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真・らぶ・TRY・あんぐる 四十二

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「母さん、あのことは」
突然過ぎた息子の問いに、佑美は少し首をかしげたがすぐに思い至り、微笑んで
「大丈夫、誰にも言ってなくってよ」
それでもまだ不安そうな佑を落ち着かせるように
「安心なさいな。 これからも誰にも言わなくってよ?」
と耳打ちし、『うふっ』と笑った。
その笑みを見て、佑は佑美の意図とは逆に不安にかられたのだから、つくづく心配性なタチであった。



次の日の放課後、佑は留美の家に連れ込まれた。
無論、佑の主観での話で、留美の言葉によると
「佑クンをパパとママに紹介したいから」
いいほど紹介されている気もするのだが、正式には紹介していないと言えばそうなのであった。
で、留加は喜色満面で、今にも躍り上がって喜びそうな雰囲気なのだった。
恒太郎の方は渋い顔をしていたが、少なくとも佑を追い出したりはしなかった。
「留美をお願いしますね、佑さん」
「あ、は、はい」
佑の心境は非常に複雑であったがそう答えざるを得ない状況である。
「……………………留美をよろしく、佑くん」
「あんた! もうちょっと愛想よくできないのかい?」
留加は恒太郎の愛想のなさにかなりカチンと来ていたようだ。
「また先輩に来ていただきたいってんだね?」
その言葉に恒太郎は一瞬硬直し、態度をコロッと変えた。
「佑くん、よく来てくれました。 当家は君を歓迎しますよ。 なあ?」
高津以下部下一同は声を揃えた。
「はい! 歓迎致します坊ちゃん!」
留美は父の反応の変化に少しびっくりしたが、まあ割によくある事なのであえて疑問は挟まない。
「じゃ、あたしの部屋にいきましょ?」
佑の手を引いて自室へ誘おうとした留美はちょっと振り返り
「ママ? お茶とか持って来なくてもいいからね?」
そう念を押して微笑むと、留加も
「ああ、わかってるさ」
と意味ありげにウィンクをした。
「パパとママ、これから買い物に出かけるからね?」
あんたたちも一緒だよ、とこれは夫の部下たちに言い、今度は佑に
「そういうわけで、何のお構いもできませんけどゆっくりしてって下さいね?」
「は、はあ……」
またも状況に流されていくのをひしひしと感じる佑だった。


そしてここは留美の部屋。 佑は、レースとぬいぐるみとマスコットに彩られて女の子女の子した部屋に緊張気味だった。
いくらなんでも彼女の部屋に恒太郎の趣味は入っていないわけだが、あまり父親が出入りするところでもないから当然である。 それにご承知の通り、恒太郎はかなり留美に甘いのだ。
「佑クン? ほんと言うと今日来てもらったのはね、パパやママに佑クンを紹介するだけじゃないの」
「えっ?」
改まってそんなことを言われ、佑は更に身を硬直させたが
「佑クンにお礼がしたくて」
にこやかに言われて、ほっと胸を撫で下ろす。 とはいっても、特にお礼を言われるような事をした覚えがないので
「お礼なんて、そんな」
と辞退しようとしたが、留美は構わず
「パパとママが仲直りしたのも、冴英ちゃんみたいにあたしを慕ってくれる妹」
自分の言葉につい苦笑して
「あは。 ちょっと気が早かったかな? まだ妹分てトコだよね?……に会えたのも」
嬉しそうに続ける。 今度は顔を少し赤らめながら
「そして、危ないとこを助けてくれたよね」
ボロボロになりながらも自分や由香をかばってくれた時のことを思い出したらしく、瞳を潤ませながら
「みんなみんな、佑クンのおかげ……あたし、佑クンを好きになってほんとにほんとによかった」
そういって目を閉じ、少し仰のく。
無言の、キスのおねだりの姿勢であった。
しかし、事ここに至り、とうとう佑は決意した。
なけなしの勇気をふりしぼり、それでも足りなければどこかから借りてきてでも留美に告白する事をである。

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