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第一章(約11万字)
第54話:気まぐれ
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アリアは、深呼吸をしてから答えた。
「仲間だって言ってもらえて、嬉しかったから。アリアじゃどうせカズヤを殺せないし、それならもう全部ぶちまけようって……ただの気まぐれ」
なるほど。
まあ、普通に考えて合理的な理由で秘密を話すようなことはないか。
可能性としては、アリアが俺たちに全てを正直に話した体で何か罠を仕掛けている——ということも考えられる。
この状態からかけられる罠があるとは思えないが……まあ、警戒はしておこう。
それよりも、アリアの発言からさらに気になったことがある。
「一つ気になったんだが、俺を殺せないっていうのはどういう意味だ?」
「……? 言葉通りの意味だけど」
「いや、アリアが俺を殺そうとしたことなんて一度もないだろ? 本当に殺す気があるなら、不意を突いて刺したりすれば良かったと思うんだ。アリアじゃ俺を殺せないって意味がわからない」
俺がこのように補足すると、アリアはなぜか呆れたような目を向けていた。
「いや……もう二回も仕掛けた。背中から刺すとかはアリアのステータスじゃどうせ無理だからしてないけど。強い魔物を呼び出して、カズヤを襲わせた」
「に、二回⁉︎ いつの間に⁉︎」
「……昨日と今日」
冒険者ギルドからの依頼で倒した魔物は俺たちのランク上の適正に合っているから除外するとして、考えられるのはその後の魔物か。
昨日の魔物たちは数が多いだけで大したことがなかったが、確かに今日戦ったエンシェント・ドラゴンは手強い相手だった。
「ということは、あのドラゴンはアリアさんが呼び出したってことなんですか⁉︎」
「……そう」
「驚いた。……全然気付かなかったな」
「こんな感じだから、もうアリアじゃ無理だと思ったってわけ」
なるほ……いや、待てよ?
アリアの話には、一つ矛盾があることに俺は気がついた。
「だとしたら、どうしてエンシェント・ドラゴンはアリアを襲ったんだ? 危うくアリアが死ぬかもしれなかったって……さすがにおかしくないか?」
「あれは……アリア、本当に殺されかけてて危なかった。カズヤが助けてくれなかったら死んでた。魔物が強すぎてコントロールできなくなって、死ぬのを覚悟してた」
やっぱり、あれは危なかったのか。
……というか、いつの間にか俺を殺そうとしていた敵の命を救ってしまっていたらしい。
「カズヤ、色々と鈍すぎ」
「……」
俺からすると唐突な告白だったのだが、アリアにとっては手を尽くした後だったのか……。
「つまり、アリアさんはカズヤさんに恩を感じて話してくれたってことですか?」
「そうじゃないけど……いや、そう。気付かれてなかったけど、酷いことしたのに優しくしてくれて……こんなこと初めてだったから」
「でも、俺たちに話しちゃったら魔族にとっては都合が悪いんじゃないのか? こんなことしてアリアは平気なのか?」
「……アリアの心配してくれるんだ」
アリアは少し嬉しそうに微笑んだ後、話を続けた。
「多分、裏切ったことがバレたらアリアは殺される」
「……っ!」
「でも別にいい。本来は今日あの場で死んでいた命だし、魔大陸に戻ったところで、また別のミッションが与えられるだけ。ハーフなんて、所詮はエセ魔族扱い。本物の魔族様に服従するだけの人生なら、いっそのこと死んだほうが……ごめん。何でもない」
……。
雰囲気から察するに、アリアたち魔族と人間のハーフは、魔族からあまり良い扱いを受けていないようだ。
ようやく、アリアが自分の不利になることを話してくれた理由が見えてきた気がする。
「アリア」
「……なに?」
「それなら、俺たちと一緒についてこないか?」
「仲間だって言ってもらえて、嬉しかったから。アリアじゃどうせカズヤを殺せないし、それならもう全部ぶちまけようって……ただの気まぐれ」
なるほど。
まあ、普通に考えて合理的な理由で秘密を話すようなことはないか。
可能性としては、アリアが俺たちに全てを正直に話した体で何か罠を仕掛けている——ということも考えられる。
この状態からかけられる罠があるとは思えないが……まあ、警戒はしておこう。
それよりも、アリアの発言からさらに気になったことがある。
「一つ気になったんだが、俺を殺せないっていうのはどういう意味だ?」
「……? 言葉通りの意味だけど」
「いや、アリアが俺を殺そうとしたことなんて一度もないだろ? 本当に殺す気があるなら、不意を突いて刺したりすれば良かったと思うんだ。アリアじゃ俺を殺せないって意味がわからない」
俺がこのように補足すると、アリアはなぜか呆れたような目を向けていた。
「いや……もう二回も仕掛けた。背中から刺すとかはアリアのステータスじゃどうせ無理だからしてないけど。強い魔物を呼び出して、カズヤを襲わせた」
「に、二回⁉︎ いつの間に⁉︎」
「……昨日と今日」
冒険者ギルドからの依頼で倒した魔物は俺たちのランク上の適正に合っているから除外するとして、考えられるのはその後の魔物か。
昨日の魔物たちは数が多いだけで大したことがなかったが、確かに今日戦ったエンシェント・ドラゴンは手強い相手だった。
「ということは、あのドラゴンはアリアさんが呼び出したってことなんですか⁉︎」
「……そう」
「驚いた。……全然気付かなかったな」
「こんな感じだから、もうアリアじゃ無理だと思ったってわけ」
なるほ……いや、待てよ?
アリアの話には、一つ矛盾があることに俺は気がついた。
「だとしたら、どうしてエンシェント・ドラゴンはアリアを襲ったんだ? 危うくアリアが死ぬかもしれなかったって……さすがにおかしくないか?」
「あれは……アリア、本当に殺されかけてて危なかった。カズヤが助けてくれなかったら死んでた。魔物が強すぎてコントロールできなくなって、死ぬのを覚悟してた」
やっぱり、あれは危なかったのか。
……というか、いつの間にか俺を殺そうとしていた敵の命を救ってしまっていたらしい。
「カズヤ、色々と鈍すぎ」
「……」
俺からすると唐突な告白だったのだが、アリアにとっては手を尽くした後だったのか……。
「つまり、アリアさんはカズヤさんに恩を感じて話してくれたってことですか?」
「そうじゃないけど……いや、そう。気付かれてなかったけど、酷いことしたのに優しくしてくれて……こんなこと初めてだったから」
「でも、俺たちに話しちゃったら魔族にとっては都合が悪いんじゃないのか? こんなことしてアリアは平気なのか?」
「……アリアの心配してくれるんだ」
アリアは少し嬉しそうに微笑んだ後、話を続けた。
「多分、裏切ったことがバレたらアリアは殺される」
「……っ!」
「でも別にいい。本来は今日あの場で死んでいた命だし、魔大陸に戻ったところで、また別のミッションが与えられるだけ。ハーフなんて、所詮はエセ魔族扱い。本物の魔族様に服従するだけの人生なら、いっそのこと死んだほうが……ごめん。何でもない」
……。
雰囲気から察するに、アリアたち魔族と人間のハーフは、魔族からあまり良い扱いを受けていないようだ。
ようやく、アリアが自分の不利になることを話してくれた理由が見えてきた気がする。
「アリア」
「……なに?」
「それなら、俺たちと一緒についてこないか?」
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