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第1章 はじまりの日
第4話『エリュシオン傭兵団の入団試験①』
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エリュシオン傭兵団の入団試験は不定期に行われており、今年が久々の募集となる。
傭兵団の仕事とは、各地域に派遣され街の治安を守ったり頼み事を聞いたりと多岐にわたるが、一番は魔物の討伐だ。
人間でも亜人でもない、西のミラナ領と亜人の住む土地の境にある深く大きな森から現れるソレは、人を襲い食い散らかす存在だ。
一体いつから現れるようになったのかはわからないが、退治しても次から次に出てくるので今では魔物から人々を守るのがエリュシオン傭兵団の重要な仕事になっている。
傭兵団では配属された地域を中心として個人での活動を主としているため、それぞれの役割を持つ何人かで分隊を作り行動していく。
本部からの伝令や補給を担う、隊の情報を握るコール。
仲間の盾になり、勇敢に剣や拳を振るうガード。
貴族だけが使える魔法を操り、後衛の要のスペル。
怪我や病気などを治療し、支えるトリート。
合格者はこの四つの役職に就き、所属先の街で傭兵団の仲間となるのだ。
ともあれ、どの役職に就きたいなんていう希望がないジークは、エリュシオン傭兵団の入団試験会場であるレオンドール……から離れているであろう森の中の遺跡の前に立っていた。
あれから、ルルの街を出て辿り着いたレオンドールには金色の建物が並び、市場で賑わう人々の顔も明るく、街の中央にはひときわ大きな時計塔があったのだ。
これからの事でワクワクでいっぱいだったジークだが、今は萎んで潰れたパンみたいになっている。
てっきり試験はレオンドールの街で行われると思っていたのだが、入団受付をしに向かった宿でサインをすると、唐突に後頭部を殴られ気絶している間にここへ運ばれていたというわけだ。
「なんでだ……」
試験会場を特定されない為だろうか……。
殴られたり気絶したりの繰り返しで、ジークとしては正直テンションは上がらない。
エリュシオン傭兵団の入団試験は受付にて数人一組のチームを組み、協力して合格を目指すというものだった。
周りを見れば、やる気に満ち溢れた入団希望者が楽しそうに話しているではないか。
それと付け加えてジークの運が悪いのはいつもの事なのだが、そう。
ジークが目を覚ました時には、一緒に組んでいたはずの仲間はいなくなっていた。
宿で一緒にチームを組んでいたカップルがそろって棄権したのだ。
つまり、一人。どこからどう見ても間違いなく一人。
もちろん一人でやっていく事は無謀なのですぐに試験官に掛け合ったのだが。
「今からチームを組みなおす事は出来ないので、一人で何とかしろ」
と、無情にも告げられてしまい真顔で固まったのだった。
それでも、ここまで来て棄権するのもなと、思いとどまっての今ここであるが、一人でいるのは本当に目立ってしまう。
あまりにも居心地が悪いジークは、昨日の夜に出会ったフィアの事を思い出していた。
もしかしたら、またあの子に会えるのかもしれないという淡い期待を抱いていると、甲高い鐘の音が響き渡る。
「諸君、栄えある我がエリュシオン傭兵団の入団試験にようこそ!」
集められた入団希望者の前に、一人の中年の男が姿を現す。
あらかじめ用意されていた壇上から響く男の低く太い声は、ざわついていた周囲を黙らせるには十分だった。
今までどこか浮いていた雰囲気が引き締まる。
ジークはこの男がレオンドールなのだと直感でわかった。
なぜなら、街と同じようにギラギラとした金色で統一された衣服に身を包んでいたから。
立派な体系を包む目に悪い配色のフルセットにも関わらず、何故か似合っている。
レオンドールは、自分を見上げる下々の民を満足そうに眺めると、この遺跡を使った試験の内容を説明していく。
聞けば聞くほど一人である事が不利でしかない内容に、ジークは思わず顔をしかめてしまう。
長々とした説明が終わるまで、ジークはどうやって生き残ろうかというその一点だけをずっと考えていた。
「……以上! これより、エリュシオン傭兵団の入団試験を始める!」
再び大きく鐘が鳴り、レオンドールの声に受験者達は一斉に走り出す。
ジークもすぐに遺跡の森の中に逃げ込み、身を低くして持っている荷物の確認をする。
この試験のルールは単純なものだ。
これは各々の連携力とサバイバル能力、敵対者に対しての対応力が求められている。
それぞれのチームごとに行動し、他のチームからコインを奪う事。
その為なら相手をどうしてもいいというものだった。
合格するのは一つのチームだけ。
人間相手でも目的の為ならばどこまで非情になれるか、が求められるバトルロイヤル。
これが、全てだ。
「冗談抜きでまずいんだぞ……」
さっそく戦いが始まっているのか、激しく打ち合う音が聞こえる。
ジークは辺りから聞こえる怒声や悲鳴から逃れるように、木の陰にしゃがんでコインを取り出す。
キラキラ光るおっさんと言っても過言ではないレオンドール様の顔が彫られたコインは、たった一人で何百人と戦うには無謀だと嘲笑っているようだ。
それでも始まる前から諦める根性は持っていない。
落としてしまわないよう、大事にしまっておく。
だが、始まる時点で一人しかいないのだとバレているジークはいい獲物だろう。
ルールの説明を聞いている間にも向けられていた視線が痛かった。
「誰かいたぞ!」
ふいに聞こえた声でビクリと身を縮ませる。きっと一番狙いやすい自分を探しているのだ、とジークは思った。
走って逃げようかと一瞬迷ったが、ぐっと唇を噛む。
ここで逃げ出したとしても、また追われて逃げ続ける事になるのはわかりきっている。
なら、戦うしかない。
深呼吸をし、ゆっくりと立ち上がって木の陰から様子を伺う。
相手は三人、男が二人と女が一人だ。
鞄に手を突っ込んで何かないかと漁ると、いつも護身用に持っていたナイフがあった事を思い出し、鞘から引き抜いた。
そして相手を威嚇する為に肺いっぱい息を吸い、声を上げる。
「こ、コイン置いてけ!」
……一体、どこのザコなのだろうか。
そもそも相手はジークに気付いていなかったので、なおさら恥ずかしい。
だが、そんなものどうだっていいのだ。
ジークにとって大事なことは、目の前の事から逃げないことなのだから。
「おい、こいつあの一人しかいなかったあいつだよなァ」
「弱いくせに恥ずかしくないのかよ?」
「やめなさいよ、ふふ……」
そう言って武器を手にした三人は、ナイフしかもっていないジークに向けて同時に仕掛けた。
流れるように放たれた右拳を腕に食らい、ふらついた所に男の振り下ろした槍が頬を掠める。
反撃をする間もなく、ジークはナイフを落としてしまった。
急いでナイフを拾おうと伸ばした手の上に、石を落とされ鋭い痛みが走る。
「ぐっ……!」
ジークはあまりの痛みで林に蹲ってしまった。
悔しさに睨みつければ、にやにやと笑う顔が見えた。
女は魔法で石を浮かせて遊び、退屈そうにあくびをしている。
やはり一人で戦うのは無理だったのだ。ただでさえエリュシオン傭兵団へ入る為に訓練していたのだろう相手に、それも魔法使いがいるチームと正面から戦うのは厳しかった。
石を浮かせて飛ばす魔法が使えるという事は、近付いてしか攻撃できないジークには不利だ。
男が何かを言っているが、痛みに気が持っていかれている為、よく聞こえない。
鞄へと手が伸ばされる。コインを奪われ、このまま殺されてしまうのだろうか……。
草を強く握りしめ、目を閉じたジーク。
だが、次に聞こえたのは布が地面に落ちる音と男の怯えたような声だった。
「そ、そんな……おま、あなた様は……!」
「え?」
目の前に落とされた鞄から視線を上げたジークは、真っ青な顔をしている奴らを見て目が点になった。
奴らが持っているのは、何故か鞄に入っていた白狼を模した仮面。
港街で気づいた時、無造作に放りこんでいたものだ。
ジークとしてはいつどこで手に入れた物なのか忘れているのだが、これは誰もが知るあの家が仕事をする際に使っている恐怖の仮面だ。
「ん? え?」
「も、申し訳ありませんでしたーッ! お許しください! ひ、東の大貴族様だとは知らず……」
わなわなと震えていた男の一人は、ジークと同じ……いやそれよりも低くうつ伏せて頭を下げると自分達のコインを差し出し、ものすごい速さで仲間を連れて逃げていった。
慌ただしく逃げていく姿を見送り、仮面を手に取ったジークは首をかしげる。
この仮面はルークの人間が仕事をする時に使うモノであり、これを持っているという事は悪名高いルークと関係があるという事を示すのだが、あの時は夜の暗闇でよく見えなかったので誰の物なのか覚えていないのだ。
「なんかこれ、もしかして呪いのパワーとか出ちゃってるのかい?」
よくわからないがこの仮面のおかげで助かったのは間違いない。
ジークはある事を思いつき、ニヨンと笑い二枚になったコインを大事に袋にしまった。
試験が始まって数時間が経った頃だろうか、脱落者の声が森の中に響き、驚いた動物達が逃げ出す。
あちらこちらには激しい戦いの後が見られ、こと切れた体も横たわっている。
棄権を申し出る者や、脱落者を回収する試験官がうろついているらしい。
ジークはそんな中、隠密を繰り返しながら生き延びていく。
誰かに見つかった時には素早く、ナイフよりもよっぽど強い『呪いの仮面』を見せつけながらひたすらに逃げては隠れる。
さすがルーク家の仮面。誰も寄りつかず、それどころか避けていく。
このまま人数が減るのをやり過ごして生きたい、そう思っていた矢先……。
ジークはあっさり落とし穴にはまり、首から下が土の中に埋まってしまうのだった。
傭兵団の仕事とは、各地域に派遣され街の治安を守ったり頼み事を聞いたりと多岐にわたるが、一番は魔物の討伐だ。
人間でも亜人でもない、西のミラナ領と亜人の住む土地の境にある深く大きな森から現れるソレは、人を襲い食い散らかす存在だ。
一体いつから現れるようになったのかはわからないが、退治しても次から次に出てくるので今では魔物から人々を守るのがエリュシオン傭兵団の重要な仕事になっている。
傭兵団では配属された地域を中心として個人での活動を主としているため、それぞれの役割を持つ何人かで分隊を作り行動していく。
本部からの伝令や補給を担う、隊の情報を握るコール。
仲間の盾になり、勇敢に剣や拳を振るうガード。
貴族だけが使える魔法を操り、後衛の要のスペル。
怪我や病気などを治療し、支えるトリート。
合格者はこの四つの役職に就き、所属先の街で傭兵団の仲間となるのだ。
ともあれ、どの役職に就きたいなんていう希望がないジークは、エリュシオン傭兵団の入団試験会場であるレオンドール……から離れているであろう森の中の遺跡の前に立っていた。
あれから、ルルの街を出て辿り着いたレオンドールには金色の建物が並び、市場で賑わう人々の顔も明るく、街の中央にはひときわ大きな時計塔があったのだ。
これからの事でワクワクでいっぱいだったジークだが、今は萎んで潰れたパンみたいになっている。
てっきり試験はレオンドールの街で行われると思っていたのだが、入団受付をしに向かった宿でサインをすると、唐突に後頭部を殴られ気絶している間にここへ運ばれていたというわけだ。
「なんでだ……」
試験会場を特定されない為だろうか……。
殴られたり気絶したりの繰り返しで、ジークとしては正直テンションは上がらない。
エリュシオン傭兵団の入団試験は受付にて数人一組のチームを組み、協力して合格を目指すというものだった。
周りを見れば、やる気に満ち溢れた入団希望者が楽しそうに話しているではないか。
それと付け加えてジークの運が悪いのはいつもの事なのだが、そう。
ジークが目を覚ました時には、一緒に組んでいたはずの仲間はいなくなっていた。
宿で一緒にチームを組んでいたカップルがそろって棄権したのだ。
つまり、一人。どこからどう見ても間違いなく一人。
もちろん一人でやっていく事は無謀なのですぐに試験官に掛け合ったのだが。
「今からチームを組みなおす事は出来ないので、一人で何とかしろ」
と、無情にも告げられてしまい真顔で固まったのだった。
それでも、ここまで来て棄権するのもなと、思いとどまっての今ここであるが、一人でいるのは本当に目立ってしまう。
あまりにも居心地が悪いジークは、昨日の夜に出会ったフィアの事を思い出していた。
もしかしたら、またあの子に会えるのかもしれないという淡い期待を抱いていると、甲高い鐘の音が響き渡る。
「諸君、栄えある我がエリュシオン傭兵団の入団試験にようこそ!」
集められた入団希望者の前に、一人の中年の男が姿を現す。
あらかじめ用意されていた壇上から響く男の低く太い声は、ざわついていた周囲を黙らせるには十分だった。
今までどこか浮いていた雰囲気が引き締まる。
ジークはこの男がレオンドールなのだと直感でわかった。
なぜなら、街と同じようにギラギラとした金色で統一された衣服に身を包んでいたから。
立派な体系を包む目に悪い配色のフルセットにも関わらず、何故か似合っている。
レオンドールは、自分を見上げる下々の民を満足そうに眺めると、この遺跡を使った試験の内容を説明していく。
聞けば聞くほど一人である事が不利でしかない内容に、ジークは思わず顔をしかめてしまう。
長々とした説明が終わるまで、ジークはどうやって生き残ろうかというその一点だけをずっと考えていた。
「……以上! これより、エリュシオン傭兵団の入団試験を始める!」
再び大きく鐘が鳴り、レオンドールの声に受験者達は一斉に走り出す。
ジークもすぐに遺跡の森の中に逃げ込み、身を低くして持っている荷物の確認をする。
この試験のルールは単純なものだ。
これは各々の連携力とサバイバル能力、敵対者に対しての対応力が求められている。
それぞれのチームごとに行動し、他のチームからコインを奪う事。
その為なら相手をどうしてもいいというものだった。
合格するのは一つのチームだけ。
人間相手でも目的の為ならばどこまで非情になれるか、が求められるバトルロイヤル。
これが、全てだ。
「冗談抜きでまずいんだぞ……」
さっそく戦いが始まっているのか、激しく打ち合う音が聞こえる。
ジークは辺りから聞こえる怒声や悲鳴から逃れるように、木の陰にしゃがんでコインを取り出す。
キラキラ光るおっさんと言っても過言ではないレオンドール様の顔が彫られたコインは、たった一人で何百人と戦うには無謀だと嘲笑っているようだ。
それでも始まる前から諦める根性は持っていない。
落としてしまわないよう、大事にしまっておく。
だが、始まる時点で一人しかいないのだとバレているジークはいい獲物だろう。
ルールの説明を聞いている間にも向けられていた視線が痛かった。
「誰かいたぞ!」
ふいに聞こえた声でビクリと身を縮ませる。きっと一番狙いやすい自分を探しているのだ、とジークは思った。
走って逃げようかと一瞬迷ったが、ぐっと唇を噛む。
ここで逃げ出したとしても、また追われて逃げ続ける事になるのはわかりきっている。
なら、戦うしかない。
深呼吸をし、ゆっくりと立ち上がって木の陰から様子を伺う。
相手は三人、男が二人と女が一人だ。
鞄に手を突っ込んで何かないかと漁ると、いつも護身用に持っていたナイフがあった事を思い出し、鞘から引き抜いた。
そして相手を威嚇する為に肺いっぱい息を吸い、声を上げる。
「こ、コイン置いてけ!」
……一体、どこのザコなのだろうか。
そもそも相手はジークに気付いていなかったので、なおさら恥ずかしい。
だが、そんなものどうだっていいのだ。
ジークにとって大事なことは、目の前の事から逃げないことなのだから。
「おい、こいつあの一人しかいなかったあいつだよなァ」
「弱いくせに恥ずかしくないのかよ?」
「やめなさいよ、ふふ……」
そう言って武器を手にした三人は、ナイフしかもっていないジークに向けて同時に仕掛けた。
流れるように放たれた右拳を腕に食らい、ふらついた所に男の振り下ろした槍が頬を掠める。
反撃をする間もなく、ジークはナイフを落としてしまった。
急いでナイフを拾おうと伸ばした手の上に、石を落とされ鋭い痛みが走る。
「ぐっ……!」
ジークはあまりの痛みで林に蹲ってしまった。
悔しさに睨みつければ、にやにやと笑う顔が見えた。
女は魔法で石を浮かせて遊び、退屈そうにあくびをしている。
やはり一人で戦うのは無理だったのだ。ただでさえエリュシオン傭兵団へ入る為に訓練していたのだろう相手に、それも魔法使いがいるチームと正面から戦うのは厳しかった。
石を浮かせて飛ばす魔法が使えるという事は、近付いてしか攻撃できないジークには不利だ。
男が何かを言っているが、痛みに気が持っていかれている為、よく聞こえない。
鞄へと手が伸ばされる。コインを奪われ、このまま殺されてしまうのだろうか……。
草を強く握りしめ、目を閉じたジーク。
だが、次に聞こえたのは布が地面に落ちる音と男の怯えたような声だった。
「そ、そんな……おま、あなた様は……!」
「え?」
目の前に落とされた鞄から視線を上げたジークは、真っ青な顔をしている奴らを見て目が点になった。
奴らが持っているのは、何故か鞄に入っていた白狼を模した仮面。
港街で気づいた時、無造作に放りこんでいたものだ。
ジークとしてはいつどこで手に入れた物なのか忘れているのだが、これは誰もが知るあの家が仕事をする際に使っている恐怖の仮面だ。
「ん? え?」
「も、申し訳ありませんでしたーッ! お許しください! ひ、東の大貴族様だとは知らず……」
わなわなと震えていた男の一人は、ジークと同じ……いやそれよりも低くうつ伏せて頭を下げると自分達のコインを差し出し、ものすごい速さで仲間を連れて逃げていった。
慌ただしく逃げていく姿を見送り、仮面を手に取ったジークは首をかしげる。
この仮面はルークの人間が仕事をする時に使うモノであり、これを持っているという事は悪名高いルークと関係があるという事を示すのだが、あの時は夜の暗闇でよく見えなかったので誰の物なのか覚えていないのだ。
「なんかこれ、もしかして呪いのパワーとか出ちゃってるのかい?」
よくわからないがこの仮面のおかげで助かったのは間違いない。
ジークはある事を思いつき、ニヨンと笑い二枚になったコインを大事に袋にしまった。
試験が始まって数時間が経った頃だろうか、脱落者の声が森の中に響き、驚いた動物達が逃げ出す。
あちらこちらには激しい戦いの後が見られ、こと切れた体も横たわっている。
棄権を申し出る者や、脱落者を回収する試験官がうろついているらしい。
ジークはそんな中、隠密を繰り返しながら生き延びていく。
誰かに見つかった時には素早く、ナイフよりもよっぽど強い『呪いの仮面』を見せつけながらひたすらに逃げては隠れる。
さすがルーク家の仮面。誰も寄りつかず、それどころか避けていく。
このまま人数が減るのをやり過ごして生きたい、そう思っていた矢先……。
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