学院最弱の劣等魔法師、千年の時を経て最強になる ~努力チートで未来の魔法学院を最強無双~

蒼月浩二

文字の大きさ
6 / 8

第5話:落第魔法師は手本を見せる

しおりを挟む
 三限と四限の授業は校庭で行われる。一限の授業で打ちのめされたアネット先生は元の調子を取り戻していた。リアナの言う通り、俺の心配は杞憂だったようだ。

「今日の授業は魔法師にとって最も重要な正確性を鍛えるため、遠距離からの的当てをやってもらう。どれだけ強力な魔法を使えても、的に当たらなければ意味がないのだ。三限の間は各々自習して分からないところがあれば聞きに来い。四限にテストを行う」

 一限の酷い授業から一転して、これはかなり実のある内容だ。俺も最初の三百年くらいは延々と的に向かって正確に当てられるように練習したものだ。

 八か所に設置された的の前に列が出来て、生徒たちは順番に魔法を撃っていく。俺はその様子を傍観していた。

「アキヤは練習しなくていいのか?」

 アネット先生が訊ねてきた。

「俺はいきなり試験があっても大丈夫ですよ」

「ふむ、大した自信じゃないか。いきなり試験があっても大丈夫だと言ったが、それは本当か?」

「ええ、それがどうかしましたか?」

「では、試してみよう」

 アネット先生は首からぶら下げている笛をピューっと鳴らした。
 練習をしていた生徒たちから注目が集まる。

「今からアキヤが的当ての試験を受けるそうだ。見に来たい者は来るように」

 先生が声を張り上げて言うと、あっという間に全員が集まった。見に来るかどうかは自由のはずなのに、全員が集まるなんて注目されてるんだな、俺。

「じゃあ、さっそく一番の的を使って試験をしようか。目印として引いてある白い線より後ろからなら、どこから撃っても構わないぞ」

「わかりました。じゃあそこから撃っても面白くないので、もうちょっと後ろに下がりますよ」

 俺は白線からどんどん遠くに離れていき――校庭の端に着いた。

「おい! そんなところから撃ったら届く前に消滅するぞ!」

「問題ありません! じゃあ、いきますね!」

 俺は宣言してから、後ろを向いた。
 魔法発動の瞬間まで的を見る必要も無ければ、前を向いている必要も無い。
 位置さえわかっていれば、どこからでも同じだ。

 腕だけを的の方に正確に向けて、魔法の準備を始める。

「後ろ向いた!?」

「まさかあれだけ離れた場所から目で見ずに魔法を!?」

「さすがのアキヤ君でもそれは無理でしょ!」

 生徒たちがわーわーと騒いでいるのが聞こえてくる。
 構わず【火炎球】を放った。

 距離が長いため、威力は高めに設定した。
 【火炎球】が真っ直ぐ的に近づいていく――白線を越えた。

 そのまま【火炎球】は綺麗な線を描き、的に着弾した。
 ボンッという音が鳴り終わった後には、的の中心に焦げた跡が残った。

「ほ、本当に当たっちゃったあああああああ!?」

「嘘でしょ!? こんなのあり得ないって! きっと夢よ夢! って、痛っ、夢じゃない!?」

「これってもしかして先生より凄いんじゃ!?」

 俺が校庭の端からゆっくりと戻ってくると、大変な騒ぎになっていたようだった。

「先生、どうでしたか?」

「文句なしの満点だよ。はぁ……君というやつはどこまで常人離れしているんだ?」

 アネット先生は呆れた声で点数を教えてくれた。
 三百年もこれだけのために頑張った結果が報われた感じがして、嬉しかった。

「良かったです。みんなの参考になりましたかね?」

「良い意味で参考にならなかっただろうな……あー、みんなは落ち込まず練習に戻ってくれ」

「「「「「はーい!」」」」」

 集まっていた生徒たちは、またすぐに散り散りになった。

 三限の授業序盤で試験を満点で終えてしまった俺は、特にやることもないので、改めてみんなが練習する様子を見ておくことにした。

 リアナとメアリーは威力は出ているものの、正確性に関してはちょっとアレな感じだ。十発ずつ撃っているようだが、半分くらいが的に当たっていない。

 二人は悔しそうに唇を噛んで、また最後尾に戻った。

 次に、最後の方に並んでいたリーシャの順番がやってくる。
 彼女は十発の魔法を撃って、十発とも的に命中。そのうちの一発がちょうど的の中心に着弾した。

「リーシャ様凄い……」

「アキヤ君が異常なだけで、凄いって!」

「むしろこっちの方が参考になるかも!」

 十五、六歳ということを考えれば、リーシャはかなり正確に魔法を使いこなしている。努力を重ねた後も見られるが、やっぱり彼女は天才だ。

「わ、悪くない気分ですわね……」

 褒められて照れているのか、リーシャは少し俯きながら最後尾まで歩いた。
 リーシャのもとにリアナとメアリーが駆け寄ってくる。

「リーシャ凄いなあ。良かったらちょっと指導してもらえないかな?」

「今のどうやったの!? コツとか教えてよ!」

 意外そうにリーシャは目を丸くした。

「し、仕方がないですわね……特別に高貴な私が直々に教えて差し上げますわ!」

 彼女はしっかりとリアナとメアリーの実技を見ていたようで、次から次へと指摘していく。

「まずは姿勢ですわね。アキヤはちょっと例外ですけれど、基本的にはこう、どっしりと構えてブレないようにするのですわ。リアナ……はその、その辺が出来ていないのですわ!」

「なるほど……! 自分ではあんまり意識できてなかったかも。参考になるわ!」

「それで、メアリー……は、もうちょっとしっかり的を見るということが大切ですわね。アキヤはちょっと例外ですけれど、魔法に集中しすぎて前を見ていないと当たるものも当たらないのですわ!」

「言われてみれば確かにそうだわ! ちゃんと見てくれてたんだ!」

 リアナとメアリーにリーシャが適切なアドバイスをしてから、二人は十発中十発を的に当てることができるようになった。中心からは大分逸れているが、あの一瞬でここまで上達させたことに生徒たちは驚いたようで、

「リーシャ様、私にも教えて!」

「私にもどうすればいいのかお願いします!」

「どこがダメなのか教えて!」

 リーシャの周りにひっきりなしにクラスメイトが集まってくる。
 彼女はかなり困惑しているらしく、目を回していた。

「わ、私のことはリーシャと呼ぶのですわ! 様呼びなんてよそよそしいですの!」

「わかりました! リーシャ、お願いします!」

「なんかアキヤ君の下僕になってからリーシャちょっと変わったかも?」

「なんか前より親しみやすくて良いよね~」

 クラスで浮いていた彼女だが、嫌われていたわけではなかったらしい。きっかけがあれば、どうにでもなったのだ。……俺はほとんど何もしていないのだから、これはリーシャの実力だ。

 あっという間に四限になり、的当ての試験が始まった。
 リーシャの教えを受けた生徒たちはほとんどの生徒が的に当てることができるようになり、偶然ではあるが中心に当てることができた者も続出した。

「リーシャありがとうね!」

「アキヤ君が目を付けたってことはこういうことなのね!」

「アキヤ君凄い!」

 途中からなぜか俺への絶賛に変わってしまったが、リーシャが皆から感謝され、受け入れられたという事実に揺るぎはない。

 俺は授業が終わった後、リーシャの様子を見に行った。

「今日の私、なんだか変ですわ。クラスのみんなと話せてちょっと楽しかった……みたいな」

「別に変じゃないと思うぞ。楽しかったんなら、リーシャはそうしたかったってことじゃないのか?」

「うぅ……それは断じて認めるわけにはいきませんわ」

「強情な奴だな」

「はぁ……それにしても、結局友達はできませんでしたわ」

 リーシャは俺の命令をちゃんと守るつもりだったらしく、溜息をついた。お仕置きを覚悟したような諦めも含んだような溜息。

「……えーと、だな。何を言ってるんだ?」

「何をって、アキヤが言い始めたことでしょう? 今日中に友達が一人できなかったら、お仕置きをするって。そう命令しましたわよね?」

「ああ、したけど。……リーシャは命令を守ったよな?」

「へ?」

 本当に理解していない。友達ができたことに気づいていなかった。

「リーシャ、寮まで一緒に帰ろ?」

「何してるのよ。さっさと戻らないとシャワー室いっぱいになっちゃうわよ?」

 リアナとメアリーがリーシャを呼んでいる。

「え? ……え?」

 リーシャは困惑していた。

「友達ってのはさ、いつの間にかできるもんなんだよ」

「そう……でしたの」

 リーシャはかなり照れた様子で二人と並んで寮へと戻っていった。
 ……さて、俺も今日から部屋が割り当てられているんだ。さっさと部屋について休みたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

キモおじさんの正体は…

クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。 彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。 その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。 だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

処理中です...