踏切 電車 向こう側

【2】僕

(18)夕焼け

授業中

僕は絵を描く手を止め後ろの席の子の事を考えていた。

僕らに教えを説く先生の話はもちろん、
校庭から聞こえる他クラスの同級生の声も受け付けずただ、
後ろの席から響く彼女がノートに書き記すそのペンの音だけが僕の耳を占領した。


授業終了のチャイムが鳴っても
彼女は席に着いたまま。
校庭をじっと眺めていた。

この街は小さい。
山の中間に位置するこの学校もまた小さい。
そんな街は彼女の目にはどう映っているのか僕には想像もつかない。




ただ最後に見た悲しみの表情はそこに無く


今僕の眼に映るその彼女はどこか感情をなくした人形のような感じに映っていた。



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夏休み明けの学校初日は思いのほか早く終わった。

帰り道は長く果てしない一本道。
普段は自転車必須のその一本道を早朝の僕は何を感じたのか徒歩で学校へ向かったのだ。


そのおかげで早く終わった学校も意味なく日が沈むのを横目に見ながら
僕は家に向かっていた。

思えば今日は絵を一枚も描いていない。
ほぼ毎日絵に没頭している僕が
何かの理由もなく描かないのは我ながら珍しい。

が、理由が無いわけでも無いようだ。
この帰り道考えているのは彼女のこと。
なんせ思春期真っ盛りの僕にはこの恋に似たこの感情はとても魅力的。
そんな事を考えながらもバックからスケッチブックを取り出し
自然に溢れる草原の上で僕は今沈みかけている夕焼けを描き始めた。

道から外れたこの草原は景色も良く
真昼間に昼寝をするにはもってこい。

もしも年終えて家の中で昼寝するのが
趣味になる時が来るのならここは
とてもいい昼寝スポットとなるだろう。

色々な事を考えながら筆を動かす。
白紙のスケッチブックには
ものの数分で下書きと言える物が完成した。