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【2】私
(20)教室とベンチ
しおりを挟む学校が終わった後少し教室に残っていた
さっき迄は見慣れない同級生の顔をみまいと外の校庭を眺めていたせいで教室の中はまともに見ていなかった。
夕焼けが差し込んだその教室は
一種の青春の終わりを思わせるような、どこかぽっかりと空いた穴のように見えた。
私が教室からでると
その空いた穴は広がった。
一本の長い道のり。
その通学時間に意味は無く
と言っても早く帰っても何かが生まれる訳でも無くて
あの場所から離れてから少しずつ何か欠けていっているこの気持ちはいつ進行を止め、はたまたいつ私を完全に飲み込むのだろうか。
学校へ向かい、家へ向かい、どちらも同じ景色のはずなのに明るさはまるで違く新しいいつもを運ぶために夜が来る。
少しのため息と共に口から出るものをグッとこらえ止まりかけていた足を再び家へと向けた。
————————————————
都内に住んでいた頃、学校までの道のりは距離はあれどほとんどが電車でここまで歩くことはなかった。
そこまで体力もある訳では無く
前に座ったバス停のベンチで一休みすることとした。
辺りはすでに真っ暗。
自転車か何かあったら便利だなと思うけどそれだと家に着く時間も早くなる。
ほぼ他人同然の祖母達には悪いが
来たばかりだし長い時間一緒にいるのは少し気がひける。
祖父は酒を飲み働かない。
夏休みの最終日に聞いた怒鳴り声はきっと祖父の声だろう。
何に対して怒っていたのかまるで想像もつかないがその声を無視しても気持ちのいい睡眠とは言えなかった。
だからきっと
これくらいが丁度いいのだろう。
虫の音だけが聞こえるこの場所で少し落ち着いてから帰るのが。
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