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14話 三ツ首を落とせ
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「氷塊斬波(アイシクルスラッシュ)!」
リエラ先生が数多の氷の刃を放つ。
しかし、ケルベロスの左の首が炎のブレスを吐き、氷の刃をあっけなく無効化する。
「おう、リエラっち! やっと来たか!!」
そう言ったのは、肌が健康的な小麦色で髪の色は真っ黒ショートの見るからにボーイッシュな女性だ。
上下クリムゾンレッドのジャージを着た彼女の尻尾は黄色い。
この人、一人で戦っていたのか!? この化物相手に……いや一人になったのか……。魔犬の足元には二人倒れている。
「遅くなってごめん!」
「ああ、おっと! そのコがレベルイエローのアレルっちか!」
ケルベロスの鉤爪を躱しながら、僕の名前を可愛く呼ぶ。この化物相手によくそんな余裕があるな……。
ケルベロスの右首の氷柱混じりの猛吹雪のブレスを体操選手のような回転ジャンプをして避ける機敏な女性。こっちに着地を果たした。
「彼女は中等部主任、ロップ先生よ」
リエラ先生が紹介する。
「よろぴく!」
彼女はVサインを作る。
「レベルイエローが二人ならやれるかな!?ノンノンやってもらわなくては困るぞ。やらないと死ぬだけだぞ! アレルっち!」
いきなりヘヴィな要求をされそうだ。
「なにをやればいいんですか?」
「リエラっち、アレルっちに説明するから、少しの間、時間を稼いでほしいぞ」
リエラ先生はコクンと頷き、
「そんなにぃ~もたないから早くしてねぇ」
リエラ先生はいつもの口調に戻り、魔犬の気を引くために奴に攻撃をしかける。
「戦っていてわかったことなんだけど、レベルブルーの魔力ではダメージを与えられなかったんだぞ……僕っちの攻撃だけが有効だったんだぞ……イエロー以上の魔力ならあの化け物の魔装を打ち破ることができるみたいなんだぞ」
なるほど、だから僕が必要なのか。
「右首は氷の属性、左首は火の属性を持っているんだぞ。まず、その二首を同時に攻め落として、すぐに真ん中の首も落とさないと左右の首が再生してしまうんだぞ。さっきはそれで油断して、あっという間に二人がやられてしまったんだぞ。アレルっちは得意なのは火か氷どっち?」
僕が得意なのは雷系なんだけど……あえて言うなら……。
「火……ですかね」
「了解。じゃあ、僕っちは左を狙うことにするから、右は頼むんだぞ。それで、うまく首を落とせたら、真ん中の首を二人で狙うんだぞ!」
「わかりました」
「よし! リエラっち、さがっていいんだぞ!」
リエラ先生はこちらに目をやり、コクンと頷き、バックステップしてから、こちらに走ってくる。ケルベロスは案の定、彼女を追いかけてきた。
「よし、いくんだぞ!」
「はい!」
僕とロップ先生は魔犬へと駆け出す。
僕はリエラ先生とのすれ違い様に魔法を放つ。
狙いは右首。
「流星火焔(フレアメテオ)」
無数の火の玉が魔犬の右首を襲うが、奴は氷のブレスで相殺してきた。予想通りだ! 水蒸気が舞ったおかげで目眩ましになる。ここで一気に間合いを詰める。このスピードでいけば、奴に僕は捉えられないはず!
両手両足に炎を纏わせ、
「炎撃円舞(フレイムワルツ)!」
邪悪な顔面に炎の四連撃が炸裂する。
右首が消し炭と化した。
やった! ロップ先生は!?
左首の方に目をやると、彼女はお腹を押さえて、口から血を垂れ流している。
ケルベロスの左の首はなくなっているが、どうやら中央の奴に迎撃されたらしい。
「ロップ先生!」
彼女は弱々しい笑みを浮かべ、片手で『ごめん』というポーズを作って跪いた。
僕一人で他の首が再生される前に真ん中を倒さなければならない。
考えている暇はない……。
僕はジャンプして、蹴りを放とうとした。
しかし、その瞬間、奴の口が大きく開いた。
なにか来る!
咄嗟に身体を捻った。耳に轟音が鳴り響く。
間一髪躱せたが、爆風に飛ばされ宙をさまよう。奴の風を凝縮したブレスが地面に穴を開けたときの爆風で飛ばされたのだ。まともにくらっていたらカラダが消し飛んでいたかもしれない……背中に冷たいものが走った。
中央の首は風の属性か……奴が口から吐き出したのは風の塊……いや、竜巻きの塊みたいなものだ。
僕は一つ首になった魔犬から少し離れたところに着地した。
奴は追撃をしてこない。すでに僕らが落とした首が復元し始めている。そうか、奴は首が復元されるのを待っているんだ。
悠長に構えている暇はない。僕の残存魔力も残り少ない。復元されたらジ・エンドだ。
時間がないし、これといった策も思いつかないがやるしかない。
とりあえず、奴にブレスを吐き出させて、第二波が来る前に至近距離で攻撃しよう。
僕はまだ復元しきっていない一つ首の魔犬に駆け出しながら、遠距離から魔法を放つ。
「風圧砲(クードキャノン)!」
圧縮された風の塊が奴に向かう。魔犬も先ほどの風のブレスを吐き出した。二つの暴風の塊がうねりを上げてぶつかる!
「くっ!」
ここで相殺できれば……第二波までのタイムラグの間に奴に近づける!
「ぐぐっ!」
…………厳しい。奴のブレスの方が威力がある……このままでは押し負ける。
「このクソ犬め~!」
「アレルくん!」
その声と共に風がつん裂くような轟音が辺りに響き、暴風は相殺された。リエラ先生が風魔法で僕の風圧砲を後押ししてくれたのだ。
ここだ!
僕はこの機に再び、足に魔力を集中させて加速した。
魔犬の鉤爪が襲ってきたが、僕に当たる前に地面から氷が咲き凍結される。重傷を負いながらのロップ先生の魔法だ。
ナイスアシスト!
僕は残りの魔力を右腕に集中させる。
「うおおー雷轟拳(ライゴウケン)!!!」
ズドン!
……魔犬は三ツ首を失い、地響きを鳴らして崩れ落ちた。
「……やった……やりましたよ! 先生!」
僕は振り返り、ロップ先生は苦しそうだが親指を立て、リエラ先生は微笑んだ。
リエラ先生が数多の氷の刃を放つ。
しかし、ケルベロスの左の首が炎のブレスを吐き、氷の刃をあっけなく無効化する。
「おう、リエラっち! やっと来たか!!」
そう言ったのは、肌が健康的な小麦色で髪の色は真っ黒ショートの見るからにボーイッシュな女性だ。
上下クリムゾンレッドのジャージを着た彼女の尻尾は黄色い。
この人、一人で戦っていたのか!? この化物相手に……いや一人になったのか……。魔犬の足元には二人倒れている。
「遅くなってごめん!」
「ああ、おっと! そのコがレベルイエローのアレルっちか!」
ケルベロスの鉤爪を躱しながら、僕の名前を可愛く呼ぶ。この化物相手によくそんな余裕があるな……。
ケルベロスの右首の氷柱混じりの猛吹雪のブレスを体操選手のような回転ジャンプをして避ける機敏な女性。こっちに着地を果たした。
「彼女は中等部主任、ロップ先生よ」
リエラ先生が紹介する。
「よろぴく!」
彼女はVサインを作る。
「レベルイエローが二人ならやれるかな!?ノンノンやってもらわなくては困るぞ。やらないと死ぬだけだぞ! アレルっち!」
いきなりヘヴィな要求をされそうだ。
「なにをやればいいんですか?」
「リエラっち、アレルっちに説明するから、少しの間、時間を稼いでほしいぞ」
リエラ先生はコクンと頷き、
「そんなにぃ~もたないから早くしてねぇ」
リエラ先生はいつもの口調に戻り、魔犬の気を引くために奴に攻撃をしかける。
「戦っていてわかったことなんだけど、レベルブルーの魔力ではダメージを与えられなかったんだぞ……僕っちの攻撃だけが有効だったんだぞ……イエロー以上の魔力ならあの化け物の魔装を打ち破ることができるみたいなんだぞ」
なるほど、だから僕が必要なのか。
「右首は氷の属性、左首は火の属性を持っているんだぞ。まず、その二首を同時に攻め落として、すぐに真ん中の首も落とさないと左右の首が再生してしまうんだぞ。さっきはそれで油断して、あっという間に二人がやられてしまったんだぞ。アレルっちは得意なのは火か氷どっち?」
僕が得意なのは雷系なんだけど……あえて言うなら……。
「火……ですかね」
「了解。じゃあ、僕っちは左を狙うことにするから、右は頼むんだぞ。それで、うまく首を落とせたら、真ん中の首を二人で狙うんだぞ!」
「わかりました」
「よし! リエラっち、さがっていいんだぞ!」
リエラ先生はこちらに目をやり、コクンと頷き、バックステップしてから、こちらに走ってくる。ケルベロスは案の定、彼女を追いかけてきた。
「よし、いくんだぞ!」
「はい!」
僕とロップ先生は魔犬へと駆け出す。
僕はリエラ先生とのすれ違い様に魔法を放つ。
狙いは右首。
「流星火焔(フレアメテオ)」
無数の火の玉が魔犬の右首を襲うが、奴は氷のブレスで相殺してきた。予想通りだ! 水蒸気が舞ったおかげで目眩ましになる。ここで一気に間合いを詰める。このスピードでいけば、奴に僕は捉えられないはず!
両手両足に炎を纏わせ、
「炎撃円舞(フレイムワルツ)!」
邪悪な顔面に炎の四連撃が炸裂する。
右首が消し炭と化した。
やった! ロップ先生は!?
左首の方に目をやると、彼女はお腹を押さえて、口から血を垂れ流している。
ケルベロスの左の首はなくなっているが、どうやら中央の奴に迎撃されたらしい。
「ロップ先生!」
彼女は弱々しい笑みを浮かべ、片手で『ごめん』というポーズを作って跪いた。
僕一人で他の首が再生される前に真ん中を倒さなければならない。
考えている暇はない……。
僕はジャンプして、蹴りを放とうとした。
しかし、その瞬間、奴の口が大きく開いた。
なにか来る!
咄嗟に身体を捻った。耳に轟音が鳴り響く。
間一髪躱せたが、爆風に飛ばされ宙をさまよう。奴の風を凝縮したブレスが地面に穴を開けたときの爆風で飛ばされたのだ。まともにくらっていたらカラダが消し飛んでいたかもしれない……背中に冷たいものが走った。
中央の首は風の属性か……奴が口から吐き出したのは風の塊……いや、竜巻きの塊みたいなものだ。
僕は一つ首になった魔犬から少し離れたところに着地した。
奴は追撃をしてこない。すでに僕らが落とした首が復元し始めている。そうか、奴は首が復元されるのを待っているんだ。
悠長に構えている暇はない。僕の残存魔力も残り少ない。復元されたらジ・エンドだ。
時間がないし、これといった策も思いつかないがやるしかない。
とりあえず、奴にブレスを吐き出させて、第二波が来る前に至近距離で攻撃しよう。
僕はまだ復元しきっていない一つ首の魔犬に駆け出しながら、遠距離から魔法を放つ。
「風圧砲(クードキャノン)!」
圧縮された風の塊が奴に向かう。魔犬も先ほどの風のブレスを吐き出した。二つの暴風の塊がうねりを上げてぶつかる!
「くっ!」
ここで相殺できれば……第二波までのタイムラグの間に奴に近づける!
「ぐぐっ!」
…………厳しい。奴のブレスの方が威力がある……このままでは押し負ける。
「このクソ犬め~!」
「アレルくん!」
その声と共に風がつん裂くような轟音が辺りに響き、暴風は相殺された。リエラ先生が風魔法で僕の風圧砲を後押ししてくれたのだ。
ここだ!
僕はこの機に再び、足に魔力を集中させて加速した。
魔犬の鉤爪が襲ってきたが、僕に当たる前に地面から氷が咲き凍結される。重傷を負いながらのロップ先生の魔法だ。
ナイスアシスト!
僕は残りの魔力を右腕に集中させる。
「うおおー雷轟拳(ライゴウケン)!!!」
ズドン!
……魔犬は三ツ首を失い、地響きを鳴らして崩れ落ちた。
「……やった……やりましたよ! 先生!」
僕は振り返り、ロップ先生は苦しそうだが親指を立て、リエラ先生は微笑んだ。
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