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空元気で見送ってやった 5
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助手って?何の助手なのか分からないけど、それより気になる地下3階に下りてみたくて、中田に「お風呂に行って来ます 」と、一言。
「じゃ、スマホを持った方がいいよ」 隣の部屋から聞こえる。スマホはいつも持ってるから大丈夫と思いながら部屋を出ると、複雑すぎる廊下が行く手を遮る。
やたらとQRコードが張られていたのでスマホをかざしてみた。すると館内が分かる仕組み、建物の配置図のQRコードだ。 立ち止まった場所には電話機が添えてあり「ご案内希望の方は、お電話して下さればお迎えにまいります」そんなふうに書かれているのは笑えた、
がフロントに近づいたと思ったのに、同じ場所を堂々巡りをしていたようで焦ってしまう。 スマホの中で「411」「501」 書き込まれている部屋の数字が再び反映され、いつまで経っても行き着かないのは迷っている証拠でもあった。
それに部屋の番号が連番ではないので分かりにくい。 歩く廊下に取り付けられているカメラは防犯用なのだろうけど、彷徨う桃子を人間観察されているようにも思えて、自然体ではいられない。
仕方なく目的も果たせず部屋に戻り、中田に声を掛けた「お風呂、後にします・・」と。
そう告げると惚けたように「じゃ、風呂行って来るかな」「はーい」と、顔も見せずに声だけで応える桃子は空元気で見送ってやったが、風呂に向かう中田の背中が可笑しさを堪えているようで悔しかった。
中田は何度も来ているのか?迷う様子が無い。さっきの女将が「久しぶりです」なんて言ってるから、何度か通っている?・・女将と、どんな関係なのか気になる。
迷路のような配置図に目を通していると、どこの部屋もランダムな部屋の数字が書き込まれていているから、初めて来る人は迷う。
そして、今日の宿泊客はQRコードからも分かるようで満室となっていた。 桃子は部屋から出ることもなく、外を眺めているとタイムスリップしたような静観さが漂ってくるのを感じ取っていた。
パンフレットに敷地面積が8万坪と書かれていたのを思い出し、上空から見れば建物が異様な形にイメージできた。その光景は地上に張り付くエイリアンとも創造してしまう。
そういえば、中田の大学ノートの中に同じような絵が描いてあったのを思い出す。え!もしかして、この建築は中田が仕掛けたのか? 増築を繰り返しているうちに、何処までも伸びる迷路の廊下が、若者たちの人気になったのかと勝手な想像も生まれる。
・・
まだ明るさが残る食事前、中田が戻った音がしたので行ってみると浴衣に着替え「いい湯だったよ」と、外を見ている。
桃子が迷ったのを知ってるかのように微笑んでいる。そう思うと、この建築は中田が設計した建物に違いない。さっきの助手って言ったのは、建築の助手と言いたかったのだろう。つづく
「じゃ、スマホを持った方がいいよ」 隣の部屋から聞こえる。スマホはいつも持ってるから大丈夫と思いながら部屋を出ると、複雑すぎる廊下が行く手を遮る。
やたらとQRコードが張られていたのでスマホをかざしてみた。すると館内が分かる仕組み、建物の配置図のQRコードだ。 立ち止まった場所には電話機が添えてあり「ご案内希望の方は、お電話して下さればお迎えにまいります」そんなふうに書かれているのは笑えた、
がフロントに近づいたと思ったのに、同じ場所を堂々巡りをしていたようで焦ってしまう。 スマホの中で「411」「501」 書き込まれている部屋の数字が再び反映され、いつまで経っても行き着かないのは迷っている証拠でもあった。
それに部屋の番号が連番ではないので分かりにくい。 歩く廊下に取り付けられているカメラは防犯用なのだろうけど、彷徨う桃子を人間観察されているようにも思えて、自然体ではいられない。
仕方なく目的も果たせず部屋に戻り、中田に声を掛けた「お風呂、後にします・・」と。
そう告げると惚けたように「じゃ、風呂行って来るかな」「はーい」と、顔も見せずに声だけで応える桃子は空元気で見送ってやったが、風呂に向かう中田の背中が可笑しさを堪えているようで悔しかった。
中田は何度も来ているのか?迷う様子が無い。さっきの女将が「久しぶりです」なんて言ってるから、何度か通っている?・・女将と、どんな関係なのか気になる。
迷路のような配置図に目を通していると、どこの部屋もランダムな部屋の数字が書き込まれていているから、初めて来る人は迷う。
そして、今日の宿泊客はQRコードからも分かるようで満室となっていた。 桃子は部屋から出ることもなく、外を眺めているとタイムスリップしたような静観さが漂ってくるのを感じ取っていた。
パンフレットに敷地面積が8万坪と書かれていたのを思い出し、上空から見れば建物が異様な形にイメージできた。その光景は地上に張り付くエイリアンとも創造してしまう。
そういえば、中田の大学ノートの中に同じような絵が描いてあったのを思い出す。え!もしかして、この建築は中田が仕掛けたのか? 増築を繰り返しているうちに、何処までも伸びる迷路の廊下が、若者たちの人気になったのかと勝手な想像も生まれる。
・・
まだ明るさが残る食事前、中田が戻った音がしたので行ってみると浴衣に着替え「いい湯だったよ」と、外を見ている。
桃子が迷ったのを知ってるかのように微笑んでいる。そう思うと、この建築は中田が設計した建物に違いない。さっきの助手って言ったのは、建築の助手と言いたかったのだろう。つづく
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