16 / 75
真・らぶ・CAL・てっと 十五
しおりを挟む
そして、衣更えの当日のこと。
治がなかなかS・C部室に現れないので佑は不思議に思っていた。
(北条、どうしたんだろ?)
なんだかんだで可愛い後輩のことが気になるのである。
もちろんこの『可愛い』は、『美貌の』という意味と、『かわいがっている』という意味を両方含む。
その『気になる』は、やがて『心配』に成長し、『不安』へと進化した。
「よし!」
ついに佑は、治の担任教師のもとへ問い合わせに向かったのだった。
(べ、別に部活の後輩のこと尋ねるくらい、普通だよね……?)
などと思いながら。
「北条くん? 今日は欠席してるわよ?」
ことも無げにそういう常桐美里先生。
その『ことも無げ』な態度に、内心ホッとした佑。
が、一抹の不安を晴らすため
「北条……、いえ、北条くんは具合がわるいんでしょうか?」
と尋ねた。
「大丈夫だと思うわ。 北条くんのお父さんは『し明後日には登校させます』って仰ってたから」
心配そうな様子の佑を安心させるため……ばかりではなく、本当に大事ではないとわかっている様子の美里先生。
余談になるが……
佑からは先輩に当たる……ということは、井沢正と同い年の常桐ツインズ・光雄・明雄の母親なのだが、とてもそのような大きな子供がいるようには見えない若々しさ。 生徒にもそこそこ人気があるのも頷ける。
尤も、佑の母・佑美だって相当な若作りなうえに超美人なのだから、別に驚くことはないはずだが、つい感心してしまうのだ。
これはつまり、美人のタイプの傾向が違うためだろう。
閑話休題。
美里先生の様子を見て、ほんとうに心配はいらない、と九十九パーセントまで安心したが、それでも万が一ということがある。
取り越し苦労の性格は、ちっとやそっとでは直らないようだった。
週が明けて、月曜日。
登校途中で治と茗の二人連れを見つけた佑は近寄り、後ろから治の肩を軽く叩いて声をかけた。
「おはよう、北条、飛騨野さん」
「あ、せ、先輩……」
「おはようございます! 育嶋センパイ!」
戸惑った様子の治と、従兄弟とは対照的な茗の元気な挨拶である。
治の顔をのぞき込むようにして佑は
「先週の金曜日、休んだでしょ北条? 体は大丈夫? 急に薄着になったから体調崩したんじゃないかい?」
「え、ええっ? いや、そうじゃなくて……」
沈んだ様子で何か考え事をしていたらしく、とっさに返事の出来ない治に代わって茗が説明する。
「ああ、違うんですよ。 治くん、定期検診があって休んだんです」
「え、定期検診?」
たまたまちょうど衣更えの日に、『定期検診』とやらのため学校を休んだという。
「ああ、それで」
いつもなら由香と同じく朝練で早出の筈の茗が、今頃の時間に従兄弟とゆっくり登校しているのは、つまりそういうわけだったのである。
「それでですね」
佑が洩らした感嘆符を何か勘違いした茗が話しはじめた。
彼女の話によると、医者が首を傾げるくらい奇跡的な回復だそうなのだ。
まだ油断は出来ない、とも言ったらしいが、負け惜しみもいいところだった。
両親の喜ぶまいことか。
そして、治は二人にこう言ったという。
「ぼく、先輩と一緒にいると、どんどん元気になれそうなんだ」
治はもちろん知っている。
それが『なれそう』ではなく『なれる』のだということを。
しかし、そこまで言うとあまりにも佑に負担をかけてしまいそうなので、怖かったのだ。
言うまでもなく、彼に迷惑をかけるのが怖かった、のである。
だが、北条夫妻にとってはそれだけで充分であった。
現に、息子の病状はどんどん回復しているのである。
佑に何らかの礼をしたい、と考えても無理はない。
佑がそれを事前に知れば『もうお気持ちだけで』と思ったろう。
思うだけで言えないのが彼の限界でもあるが。
放課後、部活が終わった後のこと。
佑と治は、例によって一緒に下校していた。
家が在る方向が同じなので、何らかの事情がない限り、途中までは連れ立って歩くことになるのだ。
だが、今日の治の様子はおかしかった。
妙に上の空なのである。
朝の登校中だけなら寝ぼけてた可能性もあるが、部活の最中や今現在もその調子なのだから只事ではない。
内心、佑は心配していた。
と、治は急に佑の目を見て
「先輩、今日これからお暇ですか……?」
少しは考えてから言葉を出した方がいいことをまだ学習していない佑が、なんの気なしに答える。
「え、今日? うーん、特にやる事もなかったはずだけど」
それを聞き、上目づかいになりもじもじとお願いをする治。
「だったら、これから先輩のおうちに伺わせてもらってもいいですか?」
「え」
佑は嫌な予感がした。
留美のときも、それから話がややこしくなったのだ。
結果オーライだったとはいえ『それはそれ』であった。
だったら断ればいいのだが、とっさにそんな器用なことができるならこんな巡り合わせにはなっていないのである。
というわけで、断りきれなかった結果として治は今、佑の部屋にいる。
もっとも、これに至る経緯というものはあったのであるが。
「まあ、いらっしゃい。 佑くんのお友達が来るなんて、珍しい事もあるものね?」
「か、母さん」
とか言えれば大したものなのだが、言えないのが佑なのである。
「く、クラブの後輩の北条くん」
と紹介する佑。
「あら、そう」
相手が男の子なので、特に興味を示さない佑美。
だが、治の次のセリフで事態は大変化した。
「あ、お姉様、ですか?」
佑美の態度がいっぺんに一変する。
「いや、母なんだよ……」
困った事に、とつけ加えたいが、それはあまりにも恐ろしい。
「北条くんっていうの? まあ、なんて可愛らしい子なんでしょう」
ろ、露骨な……と佑は思ったが、もちろん治はそんなことは思わない。
本気で佑美のことを佑の姉だと思っていたのだ。
目の検査を受ける必要が、少々あるかもしれない。
もっとも、佑美は気が若く、体質的に老化が遅い上に若作りであった。
だから治には、実母・佐智子や叔母・三千子よりかなり若く見えたのも事実であるし、しかたがない。
だがしかし、いくらなんでも佑の『姉』というのは無理がある。 『目の検査を受ける必要がある』という所以である。
「え、お母さまなんですか?」
「ええ、そうでしてよ?」
にこにこと治を見つめる佑美。 己の額を押さえる佑。
「どうも失礼しました」
ぺこ、と頭を下げる治。
佑美はにこにこと
「いいえ、全然失礼じゃなくってよ?」
と告げた。
(か、母さんてば……)
佑は頭痛を感じた。
別にカゼの初期症状ではない。
「あの……実は」
治がおずおずと言葉をつぐ。
「ぼくのおと……いえ両親が」
お父さん、と言おうとした様子だ。
「ご両親が?」
『お父さん』と言おうとした治に、そしらぬ顔をして促す佑美。
「先輩に……佑さんに物凄く感謝してて」
佑美は首をかしげた。
「どうして?」
「そ、それは……」
治は困った。
どう言っていいのか分からなかったのである。
仕方なく
「と、ともかく! お礼を言いたいらしくて」
上の空なのは、感謝しているその理由を考えていたから、だったのである。
そして、どう切り出そうかと考えてもいたのだった。
結局、考えつかなかったようであるが。
「それで、先輩にご無理を」
「まあ! 佑くんにならどんな無理を言ったって良くってよ? 鍛えてますからね」
ますます頭痛がひどくなる佑だった。
治は戸惑いながらも
「ご……ご無理をいって、お家を教えていただいたんです。 後日、両親が挨拶に来るとおもいます」
「そんなこと、お気になさらず、と伝えて?」
「は、はあ……」
佑と同じような反応に、慎み深い人なんだなと思った治。
無論それは間違っている。
と、その時、冴英が帰ってきた。
「ただいまー」
彼女も中学生になって、部活動をしているのだ。
かくて、佑よりも帰宅が遅い事もあるのであった。
「あ、こんにちは」
頭を下げる治を見て冴英はポッ、と顔を赤らめた。
「こ、こんにちは」
(え?)
佑は不思議に思った。
今まで、妹のそんな反応を見たことはなかったからだ。
まあ確かに、友人をあまり家につれてきた事はない佑ではあるが、それにしても珍しい反応なのだった。
確かに治は美少年だが、佑はそれほどこだわらないから、想像の範疇を越えていたのだった。
少しは気にしろ、と読者諸氏も言いたくなるだろう。
まあ、それはさておいて。
ともかく、佑は治を自分の部屋に連れてきた。
治にとってはドキドキものだったが、佑は別の意味でドキドキしていた。
「先輩……」
「お、落ちついてね、北条……」
落ち着けるわけがない。
憧れの先輩の部屋にいるのだ。
これを落ちつくわけにはいかない。
「先輩……」
治は『受け攻め』で言うなら『受け』であるから、押し倒すのはいささか問題があるが、佑の方はそんなことは知らない。
「キスしてくれますか?」
留美や由香相手でも戸惑うような事を治に言われて、どうしたらいいかと迷わない佑ではない。
「えっ!? ええええっ?」
「ここなら人目もありません」
そりゃ人目はないだろうが、自分の部屋なのである。
そんなに長い間するつもりはもとよりないが、たまたま運悪く偶然に家族が入ってきたらどうするのだ。
確かに、治の唇は甘美に感じた。
だが自分には二人も恋人がいる上に、彼は彼というくらいだから男なのである。
佑の性格的にすぐ割り切れるものではない。
「この部屋、カギがかからないから」
「一度でいいんです。 先輩から……」
治の耳には入っていないようだ。
「いや、だからね北条」
その時、ドアがノックされた。
天の助け!と佑が思ったのも無理はない。
治がなかなかS・C部室に現れないので佑は不思議に思っていた。
(北条、どうしたんだろ?)
なんだかんだで可愛い後輩のことが気になるのである。
もちろんこの『可愛い』は、『美貌の』という意味と、『かわいがっている』という意味を両方含む。
その『気になる』は、やがて『心配』に成長し、『不安』へと進化した。
「よし!」
ついに佑は、治の担任教師のもとへ問い合わせに向かったのだった。
(べ、別に部活の後輩のこと尋ねるくらい、普通だよね……?)
などと思いながら。
「北条くん? 今日は欠席してるわよ?」
ことも無げにそういう常桐美里先生。
その『ことも無げ』な態度に、内心ホッとした佑。
が、一抹の不安を晴らすため
「北条……、いえ、北条くんは具合がわるいんでしょうか?」
と尋ねた。
「大丈夫だと思うわ。 北条くんのお父さんは『し明後日には登校させます』って仰ってたから」
心配そうな様子の佑を安心させるため……ばかりではなく、本当に大事ではないとわかっている様子の美里先生。
余談になるが……
佑からは先輩に当たる……ということは、井沢正と同い年の常桐ツインズ・光雄・明雄の母親なのだが、とてもそのような大きな子供がいるようには見えない若々しさ。 生徒にもそこそこ人気があるのも頷ける。
尤も、佑の母・佑美だって相当な若作りなうえに超美人なのだから、別に驚くことはないはずだが、つい感心してしまうのだ。
これはつまり、美人のタイプの傾向が違うためだろう。
閑話休題。
美里先生の様子を見て、ほんとうに心配はいらない、と九十九パーセントまで安心したが、それでも万が一ということがある。
取り越し苦労の性格は、ちっとやそっとでは直らないようだった。
週が明けて、月曜日。
登校途中で治と茗の二人連れを見つけた佑は近寄り、後ろから治の肩を軽く叩いて声をかけた。
「おはよう、北条、飛騨野さん」
「あ、せ、先輩……」
「おはようございます! 育嶋センパイ!」
戸惑った様子の治と、従兄弟とは対照的な茗の元気な挨拶である。
治の顔をのぞき込むようにして佑は
「先週の金曜日、休んだでしょ北条? 体は大丈夫? 急に薄着になったから体調崩したんじゃないかい?」
「え、ええっ? いや、そうじゃなくて……」
沈んだ様子で何か考え事をしていたらしく、とっさに返事の出来ない治に代わって茗が説明する。
「ああ、違うんですよ。 治くん、定期検診があって休んだんです」
「え、定期検診?」
たまたまちょうど衣更えの日に、『定期検診』とやらのため学校を休んだという。
「ああ、それで」
いつもなら由香と同じく朝練で早出の筈の茗が、今頃の時間に従兄弟とゆっくり登校しているのは、つまりそういうわけだったのである。
「それでですね」
佑が洩らした感嘆符を何か勘違いした茗が話しはじめた。
彼女の話によると、医者が首を傾げるくらい奇跡的な回復だそうなのだ。
まだ油断は出来ない、とも言ったらしいが、負け惜しみもいいところだった。
両親の喜ぶまいことか。
そして、治は二人にこう言ったという。
「ぼく、先輩と一緒にいると、どんどん元気になれそうなんだ」
治はもちろん知っている。
それが『なれそう』ではなく『なれる』のだということを。
しかし、そこまで言うとあまりにも佑に負担をかけてしまいそうなので、怖かったのだ。
言うまでもなく、彼に迷惑をかけるのが怖かった、のである。
だが、北条夫妻にとってはそれだけで充分であった。
現に、息子の病状はどんどん回復しているのである。
佑に何らかの礼をしたい、と考えても無理はない。
佑がそれを事前に知れば『もうお気持ちだけで』と思ったろう。
思うだけで言えないのが彼の限界でもあるが。
放課後、部活が終わった後のこと。
佑と治は、例によって一緒に下校していた。
家が在る方向が同じなので、何らかの事情がない限り、途中までは連れ立って歩くことになるのだ。
だが、今日の治の様子はおかしかった。
妙に上の空なのである。
朝の登校中だけなら寝ぼけてた可能性もあるが、部活の最中や今現在もその調子なのだから只事ではない。
内心、佑は心配していた。
と、治は急に佑の目を見て
「先輩、今日これからお暇ですか……?」
少しは考えてから言葉を出した方がいいことをまだ学習していない佑が、なんの気なしに答える。
「え、今日? うーん、特にやる事もなかったはずだけど」
それを聞き、上目づかいになりもじもじとお願いをする治。
「だったら、これから先輩のおうちに伺わせてもらってもいいですか?」
「え」
佑は嫌な予感がした。
留美のときも、それから話がややこしくなったのだ。
結果オーライだったとはいえ『それはそれ』であった。
だったら断ればいいのだが、とっさにそんな器用なことができるならこんな巡り合わせにはなっていないのである。
というわけで、断りきれなかった結果として治は今、佑の部屋にいる。
もっとも、これに至る経緯というものはあったのであるが。
「まあ、いらっしゃい。 佑くんのお友達が来るなんて、珍しい事もあるものね?」
「か、母さん」
とか言えれば大したものなのだが、言えないのが佑なのである。
「く、クラブの後輩の北条くん」
と紹介する佑。
「あら、そう」
相手が男の子なので、特に興味を示さない佑美。
だが、治の次のセリフで事態は大変化した。
「あ、お姉様、ですか?」
佑美の態度がいっぺんに一変する。
「いや、母なんだよ……」
困った事に、とつけ加えたいが、それはあまりにも恐ろしい。
「北条くんっていうの? まあ、なんて可愛らしい子なんでしょう」
ろ、露骨な……と佑は思ったが、もちろん治はそんなことは思わない。
本気で佑美のことを佑の姉だと思っていたのだ。
目の検査を受ける必要が、少々あるかもしれない。
もっとも、佑美は気が若く、体質的に老化が遅い上に若作りであった。
だから治には、実母・佐智子や叔母・三千子よりかなり若く見えたのも事実であるし、しかたがない。
だがしかし、いくらなんでも佑の『姉』というのは無理がある。 『目の検査を受ける必要がある』という所以である。
「え、お母さまなんですか?」
「ええ、そうでしてよ?」
にこにこと治を見つめる佑美。 己の額を押さえる佑。
「どうも失礼しました」
ぺこ、と頭を下げる治。
佑美はにこにこと
「いいえ、全然失礼じゃなくってよ?」
と告げた。
(か、母さんてば……)
佑は頭痛を感じた。
別にカゼの初期症状ではない。
「あの……実は」
治がおずおずと言葉をつぐ。
「ぼくのおと……いえ両親が」
お父さん、と言おうとした様子だ。
「ご両親が?」
『お父さん』と言おうとした治に、そしらぬ顔をして促す佑美。
「先輩に……佑さんに物凄く感謝してて」
佑美は首をかしげた。
「どうして?」
「そ、それは……」
治は困った。
どう言っていいのか分からなかったのである。
仕方なく
「と、ともかく! お礼を言いたいらしくて」
上の空なのは、感謝しているその理由を考えていたから、だったのである。
そして、どう切り出そうかと考えてもいたのだった。
結局、考えつかなかったようであるが。
「それで、先輩にご無理を」
「まあ! 佑くんにならどんな無理を言ったって良くってよ? 鍛えてますからね」
ますます頭痛がひどくなる佑だった。
治は戸惑いながらも
「ご……ご無理をいって、お家を教えていただいたんです。 後日、両親が挨拶に来るとおもいます」
「そんなこと、お気になさらず、と伝えて?」
「は、はあ……」
佑と同じような反応に、慎み深い人なんだなと思った治。
無論それは間違っている。
と、その時、冴英が帰ってきた。
「ただいまー」
彼女も中学生になって、部活動をしているのだ。
かくて、佑よりも帰宅が遅い事もあるのであった。
「あ、こんにちは」
頭を下げる治を見て冴英はポッ、と顔を赤らめた。
「こ、こんにちは」
(え?)
佑は不思議に思った。
今まで、妹のそんな反応を見たことはなかったからだ。
まあ確かに、友人をあまり家につれてきた事はない佑ではあるが、それにしても珍しい反応なのだった。
確かに治は美少年だが、佑はそれほどこだわらないから、想像の範疇を越えていたのだった。
少しは気にしろ、と読者諸氏も言いたくなるだろう。
まあ、それはさておいて。
ともかく、佑は治を自分の部屋に連れてきた。
治にとってはドキドキものだったが、佑は別の意味でドキドキしていた。
「先輩……」
「お、落ちついてね、北条……」
落ち着けるわけがない。
憧れの先輩の部屋にいるのだ。
これを落ちつくわけにはいかない。
「先輩……」
治は『受け攻め』で言うなら『受け』であるから、押し倒すのはいささか問題があるが、佑の方はそんなことは知らない。
「キスしてくれますか?」
留美や由香相手でも戸惑うような事を治に言われて、どうしたらいいかと迷わない佑ではない。
「えっ!? ええええっ?」
「ここなら人目もありません」
そりゃ人目はないだろうが、自分の部屋なのである。
そんなに長い間するつもりはもとよりないが、たまたま運悪く偶然に家族が入ってきたらどうするのだ。
確かに、治の唇は甘美に感じた。
だが自分には二人も恋人がいる上に、彼は彼というくらいだから男なのである。
佑の性格的にすぐ割り切れるものではない。
「この部屋、カギがかからないから」
「一度でいいんです。 先輩から……」
治の耳には入っていないようだ。
「いや、だからね北条」
その時、ドアがノックされた。
天の助け!と佑が思ったのも無理はない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】お飾りではなかった王妃の実力
鏑木 うりこ
恋愛
王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。
「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」
しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。
完結致しました(2022/06/28完結表記)
GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。
★お礼★
たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます!
中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる