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【3】私
(29)無味色のワンピース
しおりを挟む祖母が囁いたその言葉は私に向けられた言葉ではないと理解していた。
私の母に向けられた言葉だ。————
それでも冷たく憎しみのあるその眼は私を見つめていた。
祖母の病が原因なのだと理解していたが
目の前の私に向けて囁かれる言葉の一つ一つが胸の奥を貫いていく。
『あなたが産まれなければ、まだあの人は生きていたのよ。』
『私は。』
『何度も。——————』
『何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。————』
言葉を続けていく内に
『倒れて、病気になって、休んでと言ったのに。』
重みを増していく。
『あの人は言ったの。』
『娘の———』
『あなたの為だって。————』
胸が苦しくなる
『あなたのせいで、』
気持ちが悪い
『あなたなんか。』
頭がいたい
『○○○いいのに。——』
頭が真っ白になった
祖母から聞いた最後の言葉
その言葉で
わたしの
なにかが壊れた。
頭の中でひたすらに否定する。
その言葉はわたしに向けられた言葉ではないって。
頭の中でひたすらに否定する。
その言葉は本心ではないって。
踏切の音が鳴る。——————
その音は酷く耳障りな音
向けられた口からは酷く耳障りな言葉
『死ねばいいのに。——————』
やめて
『死ねばいいのに。——————』
やめて
『死ねばいいのに。——————』
ただ、祖母の口から吐き出されるその言葉を止めたくて
私は祖母を
大きな音がした。
その音が止んだ時。
耳障りな言葉も消えていた。
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