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ワンカップのお父さん 2
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交差点では声掛けてくれても、木の根っ子に躓いたぐらいでは誰も声は掛けてくれないのだ。また桃子は「大丈夫?」と言わせたい女にも憧れる。そんなチヤホヤされたい願望もあった。
いっそのこと芸能人になればと思ってしまうが、そんなキラキラした才能など無いから騙されてAV女優が関の山だと、人の流れを追った。
・・
今日も夕方から駅前ベンチに座り人間観察。透明ガラス、慎重派はそこで止まり手探りする光景は、いたずら心の私を癒してくれる。
気が付いたことだけど真向かいのお父さんもワンカップ片手に、その光景をツマミにして楽しんでいるように感じる。
騙される人々、それをお父さんも楽しみに観ている?桃子と同じ人間観察が好きなようで、気持ちを高めているのだろうか。
そのお父さんの不自然な高ぶりを観ながら、桃子の人間観察は忙しくなってくる。ワンカップ片手のお父さんに声を掛けて貰いたいと思わないけど気になる存在でもあった。
それより立場を変えて桃子が向こう側、いうならばガラスドアにぶつかる犠牲者なら、どう反応するのかと考えるとドキドキする。その自分の発想の転換が面白くて立ち上がった。
ガラスドアにぶつかる事は知らないから、あの光景が滑稽に映るのであって、それがお父さんを笑わせる。
そんなイメージで体当たりしようと、ぐるりと一回りして人の行き交う中に合流すると錯乱してしまう。頭の中の考えと行動がマッチしないのだ。右足を出して右手を出す感じで、やんわりガラスドアにぶつかっていた。
不自然に見えたのだろうか、お父さんは笑いもしない。 普通なら到底あり得ない悪趣味と思えるだろうから、雑踏の中では笑わないのは当然と思える。そんなお父さんは桃子に似ていた。
そして知ってて知らないフリは難しいことを、今更ながら感じたのだ。だからだろう現実の中で遭遇したら本当に可笑しいと感じるのを再認識するのだ。
お父さんが地味に、そして静かにベンチに座り人混みの中に溶け込んでいる。お酒を飲んでガラスドアの方に向かって何かを期待している。
この世に、桃子以上に滑稽さを楽しむお父さんがいたなんて、ちょっと話し掛けてみたいがワンカップでも飲まないと話など出来ない。 それでも隣のベンチに座ることが出来きるとスナック菓子を出す行動を起こす。
その時、お互いに「お!」と声を発したのだ。それは、強化ガラスに思いっきりぶつかった人物に対して声を発したのだった。そのタイミングで、お酒を出すことが出来た桃子。
考えてみればアラフォー女、ワンカップを持つ手が様になってるんじゃないかと思え、夕闇の迫るベンチで足を組む格好に成功した。こちらを向いたお父さん「あんたも、あの場所が気になってるようだね」
「え?ええ」と言って一口飲むワンカップが美味しい。すると大学ノートを出して面白い場所と言わんばかりに、可愛い絵入りのノートを、手を伸ばした見せてくれるのだ。
「えー!こんなに穴場あるんですか?」 思わず嬉しくなって言葉にしてしまう。お父さんは、桃子の吃驚する表情に共感を覚えたようだ。
「あんたも好きだね」と呆れ返っている。お父さんの人間観察の鋭い目が、穏やかな目付きに変わってくると、中途半端に手を上げて乾杯ポーズをしてくれた。
桃子が穴場をメモしていると「今度の日曜は、ここに行く」とお父さんは嬉しそうだ。確かに面白そうな場所にみえたが、連れてって・・などと、いくら酔っても言えるはずがない。
・・
なので、日曜日に面白そうと言う場所に一人で来てみた「これかぁ」これは男性がぶつかると股間に当たり痛そう。なぜ、こんな場所にポールが立っているんだろうか?
そのポールには、地元の人が危険を感じたようで編んだ毛糸の帽子を被せてあるのが可笑しくて、まるで人間の頭に見えるのだ。
ポールは歩道の真ん中で堂々としているが、高さは低くて見えにくいのだ。ぶつかっても先端が丸くて怪我はしないから安心するけど、お父さんはこれを好んでるのかと、いささか変態性も兼ねる人間観察も楽しんでいるように思えた。つづく
いっそのこと芸能人になればと思ってしまうが、そんなキラキラした才能など無いから騙されてAV女優が関の山だと、人の流れを追った。
・・
今日も夕方から駅前ベンチに座り人間観察。透明ガラス、慎重派はそこで止まり手探りする光景は、いたずら心の私を癒してくれる。
気が付いたことだけど真向かいのお父さんもワンカップ片手に、その光景をツマミにして楽しんでいるように感じる。
騙される人々、それをお父さんも楽しみに観ている?桃子と同じ人間観察が好きなようで、気持ちを高めているのだろうか。
そのお父さんの不自然な高ぶりを観ながら、桃子の人間観察は忙しくなってくる。ワンカップ片手のお父さんに声を掛けて貰いたいと思わないけど気になる存在でもあった。
それより立場を変えて桃子が向こう側、いうならばガラスドアにぶつかる犠牲者なら、どう反応するのかと考えるとドキドキする。その自分の発想の転換が面白くて立ち上がった。
ガラスドアにぶつかる事は知らないから、あの光景が滑稽に映るのであって、それがお父さんを笑わせる。
そんなイメージで体当たりしようと、ぐるりと一回りして人の行き交う中に合流すると錯乱してしまう。頭の中の考えと行動がマッチしないのだ。右足を出して右手を出す感じで、やんわりガラスドアにぶつかっていた。
不自然に見えたのだろうか、お父さんは笑いもしない。 普通なら到底あり得ない悪趣味と思えるだろうから、雑踏の中では笑わないのは当然と思える。そんなお父さんは桃子に似ていた。
そして知ってて知らないフリは難しいことを、今更ながら感じたのだ。だからだろう現実の中で遭遇したら本当に可笑しいと感じるのを再認識するのだ。
お父さんが地味に、そして静かにベンチに座り人混みの中に溶け込んでいる。お酒を飲んでガラスドアの方に向かって何かを期待している。
この世に、桃子以上に滑稽さを楽しむお父さんがいたなんて、ちょっと話し掛けてみたいがワンカップでも飲まないと話など出来ない。 それでも隣のベンチに座ることが出来きるとスナック菓子を出す行動を起こす。
その時、お互いに「お!」と声を発したのだ。それは、強化ガラスに思いっきりぶつかった人物に対して声を発したのだった。そのタイミングで、お酒を出すことが出来た桃子。
考えてみればアラフォー女、ワンカップを持つ手が様になってるんじゃないかと思え、夕闇の迫るベンチで足を組む格好に成功した。こちらを向いたお父さん「あんたも、あの場所が気になってるようだね」
「え?ええ」と言って一口飲むワンカップが美味しい。すると大学ノートを出して面白い場所と言わんばかりに、可愛い絵入りのノートを、手を伸ばした見せてくれるのだ。
「えー!こんなに穴場あるんですか?」 思わず嬉しくなって言葉にしてしまう。お父さんは、桃子の吃驚する表情に共感を覚えたようだ。
「あんたも好きだね」と呆れ返っている。お父さんの人間観察の鋭い目が、穏やかな目付きに変わってくると、中途半端に手を上げて乾杯ポーズをしてくれた。
桃子が穴場をメモしていると「今度の日曜は、ここに行く」とお父さんは嬉しそうだ。確かに面白そうな場所にみえたが、連れてって・・などと、いくら酔っても言えるはずがない。
・・
なので、日曜日に面白そうと言う場所に一人で来てみた「これかぁ」これは男性がぶつかると股間に当たり痛そう。なぜ、こんな場所にポールが立っているんだろうか?
そのポールには、地元の人が危険を感じたようで編んだ毛糸の帽子を被せてあるのが可笑しくて、まるで人間の頭に見えるのだ。
ポールは歩道の真ん中で堂々としているが、高さは低くて見えにくいのだ。ぶつかっても先端が丸くて怪我はしないから安心するけど、お父さんはこれを好んでるのかと、いささか変態性も兼ねる人間観察も楽しんでいるように思えた。つづく
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