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第1章:魔法学院入学編
第23話:最強賢者はイライラする
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「さて、と」
俺は縛られていた教員の縄を解き、布を取ってやる。
リーナとエリスも俺にならって、手分けして解いた。
「本当にありがとう……ユーヤ君」
面識のない先生のはずなのだが、彼は俺のことを知っていた。
赤毛の……なんというか素朴な感じの人物である。
「僕は1-Aの担任をしているエリック・ウッドゲイトだ。まさか助けられるとはね……死を覚悟していたんだけど」
「冗談抜きであんたら六人は死にかけてたからな。……間に合ってよかったよ」
もしこの事件が一年前に起こっていたとしたら、彼らを助けられた者はいないだろう。レジーナ先生はガイドライン通りの対応をするだろうし、そうなれば手遅れだ。
全員の縄が解けた。
「じゃあ帰ろう……と言いたいところだが、助けた礼をしてもらわないとな」
「僕たちにできることならなんでも言ってください、ユーヤ君」
「ゴブリンリーダーを倒したことで、これ以上ゴブリンが増えることはない。だが、スライムには到底倒せる敵じゃない。だから先生たちには掃除を手伝ってもらう」
☆
ダンジョン第一層の大掃除が始まった。
三人ずつのパーティを組み、三手に分かれて掃除をする。
そうしないと次の訓練で使えないままになってしまうのだ。
ゴブリンを見つけ次第、剣で斬り殺すか、魔法で撃ち殺すか、殴って殺す。
教員は本来強いはずなのだ。不覚をとりさえしなければ。
「ん、あれは」
気づけば俺たちが着いたのは下層――第二層へと続く階段である。
その前には学院の紋章が入ったブレスレットが置いてあった。
「一応持って帰るか。訓練は続行って言っちゃったし」
俺はブレスレットを空間魔法で収納すると、その先に待ち構えていたゴブリンを剣で貫いた。
それから二時間後、ゴブリンはほとんど見なくなった。
他のパーティたちとも合流し、外に出たのだった。
☆
階段を上ると、ダンジョンの中が暗かったので、とても明るく感じる。
身体が溶けてしまいそうだ。
「レジーナ先生、戻りました。これ、一応ブレスレットです。訓練のついでにたまたま先生たちを見つけたので連れて帰った次第です」
レジーナ先生は無事に帰ってきた教員たちの姿を確認すると、涙を零した。
「ありがとう……本当に……ユーヤ君がいなかったら……」
ん?
確かに同僚を助けたことは感謝されてもおかしくはないのだが、何か引っかかる。
「レジーナ、今帰ったよ」
「エリック……よかった」
レジーナとエリックは抱き合っていた。
それで俺は理解した。
なるほど、理解した。つまりレジーナとエリックはいわゆるカレカノの仲だったというわけだ。
「ごめんなさい……私……あなたを見捨ててしまって」
『ガイドラインにこう書かれているから』と、大雑把に言えば見捨ててしまったことを謝っているのだろう。
「レジーナはただ仕事をしただけだよ。……僕は幸運だっただけさ。もし今年じゃなければ、ユーヤ君たちがいなかったら……その判断は正しかった。何も悪くなんだよ」
エリックがレジーナの頭を撫でる。
最初は「イイハナシダナァ」と思っていたのだが、段々とリア充を見ているとムカついてきた。
「イチャつくのは結構だがここは学校だから、わかりますよね?」
レジーナとエリックが同時にハッとしたような顔になる。
「す、すまない……生徒の前で。そ、そのとにかく今日はありがとう。今度改めてお礼を……」
「礼ならさっきやってもらった。気にすることはないですよ」
「ゴブリンの掃除のことかな? 後始末は本来教員の仕事なんだからあれでお礼を済ませた気にはなれないよ。僕たちの命の恩人なわけだしね」
ふむ、そういうものなのか。
エリックは律儀なやつだな。
「今すぐには何も思いつかないから、今日のことは貸しってことにしといてよ。それでいいですか?」
「ああ、何か困ったことがあったらなんでも相談してくれ。僕に……いや、教員にできることがあれば何でもやらせてもらう」
そうして、教員たちは学長へ報告に行った。俺は異変をレジーナ先生に相談せず、そのまま訓練を続行してたまたま発見した教員たちを助けたという建前にしてもらった。
「ユーヤってもしかして彼女とかいないの?」
リーナが興味津々に聞いてくる。
「いや! 今はいないが前はいたしそういうのに興味ないんだよ。作ろうと思えばすぐに作れるし全然気にしてねえし」
あ、言ってから気づいた。
これ彼女欲しいけどいないやつに限って言うセリフなんだよな……あー恥ずかしい。
「へえ、いいこと聞いたわ」
リーナは妖しく微笑んだ。
「ユーヤはどんな女の子が好きなのかな?」
「そうだな、強気なんだけど実は弱くて、めちゃくちゃ優しくて頼りになって……後は顔が可愛い子がいいな」
ふとリーナを見る。
あれ、なんだかリーナの様子がおかしいぞ?
脚をモジモジさせて、首から上が真っ赤に紅潮している。
「ふ、ふーん! そうなんだ! まったく興味ないんだけどとても有益な情報を聞いたわ!」
なんのつもりで聞いたのかわからないのだが、俺の答えに満足したようだった。
俺は縛られていた教員の縄を解き、布を取ってやる。
リーナとエリスも俺にならって、手分けして解いた。
「本当にありがとう……ユーヤ君」
面識のない先生のはずなのだが、彼は俺のことを知っていた。
赤毛の……なんというか素朴な感じの人物である。
「僕は1-Aの担任をしているエリック・ウッドゲイトだ。まさか助けられるとはね……死を覚悟していたんだけど」
「冗談抜きであんたら六人は死にかけてたからな。……間に合ってよかったよ」
もしこの事件が一年前に起こっていたとしたら、彼らを助けられた者はいないだろう。レジーナ先生はガイドライン通りの対応をするだろうし、そうなれば手遅れだ。
全員の縄が解けた。
「じゃあ帰ろう……と言いたいところだが、助けた礼をしてもらわないとな」
「僕たちにできることならなんでも言ってください、ユーヤ君」
「ゴブリンリーダーを倒したことで、これ以上ゴブリンが増えることはない。だが、スライムには到底倒せる敵じゃない。だから先生たちには掃除を手伝ってもらう」
☆
ダンジョン第一層の大掃除が始まった。
三人ずつのパーティを組み、三手に分かれて掃除をする。
そうしないと次の訓練で使えないままになってしまうのだ。
ゴブリンを見つけ次第、剣で斬り殺すか、魔法で撃ち殺すか、殴って殺す。
教員は本来強いはずなのだ。不覚をとりさえしなければ。
「ん、あれは」
気づけば俺たちが着いたのは下層――第二層へと続く階段である。
その前には学院の紋章が入ったブレスレットが置いてあった。
「一応持って帰るか。訓練は続行って言っちゃったし」
俺はブレスレットを空間魔法で収納すると、その先に待ち構えていたゴブリンを剣で貫いた。
それから二時間後、ゴブリンはほとんど見なくなった。
他のパーティたちとも合流し、外に出たのだった。
☆
階段を上ると、ダンジョンの中が暗かったので、とても明るく感じる。
身体が溶けてしまいそうだ。
「レジーナ先生、戻りました。これ、一応ブレスレットです。訓練のついでにたまたま先生たちを見つけたので連れて帰った次第です」
レジーナ先生は無事に帰ってきた教員たちの姿を確認すると、涙を零した。
「ありがとう……本当に……ユーヤ君がいなかったら……」
ん?
確かに同僚を助けたことは感謝されてもおかしくはないのだが、何か引っかかる。
「レジーナ、今帰ったよ」
「エリック……よかった」
レジーナとエリックは抱き合っていた。
それで俺は理解した。
なるほど、理解した。つまりレジーナとエリックはいわゆるカレカノの仲だったというわけだ。
「ごめんなさい……私……あなたを見捨ててしまって」
『ガイドラインにこう書かれているから』と、大雑把に言えば見捨ててしまったことを謝っているのだろう。
「レジーナはただ仕事をしただけだよ。……僕は幸運だっただけさ。もし今年じゃなければ、ユーヤ君たちがいなかったら……その判断は正しかった。何も悪くなんだよ」
エリックがレジーナの頭を撫でる。
最初は「イイハナシダナァ」と思っていたのだが、段々とリア充を見ているとムカついてきた。
「イチャつくのは結構だがここは学校だから、わかりますよね?」
レジーナとエリックが同時にハッとしたような顔になる。
「す、すまない……生徒の前で。そ、そのとにかく今日はありがとう。今度改めてお礼を……」
「礼ならさっきやってもらった。気にすることはないですよ」
「ゴブリンの掃除のことかな? 後始末は本来教員の仕事なんだからあれでお礼を済ませた気にはなれないよ。僕たちの命の恩人なわけだしね」
ふむ、そういうものなのか。
エリックは律儀なやつだな。
「今すぐには何も思いつかないから、今日のことは貸しってことにしといてよ。それでいいですか?」
「ああ、何か困ったことがあったらなんでも相談してくれ。僕に……いや、教員にできることがあれば何でもやらせてもらう」
そうして、教員たちは学長へ報告に行った。俺は異変をレジーナ先生に相談せず、そのまま訓練を続行してたまたま発見した教員たちを助けたという建前にしてもらった。
「ユーヤってもしかして彼女とかいないの?」
リーナが興味津々に聞いてくる。
「いや! 今はいないが前はいたしそういうのに興味ないんだよ。作ろうと思えばすぐに作れるし全然気にしてねえし」
あ、言ってから気づいた。
これ彼女欲しいけどいないやつに限って言うセリフなんだよな……あー恥ずかしい。
「へえ、いいこと聞いたわ」
リーナは妖しく微笑んだ。
「ユーヤはどんな女の子が好きなのかな?」
「そうだな、強気なんだけど実は弱くて、めちゃくちゃ優しくて頼りになって……後は顔が可愛い子がいいな」
ふとリーナを見る。
あれ、なんだかリーナの様子がおかしいぞ?
脚をモジモジさせて、首から上が真っ赤に紅潮している。
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なんのつもりで聞いたのかわからないのだが、俺の答えに満足したようだった。
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