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そのきゅうじゅうなな
ラスくんの同級生側の憂鬱④
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もっと他に説明のやり方があるだろう、と何故か落ち込むリシェをノーチェはじろりときつい目線を向ける。
「あんたがラスをたぶらかしてるんだろ」
そうに違いないんだ、と言わんばかりに言い放つ。やけにラスに執着している様子だが、それなら鎖でも付けておけと思わずにはいられない。
リシェはそんな訳あるかとぶっきら棒に返した。
「俺は転入して、慣れてくるまではしばらく一人部屋だって言われたんだぞ。それなのにいきなりこいつが強引に入り込んで来たんだ。たぶらかしたとか人聞きの悪い」
まるでこちらが悪いみたいな言い方をされ、ムッとする顔のリシェの横で、スティレンはフンと意地悪く続ける。
「この根暗なリシェが他人に媚びる芸なんて出来る訳ないじゃない。ま、自分の魅力を存分に分かってる俺レベルならそんな事朝飯前なんだけどね!リシェなんかには無理なんだよ、無理」
二言目には自分を上げる言葉を吐く。
ラスはもう慣れたが、彼の同級生三人は見慣れない性質の彼の台詞にはついて来れずぽかんとしていた。
「スティレン」
リシェは自意識過剰の従兄弟の名前を呼ぶ。
「は?何さ」
「だから喋るな」
ラスと、彼が慕っている相手は分かった。だが、この変な台詞を吐き散らかしているのは何なのだろう。
可愛げのあるリシェの容姿に惹きつけられたままのベルンハルドは意識を遠くに飛ばしていて、ノーチェは怒りでカッカしている状態なので今普通なのは自分しか居ない、とキリルは思った。
「で、あんたは何なの?」
「何って…何さ?」
「単に同級生な訳でもなさそうだけど」
そりゃそうだよ、とスティレンは横目でリシェをちらりと見た。
「俺はこいつの従兄弟なんだから。俺がこいつを追いかけて転入して来てやったのに、ラスが先にさっさとリシェのルームメイトにねじ込んできたからさあ…むしろこっちが被害者なんだけどね」
えへへぇ、とラスは照れ笑いをした。
ちっ、とスティレンは悔しいのか舌打ちをする。
「どう考えても一番の被害者は俺じゃないか!!」
お前は頼んでもいないのに勝手に来ただけだろうとリシェは悲痛な叫び声を上げた。
「この変態共が!」
ラスは喚き始めるリシェを背後から抱き締めると、まあまあと宥めにかかる。
「だって先輩が欲しかったんだもん」
「うるさい!一番の変態はお前だ!」
「俺、一番変態でもいいから。落ち着いて、先輩」
「変態!!変態!!」
ぎゃあぎゃあと喚く美少年と、彼を宥めようとするチャラいタイプの友人の姿を目の当たりにするノーチェ達は、その光景に一方的にラスが押し掛け女房のようにリシェの部屋に突貫したのだと何となく理解してきた。
だが完全に納得いかない様子のノーチェはラスの浮かれっぷりに情けないよと嘆く。
「こんなへにゃへにゃしたような奴にうつつを抜かすとか!ラス、頭大丈夫なのマジで!?」
まるでじゃれあっている動きをしていたラスは、リシェを抱き締めながら「大丈夫だよ」とへらへらしながら返した。
「俺、先輩がずっと好きだったから」
爽やかに笑みを浮かべてはっきり言い放つ。
即座に暴れていたリシェの拳がラスの右頬にめり込んだが、彼は全然気にもしない。むしろまだへらへらしている。
「もう…先輩ったら」
「うるさい!!」
こんなに直球で好意を寄せていると断言されると、未練がましく詰め寄っていた自分の立場がまるで馬鹿らしくなってしまうではないかとノーチェはぐぐっと言葉を詰まらせた。
ノーチェの体はふるふると震える。
「ノーチェ?おい、大丈夫か?」
キリルは心配そうに仲間に声をかけた。すると彼は顔を真っ赤にしながら、足早に階下へ続く階段に向けて踵を返す。
「くっそ!!ラスのバーカ!バーカ!!変人!チャラ男!!うんこ!!」
負け惜しみのような発言を投げ、彼はダッシュする。
「えぇえ…」
どうしたんだよ、とラスは困惑する。同時にリシェの拳が左の頰にもぐにょりとめり込んだ。
「なるほどなあ。そういう訳か、ノーチェ」
やたら彼がラスに対して執着する理由。あの反応を見て、ようやくキリルとベルンハルドの二人は理解する。
ありゃ完全にフラれたような反応だと、ベルンハルドは呟いた。
「あんたがラスをたぶらかしてるんだろ」
そうに違いないんだ、と言わんばかりに言い放つ。やけにラスに執着している様子だが、それなら鎖でも付けておけと思わずにはいられない。
リシェはそんな訳あるかとぶっきら棒に返した。
「俺は転入して、慣れてくるまではしばらく一人部屋だって言われたんだぞ。それなのにいきなりこいつが強引に入り込んで来たんだ。たぶらかしたとか人聞きの悪い」
まるでこちらが悪いみたいな言い方をされ、ムッとする顔のリシェの横で、スティレンはフンと意地悪く続ける。
「この根暗なリシェが他人に媚びる芸なんて出来る訳ないじゃない。ま、自分の魅力を存分に分かってる俺レベルならそんな事朝飯前なんだけどね!リシェなんかには無理なんだよ、無理」
二言目には自分を上げる言葉を吐く。
ラスはもう慣れたが、彼の同級生三人は見慣れない性質の彼の台詞にはついて来れずぽかんとしていた。
「スティレン」
リシェは自意識過剰の従兄弟の名前を呼ぶ。
「は?何さ」
「だから喋るな」
ラスと、彼が慕っている相手は分かった。だが、この変な台詞を吐き散らかしているのは何なのだろう。
可愛げのあるリシェの容姿に惹きつけられたままのベルンハルドは意識を遠くに飛ばしていて、ノーチェは怒りでカッカしている状態なので今普通なのは自分しか居ない、とキリルは思った。
「で、あんたは何なの?」
「何って…何さ?」
「単に同級生な訳でもなさそうだけど」
そりゃそうだよ、とスティレンは横目でリシェをちらりと見た。
「俺はこいつの従兄弟なんだから。俺がこいつを追いかけて転入して来てやったのに、ラスが先にさっさとリシェのルームメイトにねじ込んできたからさあ…むしろこっちが被害者なんだけどね」
えへへぇ、とラスは照れ笑いをした。
ちっ、とスティレンは悔しいのか舌打ちをする。
「どう考えても一番の被害者は俺じゃないか!!」
お前は頼んでもいないのに勝手に来ただけだろうとリシェは悲痛な叫び声を上げた。
「この変態共が!」
ラスは喚き始めるリシェを背後から抱き締めると、まあまあと宥めにかかる。
「だって先輩が欲しかったんだもん」
「うるさい!一番の変態はお前だ!」
「俺、一番変態でもいいから。落ち着いて、先輩」
「変態!!変態!!」
ぎゃあぎゃあと喚く美少年と、彼を宥めようとするチャラいタイプの友人の姿を目の当たりにするノーチェ達は、その光景に一方的にラスが押し掛け女房のようにリシェの部屋に突貫したのだと何となく理解してきた。
だが完全に納得いかない様子のノーチェはラスの浮かれっぷりに情けないよと嘆く。
「こんなへにゃへにゃしたような奴にうつつを抜かすとか!ラス、頭大丈夫なのマジで!?」
まるでじゃれあっている動きをしていたラスは、リシェを抱き締めながら「大丈夫だよ」とへらへらしながら返した。
「俺、先輩がずっと好きだったから」
爽やかに笑みを浮かべてはっきり言い放つ。
即座に暴れていたリシェの拳がラスの右頬にめり込んだが、彼は全然気にもしない。むしろまだへらへらしている。
「もう…先輩ったら」
「うるさい!!」
こんなに直球で好意を寄せていると断言されると、未練がましく詰め寄っていた自分の立場がまるで馬鹿らしくなってしまうではないかとノーチェはぐぐっと言葉を詰まらせた。
ノーチェの体はふるふると震える。
「ノーチェ?おい、大丈夫か?」
キリルは心配そうに仲間に声をかけた。すると彼は顔を真っ赤にしながら、足早に階下へ続く階段に向けて踵を返す。
「くっそ!!ラスのバーカ!バーカ!!変人!チャラ男!!うんこ!!」
負け惜しみのような発言を投げ、彼はダッシュする。
「えぇえ…」
どうしたんだよ、とラスは困惑する。同時にリシェの拳が左の頰にもぐにょりとめり込んだ。
「なるほどなあ。そういう訳か、ノーチェ」
やたら彼がラスに対して執着する理由。あの反応を見て、ようやくキリルとベルンハルドの二人は理解する。
ありゃ完全にフラれたような反応だと、ベルンハルドは呟いた。
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