30 / 105
第一章(約11万字)
第29話:受注制限
しおりを挟む
◇
何事もなく朝を迎え、俺たちは冒険者ギルドへとやってきた。
今日からようやく依頼を受けられる。
ということで、早速掲示板に貼られている依頼書を物色していたのだが――
「う~ん、どれも安いな……」
「そうですね……。Fランクだと簡単な依頼しか受けられないので仕方ないですが……」
冒険者はランクごとに受けられる依頼が決まっているのだが、新人であるFランク向けの依頼はどれも簡単なものばかり。
依頼内容が簡単なので、報酬も当然安かった。
例えば、街の中での簡単な配達や清掃、上位冒険者の雑用などばかり。
報酬はほとんどが自給九百ジュエル程度。
ざっくりとした感覚だが、一ジュエル=一円くらいの相場観なので、自給九百円くらいの雑用しかないといった感じだ。
「地道にコツコツ依頼をこなせばランクは上がるので、それまでの辛抱です……! そ、それまでは野宿でもなんでもして耐えましょう……!」
冒険者になればすぐにお金を稼げると思っていたので、悪い意味で期待を裏切られてしまった。
シーナは貧乏生活を受け入れる姿勢だが、俺だけならともかく、俺の甲斐性がないばかりにシーナにまで野宿させたくはない。
何か、割の良い依頼はないかと探していたところ――
「ん、これは……」
「どうかしましたか?」
「これを見てくれ。結構良くないか?」
俺が見つけたのは、魔物の討伐依頼だった。
アーネスから北に向かった場所にあるアーネス森林で、ジャイアント・ベアーを三体倒してくれという内容である。
報酬はなんと三万ジュエル。
Fランクの中では、群を抜いて報酬が良い。
「討伐依頼もあったのですね! ジャイアント・ベアーならカズヤさんも私も問題なく倒せるでしょうし問題な……あっ、問題ありました」
「え?」
「ここを見てください」
シーナは依頼書の隅に書かれた注意事項を指差した。
「この依頼は、受注制限がかかっているんです」
「受注制限?」
「依頼を受けるためには、ランク以外に満たさなきゃいけない条件があるということです。この依頼の場合は……三人以上のパーティでの受注が必須ということになっていますね……」
「俺とシーナだけじゃダメってことか……なんだよそれ」
せっかく良い依頼を見つけたと思ったのに、受けられないとは。
また振り出しに……いや、待てよ?
「でも、逆に言えば誰か一人誘えば受けられるってことだよな?」
「それはそうですが……」
「魔物自体は俺とシーナで倒せる。だから、数合わせに誰でもいいから一人誘えばいい。報酬は均等に分ける約束なら見つけられたりするんじゃないか?」
「……! 確かに、この依頼は報酬も良いですし、ランクアップに必要なギルドポイントの数も多いです。良い案かもしれませんね!」
「よし、そうと決まれば早速――」
と、近くにいる冒険者たちに片っ端から声を掛けようと依頼書を剥がしたその時だった。
「困ってるなら、パーティ組んであげてもいいよ?」
背後から、幼い女の子の声が聞こえてきた。
何事もなく朝を迎え、俺たちは冒険者ギルドへとやってきた。
今日からようやく依頼を受けられる。
ということで、早速掲示板に貼られている依頼書を物色していたのだが――
「う~ん、どれも安いな……」
「そうですね……。Fランクだと簡単な依頼しか受けられないので仕方ないですが……」
冒険者はランクごとに受けられる依頼が決まっているのだが、新人であるFランク向けの依頼はどれも簡単なものばかり。
依頼内容が簡単なので、報酬も当然安かった。
例えば、街の中での簡単な配達や清掃、上位冒険者の雑用などばかり。
報酬はほとんどが自給九百ジュエル程度。
ざっくりとした感覚だが、一ジュエル=一円くらいの相場観なので、自給九百円くらいの雑用しかないといった感じだ。
「地道にコツコツ依頼をこなせばランクは上がるので、それまでの辛抱です……! そ、それまでは野宿でもなんでもして耐えましょう……!」
冒険者になればすぐにお金を稼げると思っていたので、悪い意味で期待を裏切られてしまった。
シーナは貧乏生活を受け入れる姿勢だが、俺だけならともかく、俺の甲斐性がないばかりにシーナにまで野宿させたくはない。
何か、割の良い依頼はないかと探していたところ――
「ん、これは……」
「どうかしましたか?」
「これを見てくれ。結構良くないか?」
俺が見つけたのは、魔物の討伐依頼だった。
アーネスから北に向かった場所にあるアーネス森林で、ジャイアント・ベアーを三体倒してくれという内容である。
報酬はなんと三万ジュエル。
Fランクの中では、群を抜いて報酬が良い。
「討伐依頼もあったのですね! ジャイアント・ベアーならカズヤさんも私も問題なく倒せるでしょうし問題な……あっ、問題ありました」
「え?」
「ここを見てください」
シーナは依頼書の隅に書かれた注意事項を指差した。
「この依頼は、受注制限がかかっているんです」
「受注制限?」
「依頼を受けるためには、ランク以外に満たさなきゃいけない条件があるということです。この依頼の場合は……三人以上のパーティでの受注が必須ということになっていますね……」
「俺とシーナだけじゃダメってことか……なんだよそれ」
せっかく良い依頼を見つけたと思ったのに、受けられないとは。
また振り出しに……いや、待てよ?
「でも、逆に言えば誰か一人誘えば受けられるってことだよな?」
「それはそうですが……」
「魔物自体は俺とシーナで倒せる。だから、数合わせに誰でもいいから一人誘えばいい。報酬は均等に分ける約束なら見つけられたりするんじゃないか?」
「……! 確かに、この依頼は報酬も良いですし、ランクアップに必要なギルドポイントの数も多いです。良い案かもしれませんね!」
「よし、そうと決まれば早速――」
と、近くにいる冒険者たちに片っ端から声を掛けようと依頼書を剥がしたその時だった。
「困ってるなら、パーティ組んであげてもいいよ?」
背後から、幼い女の子の声が聞こえてきた。
12
お気に入りに追加
1,009
あなたにおすすめの小説
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」
ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。
理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。
追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。
そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。
一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。
宮廷魔術師団長は知らなかった。
クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。
そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。
「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。
これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。
ーーーーーー
ーーー
※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。
見つけた際はご報告いただけますと幸いです……
拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~
荒井竜馬
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。
=========================
<<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>>
参加時325位 → 現在5位!
応援よろしくお願いします!(´▽`)
=========================
S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。
ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。
崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。
そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。
今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。
そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。
それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。
ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。
他サイトでも掲載しています。
S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。
しかし、ある日――
「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」
父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。
「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」
ライルは必死にそうすがりつく。
「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」
弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。
失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。
「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。
だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる
グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。
『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。
2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。
主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる