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47話 不敵なベルリッタ
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「ベルリッタ!」
奴を知る僕、ミラン、ノーファが口を揃えた。
「はぁ~い、久しぶりぃ~!」
ベルリッタは旧友にも会ったかのような口ぶりで、気味の悪い笑みを浮かべた。
戦場にもかかわらず、なんだこの余裕は……。
「なんやねん、あの気持ち悪い奴は」
ルンが顔をしかめて呟く。
全員がベルリッタの不気味な空気を感じ、仲間同士、僕らは目配せする。
「バルサ様の読み通りだったわねぇ」
読み通りだと!?
「何が読み通りなのかしら? さっきから、あたし達がここに来ることがわかってたみたいな口ぶりね」
ミランは鋭い眼光で奴を睨みつける。
ベルリッタはそれをいなすように、緊張感がない様子で、
「ふふっ、そうよぉ~。あなた達、ダーマで暴れたでしょお? あの辺りの地区を任せてたジェルクから定期連絡がなくなったからねぇ~」
……僕のせいだ……僕のわがままで奴らは僕たちが来るのを察知したのだ。だからこんなにも敵が多いのだ……。僕はみんなを危険に晒してしまったのか。
「……アレル、あんただけの責任じゃないわ。そんな顔しないで。それにパルラ達を助けたのは後悔してないでしょ」
こうなることも予想していたのか、ミランが僕の苦悩に満ちた表情を見て、優しい言葉をかける。
「後悔はしてないけど、みんなを危険に……」
「アレルのせいじゃない。みんなだって後悔してないわよ」
全員が口元に笑みを浮かべ頷いた。少し心が軽くなった感じがした。
「それにしても解せないわね。なんで奴らは、あたし達だと断定できたのか……」
確かにその通りだ。この隠密部隊は敵に察知されなかったはずだ。
「さあてと! グダグタ話してもしょうがないし、まず手始めにこいつらの相手をしてもらうわよぉ」
ベルリッタは指に挟んだ小瓶を二つ地面に投げつけた。
煙が立ち上って、そこに姿を現したのはかつて僕が対峙したことのある化け物だった。
二体の地獄の番犬ケルベロス。
向かって右のケルベロスの頭の上に降り立つベルリッタ。
「このコ達はバルサ様が天才的科学技術で量産にこぎつけたクローンのケルベロスよぉ」
「クローン……量産?」
ミランが問いかけるように呟いた。
「そうよぉ~、ミランちゃん。野生と違って、生まれた時から私たちの意のままに操れるのぉ。今回のエイジア、カメリア制圧にも多くのケルベロスを投入してるわぁ。早くあなたが戻らないとぉ、国はなくなるわよぉ」
そんな……レベルイエロー以上でようやく戦えるこの化け物を量産してるなんてやばいもんてものじゃないぞ。
「まあ戻ることなんてさせないけどねぇ、というよりかあなた達みんなここで死ぬんだから」
ベルリッタはいやらしく口角を上げる。
「ミランちゃん、バルサ様にとってあなたが一番邪魔だったのよぉ。戦になれば必ずといっていいほど、陣頭にいるはずのあなたがいないことでわかったのよねぇ。ジェルクの一件はあなただって。あなたがエイジアにいることで私達も手をこまねいていたけれどぉ、あなたから国を離れてくれてぇ、エイジアを攻め落とすのが随分楽になったわぁ。あなた達の作戦、墓穴を掘ってるのよねぇ」
馬鹿にした笑みをこぼすベルリッタ。
おそらく、ジェルクを倒せるほどの手練れはエイジア・カメリア軍にはそれほど多くはいない。それを踏んでの奴らの進軍……。
だが、奴らは見誤っていることがある。
「聖なる不死鳥(ホーリーフェニックス)」
青白い壮麗な鳳がエルナの手の平から生まれた。
「お行きなさい」
エルナが解き放った蒼白の鳳凰は一瞬にして、二体のケルベロスの首、すべてをその躯体で飲み込んだ。首を失った黒き魔獣は張りがない人形のように地響きを立て崩れ落ちた。
「わーお、お姉さんやるわねぇ」
瞬時に避難していたベルリッタが姿を現し、わざとらしく感心した様子で笑みを浮かべた。
「わたくしと同じ四天翼がエイジア、カメリアの防衛に当たっていますの」
エルナはベルリッタに冷ややかな視線を浴びせた。
「そうよ! だからあたしが抜けたところで簡単には両国とも落ちないわよ! あんた達の方が追い詰められてることに気がついたかしら?」
「ふふーん」
ミランの言葉に不敵に口角を上げるベルリッタ。
奴らにとって、この状況は誤算のはずだが、ベルリッタはどこか余裕の雰囲気を醸し出している。それが僕の中でジワリと不安を掻立てる。
「ここでバルサロッサを討ち取れば、あんた達もおしまいよ!」
「威勢がいいな、ミラン」
突如、ミランの言葉に反応した落ち着きのあるその声は、すべてを見透かされているような不気味さを帯びていた。
奴を知る僕、ミラン、ノーファが口を揃えた。
「はぁ~い、久しぶりぃ~!」
ベルリッタは旧友にも会ったかのような口ぶりで、気味の悪い笑みを浮かべた。
戦場にもかかわらず、なんだこの余裕は……。
「なんやねん、あの気持ち悪い奴は」
ルンが顔をしかめて呟く。
全員がベルリッタの不気味な空気を感じ、仲間同士、僕らは目配せする。
「バルサ様の読み通りだったわねぇ」
読み通りだと!?
「何が読み通りなのかしら? さっきから、あたし達がここに来ることがわかってたみたいな口ぶりね」
ミランは鋭い眼光で奴を睨みつける。
ベルリッタはそれをいなすように、緊張感がない様子で、
「ふふっ、そうよぉ~。あなた達、ダーマで暴れたでしょお? あの辺りの地区を任せてたジェルクから定期連絡がなくなったからねぇ~」
……僕のせいだ……僕のわがままで奴らは僕たちが来るのを察知したのだ。だからこんなにも敵が多いのだ……。僕はみんなを危険に晒してしまったのか。
「……アレル、あんただけの責任じゃないわ。そんな顔しないで。それにパルラ達を助けたのは後悔してないでしょ」
こうなることも予想していたのか、ミランが僕の苦悩に満ちた表情を見て、優しい言葉をかける。
「後悔はしてないけど、みんなを危険に……」
「アレルのせいじゃない。みんなだって後悔してないわよ」
全員が口元に笑みを浮かべ頷いた。少し心が軽くなった感じがした。
「それにしても解せないわね。なんで奴らは、あたし達だと断定できたのか……」
確かにその通りだ。この隠密部隊は敵に察知されなかったはずだ。
「さあてと! グダグタ話してもしょうがないし、まず手始めにこいつらの相手をしてもらうわよぉ」
ベルリッタは指に挟んだ小瓶を二つ地面に投げつけた。
煙が立ち上って、そこに姿を現したのはかつて僕が対峙したことのある化け物だった。
二体の地獄の番犬ケルベロス。
向かって右のケルベロスの頭の上に降り立つベルリッタ。
「このコ達はバルサ様が天才的科学技術で量産にこぎつけたクローンのケルベロスよぉ」
「クローン……量産?」
ミランが問いかけるように呟いた。
「そうよぉ~、ミランちゃん。野生と違って、生まれた時から私たちの意のままに操れるのぉ。今回のエイジア、カメリア制圧にも多くのケルベロスを投入してるわぁ。早くあなたが戻らないとぉ、国はなくなるわよぉ」
そんな……レベルイエロー以上でようやく戦えるこの化け物を量産してるなんてやばいもんてものじゃないぞ。
「まあ戻ることなんてさせないけどねぇ、というよりかあなた達みんなここで死ぬんだから」
ベルリッタはいやらしく口角を上げる。
「ミランちゃん、バルサ様にとってあなたが一番邪魔だったのよぉ。戦になれば必ずといっていいほど、陣頭にいるはずのあなたがいないことでわかったのよねぇ。ジェルクの一件はあなただって。あなたがエイジアにいることで私達も手をこまねいていたけれどぉ、あなたから国を離れてくれてぇ、エイジアを攻め落とすのが随分楽になったわぁ。あなた達の作戦、墓穴を掘ってるのよねぇ」
馬鹿にした笑みをこぼすベルリッタ。
おそらく、ジェルクを倒せるほどの手練れはエイジア・カメリア軍にはそれほど多くはいない。それを踏んでの奴らの進軍……。
だが、奴らは見誤っていることがある。
「聖なる不死鳥(ホーリーフェニックス)」
青白い壮麗な鳳がエルナの手の平から生まれた。
「お行きなさい」
エルナが解き放った蒼白の鳳凰は一瞬にして、二体のケルベロスの首、すべてをその躯体で飲み込んだ。首を失った黒き魔獣は張りがない人形のように地響きを立て崩れ落ちた。
「わーお、お姉さんやるわねぇ」
瞬時に避難していたベルリッタが姿を現し、わざとらしく感心した様子で笑みを浮かべた。
「わたくしと同じ四天翼がエイジア、カメリアの防衛に当たっていますの」
エルナはベルリッタに冷ややかな視線を浴びせた。
「そうよ! だからあたしが抜けたところで簡単には両国とも落ちないわよ! あんた達の方が追い詰められてることに気がついたかしら?」
「ふふーん」
ミランの言葉に不敵に口角を上げるベルリッタ。
奴らにとって、この状況は誤算のはずだが、ベルリッタはどこか余裕の雰囲気を醸し出している。それが僕の中でジワリと不安を掻立てる。
「ここでバルサロッサを討ち取れば、あんた達もおしまいよ!」
「威勢がいいな、ミラン」
突如、ミランの言葉に反応した落ち着きのあるその声は、すべてを見透かされているような不気味さを帯びていた。
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