最強賢者の異世界無双 〜不遇とされた転生賢者はチートと現代知識で世界最強〜

蒼月浩二

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第2章:第二学院創設編

第36話:最強賢者は怒る

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 深夜の医務室――そこにエリスが運ばれてきた。

「大丈夫か、エリス!」

「エリス! 気をしっかり!」

 ちょうど医務室にいた俺は、運ばれてきたエリスの怪我の具合を確認する。全身の打撲と、両腕両足の骨折の重傷だった。身体中に青痣が出来ていて、かなり痛々しい。

 隣にいたリーナも、その姿を見て顔を青ざめている。
 エリスの意識は朦朧としているものの、気を失ってはいなかった。

「ユーヤ……?」

 俺が医務室にいたことに驚いたのか、エリスは目を丸くする。

「喋らなくていい。しばらくしたら楽になるから、今は気を確かに保つことだけに集中してくれ」

「……」

 エリスの治療自体は、治癒魔法を使えばすぐに治る。
 俺は彼女の身体に集中して、治癒していく。細胞を活性化させることで、普通ならありえないスピードでの治療が可能になる。変な場所で骨がくっつかないようにだけ注意することおよそ五分。順調に進んだ。
 カルシウムなどの必要な栄養素が足りなくなるので、エリス自身の魔力を変換して補っておく。

「嘘……もうどこも痛くない」

 治療が終わった後のエリスは、いつものようにケロっとした表情で俺を見上げた。

「怪我は完全に治せたからな。……それにしても、エリスもか」

「……私もって?」

「実は、エリスよりも前に急患が入ってたんだよ、二人も」

 そう言って、エリスの隣のベッドに目を向ける。ベッドの周りには柵が建てられて中が見えなくなっているが、使用中だ。

 そもそも、深夜に俺が医務室にいたのには理由がある。

「二年生と三年生の先輩が一人ずつ、大怪我を負っていた。二人とも明日の学院対抗戦の代表者だ。まさかとは思ったが、エリスもこんなことになるとはな……」

 二人運ばれてきた時点で何者かの意図があることは想像できたので、早く見つけに行きたかった。でも、先輩たちの大怪我も俺でしかすぐには治せないほどの重傷だった。リーナを使いに送るのでは、逆にそっちが危険な目に遭う可能性があるので、できなかった。

 ようやく二人の治療を終えてエリスを探しに行こうとしたところに、運ばれてきたという時系列になる。
 同時に三人が――それも、学院対抗戦を明日に控えた生徒が大怪我を負うなんて、偶然では済まされない。

「エリス、犯人の顔は見たか?」

「犯人っていうか……変な人影はいたけど私が階段で足を滑らせちゃったから……」

「なるほどな……そういうことか」

「それってどういうことなの、ユーヤ!」

 隣のリーナが興奮気味に訊ねてくる。

「普通に考えれば、エリスがこれほどの大怪我をする落ち方をするわけがない。誰かに突き飛ばされたか、あるいは足元に何かトラップを仕掛けられてるとかがなけりゃな」

「そういえば……足元が急に滑ったような気がするわ……」

「何らかの魔法で足元を掬われたってことだろうな。……そして、今そんなことをして得する奴なんて数えるほどしかいない」

「カリオン王国の九人の誰かってこと!?」

「教師も含めれば十二人。そのうちの誰かか、組織的なものだろうな。学年ごとに一人ずつ潰してしまえば、一勝は確実になる。もし代わりの選手が出てきても、正規の出場者より戦力的に劣るのは明らか。……だからといって親善試合をこんな形でぶち壊すなんて許されることじゃないが……」

「でもこんなの試合中止になるわよね! あんな連中と戦うなんて危険すぎるわ!」

「学院対抗戦は伝統のある恒例行事だ。……証拠が無ければ、中止にまではならない」

 被害者三人から聞き取りをしたが、一人として犯人の顔をはっきりと見た者はいなかった。ただ全員が目の前に誰かがいたと証言していた。
 その誰かが重要なのだが、これだけでもわかることはある。設置型魔法を使わず、直接魔法を使ったということだ。

「ちなみに、エリス。その人影の声は聞いたか?」

「……いいえ、無言でどこかに行っちゃったから」

 他の二人の証言とも一致する。俺たちと同じ無詠唱魔法の使い手だということだ。おそらく設置型魔法を使わなかったのは、学院対抗戦の代表者を狙い撃ちしたかったからと考えると納得できる。

「でも……中止にならなくてこのまま何もせずに終わるなんて……」

 リーナは仲間であるエリスは、怒りの混じった声で呟いた。

「相手がどれだけの悪人だろうと、俺たちが同じことをするわけにはいかない。……明日の試合で、エリスの痛みはキッチリ返せばいい」

「ユーヤ、そんなんじゃあいつらは……いえ、なんでもないわ」

 つい、俺が怒りに震えていることをリーナに悟られてしまったようだ。俺だって平静を装ってはいるが、内心ではいますぐ全身の骨を折ってやりたいくらい気が立っている。

 だけど、俺はこの学院の教師という立場だし、そうじゃなくても汚い手でやり返すというのは主義に合わない。ここはグッと堪えて、試合で目にものを見せてやればいい。……その犯人が俺の相手だとは限らないが、そんな気持ちだ。

「それよりもエリス、大丈夫か?」

「うん。ユーヤのおかげでもう痛くもなんとも……」

「そういうことを聞いてるんじゃない。身体じゃなくて、心の問題だ」

「心……?」

「ああ、さっきからずっと震えてるぞ。大丈夫か?」
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