてなにも考えられない。

「落ち着いて、アレル。ゆっくり呼吸をするのよ。何も怖くないわ」

 ミランの優しい声かけに僕はなんとか頷く。

「姐さん、アレルどないしたんや?」

 ルンが心配そうに僕をみつめる。ノーファもエルナも同様だ。

「あいつはアレルの因縁浅はかならぬ相手なのよ」

 どうしてミランはそれを知っているんだろう。

「それで過呼吸になっているんですの? よほどのことですわ」
「アレルの敵……私があいつを排除する」

 ノーファが怒りを込めてそう言った。

「いえ、奴はレベルレッド、あいつはあたしがやるわ」

 ミランの尾が赤く輝く。

「エルナ、バルサロッサはあんたに任せるわ。さっさとあいつを倒して加勢に向かうから辛抱して」
「そんな心配無用ですの。ミランさんが来る前に、事は終わらしておきますの」
「ノーファはベルリッタを抑え込んで」
「御意」
「ルン! あんたはアレルが回復するまで、守ってあげて。兵隊は必ず、無防備なアレルを狙ってくるわ」
「姐様の頼みならしゃーないな。いっちょ、気合い入れたるか! アレル、うちが守ったるから、大船に乗った気でいてええで!」

 僕は治まらない過呼吸の中、なんとか言葉を絞り出す。

「はっはっはっ、みっはっんっなっはっはあはあごっめっはあはあ、んっ」

 全員が優しい笑みで首を横に振る。
 そして、ミランが僕の耳元で囁く。

「アレルは必ずあたしが守るから」
「なんだ!?  なにもしてないのにそのザマは! 神月ぃ~はっはっは!」

 バカにしたような笑みを浮かべる御堂に対して、ミランは僕を守るように前に立ちはだかり、

「あんただけは……許さない!」

 彼女はそう憎しみのようなものを込めて言い放ち、御堂テシマに向かっていった。

 白夜による薄明の中、所々で爆発音が鳴り響き、様々な魔法と魔装の光が大地と空で散りばめられている。
 みんなが戦っているというのに、情けない話だが、まだ僕の呼吸は定まっていなかった。

「でやあ! とりゃあ! ふん!」

 ルンが僕の周りで飛び交っている。迫り来る敵から僕を守るために。
 クルクルと回転ジャンプしながら、うずくまる僕の隣にルンは降り立った。

「どないや? アレル」
「少し、はあ、ましになってきた。はあ」
「そうか。しかし、次から次へと、おっと、空圧反射壁(エアリフレクト)!」

 エアリフレクト……空気を圧縮した壁が術者周辺を囲む魔法。

 兵隊数名が魔法で風の塊を飛ばしてきたが、ルンのエアリフレクトで弾かれた。弾かれた塊は奴らに還っていく。

「へん! そんなん喰らうかっちゅうねん!」

 ドヤ顔のおてんばお姫様。ブルーの兵隊を寄せ付けない強さはさすがレベルグリーンだけはある。だが、多勢に無勢すぎる。
 くそっ! 僕が戦えれば……。徐々に楽にはなっているが、治りきらない過呼吸に心中ヤキモキする。
 僕のそんな表情を読み取ってか、ルンが言葉を投げかける。

「大丈夫や! うちが守ったるさかいに。あんたは焦らんでええ」
「ありがとう……すぅはあ」
「な、仲間やからな」

 ツインテールのおてんば姫はそう言うと、恥ずかし気に目をそらし、頬を赤らめた。
 その時だった。一筋の白い閃光がルンを貫いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

この世界で唯一『スキル合成』の能力を持っていた件

なかの
ファンタジー
異世界に転生した僕。 そこで与えられたのは、この世界ただ一人だけが持つ、ユニークスキル『スキル合成 - シンセサイズ』だった。 このユニークスキルを武器にこの世界を無双していく。 【web累計100万PV突破!】 著/イラスト なかの

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

処理中です...