踏切 電車 向こう側

相坂 舞雉

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【3】私

(28)白色のワンピース

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いつものようにボロボロのドアを開ける

力一杯にドアを開けると悲鳴を上げる。

外の太陽が差し込めて

お気に入りの真っ白なワンピースを輝かせる。






その日は祖母と隣町まで食材の買い出しをする日だった。
最近の祖母は体調が良いのか私だとちゃんと理解して話しかけてくれている。

病の事を祖父も分かっているはずなのに
なにも。


今日はいい天気だった。

目覚めも良くて。

祖母の体調も優れている。



『あの子もね、白いワンピースが大好きだったのよ。』

『あの子に似たのね。—————』






微笑みながら私を見てそう言った。














今日は沢山の物を買った。

朝食の食パン

夕飯のお魚

祖父のお酒



いつものように私は両手に沢山の食材や飲料の入ったビニール袋を持ち。
家へと連れてってくれる田舎町漂う電車へ乗った。

電車の中で祖母はまた母の話をしてくれた。

幼い頃の話

学生の頃の話

風邪をひいた時の話


楽しそうに話す祖母を見つめながら私は話を聞き続けた。


最寄りの駅に着いたのは夕焼けが覗かせ暖かく心地いい風が吹く時間帯だった。

私の身体は

身につけていたワンピースは

夕焼けが移りこんだ綺麗な色をしていた


『綺麗ねぇ。—————』

『私はね、この町が好きなの。』


ホームで祖母はゆったりと私を見て喋り始めた。

『あの人はね。私と幼馴染だったのよ』


その話は初めて聞く話しで


『何をするにもいつも一緒にいてね』


『高校生の頃顔を真っ赤にしながらあの人は言ってくれたのよ』


これからもずっと一緒だって。————



『学校を一緒に卒業して』


     一緒に暮らしたの。

          数年後にはあの人との子もできて』


『私は幸せだったの。』


祖母は自分の話をしているようだった。

『あなたが産まれても幸せだったわ』


『産まれたばかりのあなたをね、あの人はものすごく可愛がっていたのよ。』



『あなたの為に毎日働いていたわ。』



『体を壊して帰ってきた時も、次の日には朝早くから働きにでて頑張っていたわ。』


『それがいけなかったのかしら』




『そうよ。それがいけなかったのよ』


『ずっと一緒にって約束したのに。
わたしとあの人二人で一緒にいるって約束してたのに。—————』

『あなたが。——』


『あなたが産まれたからあの人は。』


祖母の


私を見る眼はいつのまにか



『あの人は約束を破る人じゃない』


酷く冷たく


『あなたの————いよ。』


憎しみのある


『あなたのせいよ。——————』


眼をしていた。








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