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【3】私
(36)堪え難い現実
しおりを挟む母に全てを打ち明けた。——————
あの日の
あの駅での事を
私は泣きながらあのホームで起きた出来事を打ち明け何度も何度も母に許しを求めた。
母は頷きながら私の話を聞き、涙を拭ってくれた。
自分でもわからないくらいに追い詰められていた私は声が枯れるほどに目の前にいるひとりの女性の許しが欲しくて、
ごめんなさい
ごめんなさい
と、繰り返し言った。
その姿に、母は『辛かったよね。』と言いながらもう一度私を抱きしめた。
ベットから起きて洗面所へ向かう際
母は朝食の準備をしていた。
目が合うと『おはよう』といつものように笑顔で挨拶をした。
私がした事は例え母に打ち明けようとも決して帳消しになる事ではないけれど
昨日の朝と比べたら心は気持ち軽く感じられた。
朝食は母と楽しく会話した。
『彼氏は出来たの?』とか年頃の娘に
ストレートに聞いてくるもんだから返答には困ったけれどなんだか、父と母と3人でご飯を食べていた頃を思い出す様な、そんな楽しい時間に思えた。
恋人が迎えにくると言いながらも
準備を全くしていなかった母の準備を手伝いながらも
あの時と真逆で今度は私が母を見送る。
何だか寂しくてあの時の母もこんな感じだったのかな。
なんて思いながら母を急かした
ボサボサの髪をした母が洗面所へ向かい
私は荷造りを。
大きめのキャリーケースに衣類を
綺麗に畳んでチャックを締める。
玄関まで持っていくとちょうど母の恋人の人も車で到着していた。
正直母の恋人って実感は無いけれど
いい人そうで何だか安心している自分がいる。
母は感情が表に出しにくい人だから
側で支えてくれる人がいるのはいい事だ。それが義理の父親になる人でも、今なら受け入れられるかもと思えるようになってきた。
『お母さんは準備できたかな?』
その人からかけられた問いかけに応じて見てきますと一声。
思えばまともに会話もした事なかったから声をかけられてビックリしながらも
逃げる様に母の元へ駆け寄る。
髪を整えている母がいる洗面所のドアを
開ける。
そこに姿はなくて、あったのは鏡の前にある母の愛用している櫛だけ。
ピンクの櫛を手に取り不意に眼をやった
鏡の先には
あの日のホームと同じ色に染まったバスタブ
そして
母の姿があった————————
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