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真・らぶ・TRY・あんぐる 三十一

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さて、時間は少しさかのぼり、留美と由香をかばってケガをした佑が医務室に運ばれて行ったその直後。

育嶋家の電話が鳴った。
素早く佑美が電話を受ける。
「はい、育嶋でございます」
こういう場合には例の『でしてよ』という言い回しは使わないらしい。
「え? はい、……はい……で、容態の方は……はあ、全治一週間。 はい……はい、わかりました。 失礼致します」
冴英が興味津々といった感じで
「ね、ママ? どこから?」
一般的な母親なら娘をたしなめるかも知れないが、そうでない佑美は冴英とそれから英介に向かって
「学園高等部の医務室からでしてよ。 佑が大ケガをしたそうよ。 なんでも全治一週間、自宅療養も可能だそうでしてよ?」
そう言って目を伏せる。
「どうも最近、妙だ、と思っていたけれど、ぼーっと歩いていて車にでもぶつかったのかしらね?」
英介の行動は早かった。
佑美の言った『大ケガ』という単語を聞いた途端、佑を迎えに行く準備をしていたのだ。
ほとんど消防隊の出動もかくや、と思わせるその早さは、彼も決して息子をないがしろにしているのではない、と伺わせる。
「それじゃ行ってきますね、佑美さん」
そう言って、小学生の娘の前にもかかわらず妻にキスをする。
当然、ディープなやつではないが。
佑美は軽く笑って見送った。
それを見ながら
「いいなーママとパパ、仲良くて……あたしにもパパみたいな相手、見つかるかなあ?」
佑美はニコ、と微笑み
「当たり前でしてよ? 何ていっても冴英ちゃんはママの、このあたくしの娘なのですからね?」
母の言葉に、軽くほお紅をつけたような顔で
「えへへ……」
と照れ笑いすると
「でも、お兄ちゃん大丈夫なの?」
と今更ながらの疑問を少し不安そうに口にした。
こういった時でも、『両親の仲睦まじさ』や『自分も母のように、ステキな相手と出逢えるか?』の次にやっと『兄の安否』が来るのは、彼女の心の中で佑がどういう位置にあるか、を象徴的に示しているといえよう。
「なにも心配する事はなくってよ?」
少しは心配してやって欲しいものである。
「全治一週間なんてちょっとしたケガでしてよ」
娘を安心させる方便とはいえ『そりゃあんまりな!』言い草であった。
佑だからこそ、その程度で何とか済んだのである。
しかし、今の佑の状態を目の当たりにすれば、冴英はもとより佑美と英介だって驚くだろう、と思われる。


多分。

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